令和8年2月の作業環境測定士試験 デザイン・サンプリング 問18は、正規分布・対数正規分布と作業環境中の有害物質の濃度分布に関する問題です。
5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、作業環境評価の土台になる統計の基本を問うものです。
中心は、正規分布の算術平均値・標準偏差・95%上限値、対数正規分布の幾何平均値・幾何標準偏差、そして有害物質の濃度分布が対数正規分布で近似されるという3点です。
引っかけの核心は、幾何平均値の取りうる範囲を、正規分布と同じように −∞〜∞だと思い込むところにあります。
幾何平均値は対数をとった世界の平均を元に戻した値なので、必ず正の値になります。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢2(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 正規分布の算術平均値をμ、標準偏差をσとすると95%上限値はμ+1.645σ。片側95%点の係数1.645は正しい。 |
| 2 | ×(誤り) | 幾何平均値の範囲を「−∞〜∞」とするのが誤り。幾何平均値は正の値で、範囲は0より大きい(0〜∞)。負や0にはならない。 |
| 3 | ○(正しい) | 幾何標準偏差はばらつきの倍率を表す量で、必ず1以上になる(ばらつきが無いとき1)ので正しい。 |
| 4 | ○(正しい) | 作業環境中の有害物質の濃度分布は、右に裾を引く形になり対数正規分布で近似される。正しい。 |
| 5 | ○(正しい) | 濃度の算術平均値が高くなるほど標準偏差も大きくなる傾向があり、平均とばらつきが連動するので正しい。 |
幾何平均値は、各データの対数をとって平均し、それを元のスケールに戻した値です。
濃度のような0より大きい量を掛け合わせて求める平均なので、結果も必ず正の値になります。
対数正規分布は、データの対数をとると正規分布になる分布です。
対数をとった世界では平均は−∞〜∞のどこにでも来ますが、それを指数で元のスケールに戻すと、幾何平均値は必ず0より大きい値になります。
指数関数は負にも0にもならないからです。
選択肢2は、この幾何平均値の範囲を「−∞〜∞」とした点が誤りです。これは正規分布の算術平均値が取りうる範囲であって、幾何平均値の範囲ではありません。
幾何平均値の範囲は0より大きい(0〜∞)であり、負や0になることはありません。算術平均値と幾何平均値で範囲を取り違えさせる引っかけになっています。
問題:対数正規分布の幾何平均値は、負の値も取りうるか。
取りません。幾何平均値は対数をとった平均を元のスケールに戻した値で、必ず正の値になります。範囲は0より大きく、負や0にはなりません。「−∞〜∞」は正規分布の算術平均値の範囲です。
問題:幾何標準偏差の値が1のときは、どういう状態か。
ばらつきが無く、すべてのデータが同じ値になっている状態です。幾何標準偏差はばらつきの倍率を表すので必ず1以上で、1が下限です。ばらつきが大きいほど1より大きくなります。
出典
※ 最終更新:2026年6月