令和5年8月の作業環境測定士試験 デザイン・サンプリング 問18は、正規分布・対数正規分布と環境空気中の有害物質の濃度分布に関する問題です。
5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、正規分布と対数正規分布の基本的な性質(左右対称になる軸、平均値と標準偏差の次元、幾何標準偏差が無次元であること、濃度分布が対数正規で近似されること)を横断的に確かめるものです。
引っかけの核心は正規分布の95%上限値を「μ+3σ」と覚えてしまうところに置かれています。上側95%に対応する係数は3ではなく1.645です。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢5(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 幾何標準偏差は比(無名数)で定義されるため無次元であり、正しい。なお値は常に1以上になる。 |
| 2 | ○(正しい) | 正規分布の平均値と標準偏差は、どちらも測定値と同じ単位(次元)を持つので正しい。 |
| 3 | ○(正しい) | 横軸に変数の対数をとると、対数正規分布は幾何平均値を中心に左右対称な釣鐘形になるので正しい。 |
| 4 | ○(正しい) | 環境空気中の濃度は対数正規分布で近似され、平均値が高いほど標準偏差も大きくなる傾向があるので正しい。 |
| 5 | ×(誤り) | 95%上限値を「μ+3σ」とするのが誤り。上側95%に対応するのはμ+1.645σで、μ+3σは約99.9%に相当する。 |
正規分布で「平均からσ何個分まで含むか」と「全体の何%を含むか」は、決まった対応関係でつながっています。
片側(上側)で考えると、上側95%の境目はμ+1.645σです。つまり、測定値が小さい側から数えて95%が収まる上限が、平均より1.645σだけ上に位置します。
選択肢5はこの境目を「μ+3σ」としています。μ+3σまで含めると全体の約99.9%が収まり、95%よりもはるかに広い範囲になります。
3σと1.645σでは含む割合がまったく違うため、95%上限値をμ+3σと取り違えると、上限濃度を実際より高く見積もってしまいます。
他の肢が扱う「左右対称になる軸」「次元が同じか・無次元か」「濃度が対数正規で近似される」は、いずれも分布の正しい性質です。
誤りはこの95%上限値の係数の一点に絞られます。
問題:正規分布で平均をμ、標準偏差をσとするとき、上側95%上限値はμ+3σでよいか。
いいえ。上側95%上限値はμ+1.645σです。μ+3σまで含めると約99.9%が収まることになり、95%よりはるかに広い範囲になります。係数は3ではなく1.645である点が問われています。
問題:対数正規分布の幾何標準偏差には単位(次元)が付くか。
付きません。幾何標準偏差は値どうしの比として定義されるため無次元です。値は常に1以上になります。これに対し、正規分布の平均値と標準偏差は測定値と同じ次元を持ちます。
出典
※ 最終更新:2026年6月