編集部
幾何標準偏差って単位はあるの?1より小さくなることはあるの?と迷いませんか?「濃度の次元か・無次元か」で分けると、問18の引っかけが一気にほどけます。
この記事の要点
作業環境中の濃度分布は対数正規分布で近似されます。幾何平均は濃度の代表値(濃度の次元をもつ)、幾何標準偏差(GSD)はばらつきで無次元・必ず1以上です。
正規分布はμ±σで約68%、95%上限値はμ+1.645σ(μ+3σではない)。第1・第2評価値は、この幾何平均と幾何標準偏差から計算します。
A測定の濃度は、ばらついた値そのものではなく、分布の形を仮定して評価します。その仮定が対数正規分布です。
作業環境中の濃度は対数正規分布で近似し、幾何平均(代表値)と幾何標準偏差(ばらつき・無次元・1以上)で表します。
作業環境中の有害物質の濃度は、低い値が多く、ときどき高い値が出る、右に長い裾を引いた分布になります。これを対数正規分布で近似します。
濃度の対数(log)をとると、左右対称の正規分布になります。
対数正規分布では、中心(代表値)を幾何平均、ばらつきを幾何標準偏差(GSD)で表します。表すものと次元が違います。
| 値 | 表すもの | 次元・範囲 |
|---|---|---|
| 幾何平均 | 濃度の代表値(中心) | 濃度の次元をもつ(正の値) |
| 幾何標準偏差(GSD) | 濃度のばらつきの大きさ | 無次元・必ず1以上 |
幾何標準偏差は「何倍ばらつくか」を表す比なので、単位がつかず(無次元)、ばらつきが無くても1で、1より小さくなることはありません。
一方、幾何平均は濃度そのものの代表値なので濃度の次元をもちます。この2つは異なる次元です。
幾何標準偏差は「平均から何倍の幅でばらつくか」の倍率です。倍率なので単位がなく、ばらつきゼロでも1(1未満はあり得ない)と覚えると、問18の引っかけに気づけます。
対数をとった後の正規分布では、平均μと標準偏差σで次の関係が成り立ちます。問18で数値を入れ替える引っかけが出ます。
| 範囲・指標 | 確率・値 |
|---|---|
| μ−σ 〜 μ+σ に入る確率 | およそ68% |
| μ−2σ 〜 μ+2σ に入る確率 | およそ95% |
| 95%上限値(上側5%の境) | μ+1.645σ |
| 平均μ と 標準偏差σ の関係 | 互いに独立 |
「μ±2σが約68%」「95%上限値がμ+3σ」とするのは、いずれも数値のすり替えです。68%はμ±σ、95%上限値はμ+1.645σです。
第1評価値・第2評価値は、A測定値の幾何平均値M₁と幾何標準偏差σ₁から計算します。
第1評価値は高濃度側5%(95%上側)の推定値で、計算に1.645(上の95%上限値と同じ考え方)が使われます。第2評価値は算術平均の推定値です。
区分の決め方は第1評価値・第2評価値と管理区分で扱います。
参考(作業環境評価基準 第3条):
log EA1 = log M₁ + 1.645√(log²σ₁ + 0.084)
log EA2 = log M₁ + 1.151(log²σ₁ + 0.084)
M₁=幾何平均値、σ₁=幾何標準偏差。0.084は1日測定での日間変動の項。
混同しやすい用語
幾何平均 と 幾何標準偏差
幾何平均は濃度の代表値で濃度の次元をもち、幾何標準偏差はばらつきの倍率で無次元です。「同じ次元」とするのは誤りで、両者は異なる次元です。幾何標準偏差は必ず1以上です。
μ±σ(68%) と μ±2σ(95%)
μ±σが約68%、μ±2σが約95%です。68%と95%の範囲を入れ替える引っかけが出ます。95%上限値(上側5%の境)はμ+1.645σです。
正規分布・対数正規分布は、デザイン・サンプリングで毎回(問18)問われます。
引っかけは「次元・無次元のすり替え」「幾何標準偏差は1以上の否定」「正規分布の数値のすり替え」の3型です。
| 年度・問 | 正答 | 問われ方(引っかけの核心) |
|---|---|---|
| 令和8年2月 問18 | ② | 「対数正規分布の幾何平均値の範囲は−∞〜∞」=誤り。幾何平均は濃度なので正の値。−∞〜∞は対数変換値の範囲。 |
| 令和7年8月 問18 | ⑤ | 「正規分布の母平均と母分散は互いに独立ではない」=誤り。平均と分散(標準偏差)は互いに独立。 |
| 令和7年2月 問18 | ① | 「幾何標準偏差の値が1より小さい場合がある」=誤り。幾何標準偏差は必ず1以上。 |
| 令和6年8月 問18 | ② | 「μ−2σ〜μ+2σに入る確率はおよそ68%」=誤り。68%はμ±σ、μ±2σは約95%。 |
| 令和6年2月 問18 | ④ | 「対数正規分布の幾何平均と幾何標準偏差とは同じ次元」=誤り。幾何平均は濃度の次元、幾何標準偏差は無次元。 |
| 令和5年8月 問18 | ⑤ | 「正規分布の95%上限値はμ+3σ」=誤り。95%上限値はμ+1.645σ。 |
幾何標準偏差は無次元で必ず1以上、幾何平均は濃度の次元(両者は異なる次元)です。正規分布は68%がμ±σ、95%上限値はμ+1.645σ(μ+3σではない)。
問題:対数正規分布の幾何標準偏差の値は、1より小さくなる場合がある。
〇か×か。
答え:×
幾何標準偏差はばらつきの倍率(無次元)で、必ず1以上です。1より小さくなることはありません(令和7年2月 問18)。
問題:正規分布の95%上限値は、μ+3σである。
〇か×か。
答え:×
95%上限値はμ+1.645σです。μ±σが約68%、μ±2σが約95%です(令和5年8月 問18)。
問題:対数正規分布の幾何平均と幾何標準偏差は、どちらも同じ次元をもつ。
〇か×か。
答え:×
幾何平均は濃度の代表値で濃度の次元、幾何標準偏差は無次元です。異なる次元です(令和6年2月 問18)。
作業環境中の濃度は対数正規分布で近似し、幾何平均(濃度の代表値)と幾何標準偏差(ばらつき・無次元・必ず1以上)で表します。両者は異なる次元です。
対数をとった正規分布では、μ±σが約68%、μ±2σが約95%、95%上限値はμ+1.645σです。第1・第2評価値はこの幾何平均と幾何標準偏差から計算します。
参考資料
※ 最終更新:2026年6月