T
零相か線間か、位相差か大きさか。4つとも似ていて選べない。
地絡方向継電器って、結局なにを見てるの?
この記事の要点
地絡方向継電器とは、高圧配電線路で地絡電流の方向を判定して、自分の側の事故かどうかを見分ける継電器のことです。
判定に使うのは零相電圧と零相電流の位相差です。2年度とも、この組合せが答えでした。
この継電器にはJIS C 4609「高圧受電用地絡方向継電装置」という専用の規格があり、方向を判定しない地絡継電器とは別に扱われます。
地絡方向継電器の判定要素は、2級で2年度に出ています。
この2問は、これまでの多くの出題と違って適当なものを選ぶ形です。誤りを1つ探すのではなく、正しい1つを選びます。
2年度とも同じ組合せが答えになりました。
文はまったく同じで、位置だけが動きます。肢の番号を覚えても意味がありません。
言い換えると、「零相が2つ並んで位相差で終わっている肢を探す」ということです。
残る3肢は、正解の要素を1つずつ入れ替えて作られています。年度によって、入れ替える軸が違います。
| 年度 | 入れ替えた軸 | 4肢の並び |
|---|---|---|
| 令和3年度 2級前期 No.20 | 位相差か大きさか (電圧と電流は組のまま) |
線間電圧と負荷電流の位相差/同じ組の大きさ/零相電圧と零相電流の位相差(答え)/同じ組の大きさ |
| 令和6年度 2級(後期)No.18 | 電圧と電流を別々に (位相差で固定) |
線間電圧と負荷電流/線間電圧と零相電流/零相電圧と負荷電流/零相電圧と零相電流(答え) |
どちらの年度も2×2の組合せがそのまま4肢になっていて、抜けも重複もありません。
例えば、令和6年度2級(後期)No.18の選択肢2は「線間電圧と零相電流の位相差」で、片方だけ零相になっています。どちらか一方でも零相でなければ答えになりません。
標準仕様書の保護継電器の表では、地絡継電器と地絡方向継電器が別の行に置かれ、対応する規格も違います。
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 表1.1.23「保護継電器」より(版面p.103)
高圧地絡継電器 JIS C 4601「高圧受電用地絡継電装置」/JIS C 4612「高圧受電用ディジタル形地絡継電装置」
高圧地絡方向継電器 JIS C 4609「高圧受電用地絡方向継電装置」
| 見る量 | 位相差を見る | 大きさを見る |
|---|---|---|
| 零相電圧と零相電流 | これが答え | 外れる(方向が分からない) |
| 線間電圧と負荷電流 | 外れる(地絡を見ていない) | 外れる(地絡を見ていない) |
4肢は計器用変成器で拾う量の組み合わせで作られています。零相かどうかと、位相差かどうかの2つが同時に合う肢は1つだけです。
名前に「方向」が入るかどうかで、規格そのものが分かれています。方向を判定するために零相電圧と零相電流の両方を見る、という違いがここに出ています。
零相電流を取り出す側の機器にも、規格と構造の定めがあります。
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 1.1.5「器具類」(6)(ウ) 表1.1.18「零相変流器」(版面p.101)
零相変流器 JIS C 4601「高圧受電用地絡継電装置」/JIS C 4609「高圧受電用地絡方向継電装置」/JEC-1201「計器用変成器(保護継電器用)」
(a) 屋内用とし、絶縁方式は、全モールド又はコイルモールドとする。
(b) ケーブルの太さに適合する貫通形とする。
零相変流器はケーブルを貫通させて使う形です。受入試験の項目にも「零相電流及び残留電流(零相変流器のみ)」が挙げられています(版面p.125)。
この機器は、別の系統の問でも並びます。
零相変流器と接地形計器用変圧器は、2年度とも正しい側です。この2つは計器用変成器の取扱いの記事でも扱っています。
混同しやすい語
零相電圧と線間電圧:判定要素になるのは零相電圧です。線間電圧に置き換えた肢は答えになりません。
零相電流と負荷電流:判定要素になるのは零相電流です。負荷電流に置き換えた肢も答えになりません。
位相差と大きさ:方向を判定するので位相差です。令和3年度2級前期は大きさに置き換えた肢を2つ並べました。
避雷器と高圧カットアウトヒューズ:中性点非接地方式の地絡保護に使う機器としては、どちらも外れた側でした。
地絡方向継電器と地絡継電器:方向まで判定するのが前者です。配電系統のどこに何を置くかは配電系統の保護の記事で扱っています。
判定要素を問う2年度に加えて、関連する機器の系統も2年度あります。
地絡方向継電器そのものは、1級でも別の切り口で並びます。平成30年度1級No.25は「高圧配電線の地絡保護のために、配電用変電所に地絡方向継電器と地絡過電圧継電器を施設する」を正しい側に置き、令和5年度2級(前期)No.19も「高圧配電線路の地絡保護のため、変電所に地絡方向継電器を施設した」を正しい側に置きました。地絡保護に使う機器としての立場は、一度も崩されていません。
判定要素の2問は、正しいものを選ぶ形です。誤りを探す癖のまま読むと逆を選びます。
この系統の肢は、次の順に見ます。
地絡方向継電器が地絡電流の方向を判定する要素は?
零相電圧と零相電流の位相差です。令和3年度2級前期と令和6年度でどちらも同じ答えでした。
線間電圧と零相電流の位相差、という肢の扱いは?
外れます。電圧が零相になっていません。片方だけ零相の肢は令和6年度に置かれました。
中性点非接地方式の地絡保護に使う機器として2年度とも正しい側だったものは?
零相変流器と接地形計器用変圧器です。
地絡保護に使う機器として外れたものは?
令和元年度2級前期は避雷器、令和6年度2級(前期)は高圧カットアウトヒューズです。
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
この2問は「適当なもの」を選ぶ形です。
多くの出題は誤りを1つ探す形なので、その癖のまま読むと逆を選びます。問いの向きを先に読んでから肢に入ります。
選ぶのは零相が2つ揃っていて、末尾が位相差の肢です。片方だけ零相の肢も、末尾が大きさの肢も外れます。