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カントとスラックって、どっちも曲線部の話だから混ざる…。
どっちが高低差で、どっちが軌間を広げるほうなの?
この記事の要点
カントとは、曲線部における、外側レールと内側レールとの高低差のことです。上下方向の差です。
スラックは、曲線部において軌間を拡大する量です。左右方向の広げ幅です。
試験は、この2つの定義をそっくり入れ替えて出してきます。
曲線部でレールに加える調整は、上下の差と左右の広げ幅の2つに分かれます。
だから覚えるときも、どちらの向きの話かで分けます。
どちらも日本産業規格に定義があります。
JIS E 1001:2001 鉄道-線路用語(カント)
曲線部における,外側レールと内側レールとの高低差。
同(スラック)
曲線部において軌間を拡大する量。
言い換えると、次の対比になります。
| 用語 | 向き | 何を調整するか |
|---|---|---|
| カント | 上下 | 外側レールと内側レールの高低差 |
| スラック | 左右 | 軌間を拡大する量 |
カントは長さで表します。左右レールの傾き具合を角度で表すものではありません。
スラックを付けるのは、台車の車輪の間隔が決まっているからです。曲線では輪軸が半径の向きを向けず、車輪のつばがレールに強く当たります。軌間を少し広げると、この当たりが弱くなります。
なお、軌間そのものの定義は次のとおりです。
同(軌間)
軌道中心線が直線である区間におけるレール面上から下方の所定距離以内における左右レール頭部間の最短距離。
カントは、曲線を通過する車両が外方向へ転倒することを防ぐために付けます。
大小関係は2つあります。
曲線半径は「小さいほど大きい」です。急なカーブほど傾けるという向きです。
ただし、大きく付ければよいものでもありません。カントは速く走る前提で決めるので、その曲線で列車が止まると、内側へ傾いたままになります。
カントとスラックは、曲線に入った瞬間に付くものではありません。
同(緩和曲線)
直線と曲線との間などに設けられ,半径,カント,スラックが連続的に変化する曲線。
例えば、直線から曲線へ入る手前に緩和曲線を置き、そこで半径・カント・スラックの3つを少しずつ変えていきます。
この定義文には、カントとスラックが並んで出てきます。2語がセットで扱われる根拠は、ここにあります。
この緩和曲線の定義そのものが、2年度で貼り替えられました。
平成29年度 1級 学科試験No.54(公表正答3)/令和7年度 1級 第一次検定No.50(公表正答1)
緩和曲線とは、こう配変更箇所に設けられる鉛直面内の曲線をいう。(平成29年度)
緩和曲線とは、勾配変更箇所に設けられる鉛直面内の曲線のことをいう。(令和7年度)
貼られたのは、規格に実在する別の語の定義です。
同(縦曲線)
こう配変更箇所に設けられる鉛直面内の曲線。
こう配が変わる所に設ける鉛直面内の曲線は、縦曲線です。緩和曲線は水平方向の話、縦曲線は鉛直方向の話で、向きが違います。2年度とも同じ貼り替えで、言い回しが「こう配」と「勾配」に変わっただけです。
カントの仲間で、正しい定義のまま置かれ続けている語もあります。
スラックも、令和元年度1級学科試験No.54と令和4年度1級第一次検定No.53で「曲線部において、車輪を円滑に通過させるための軌間の拡幅」として正しい側に置かれています。
この2語は、貼り替えの材料ではなく正しい肢の側で使われています。誤りになるのは、カントとスラックを入れ替えたときと、緩和曲線に縦曲線の定義を当てたときです。
混同しやすい語
カントとスラック:高低差がカント、軌間の拡大がスラックです。上下と左右で分けます。
スラックと軌間:軌間は直線区間での左右レール頭部間の最短距離そのもの、スラックはそれを曲線部で広げる量です。
最大カント:3年度とも「列車がカントの付いた曲線線路上で停車しても転倒しないよう安全率を考慮したもの」として正しい肢に置かれています。JIS E 1001には最大カントの項目が無く、この説明は出題の側から確かめられます。
緩和曲線と縦曲線:半径・カント・スラックが連続的に変化するのが緩和曲線、こう配変更箇所の鉛直面内の曲線が縦曲線です。
カントとスラックは、軌道の他の話とつながっています。
直線区間では、カントもスラックも0です。曲線の手前から少しずつ付けて、曲線を出たあとに戻します。急に付けると乗り心地が悪くなり、車輪がレールに乗り上げる危険も出ます。
設計で決めた値からのずれは、軌道変位として測ります。
1級で7年度、2級で3年度出ています。引っかけは大きく3つです。
| 年度・級・問 | 問われ方 | 誤りとされた記述 |
|---|---|---|
| 令和8年度 2級 第一次(前期)No.34 | カントに関する記述として、最も不適当なもの | カントは、曲線を通過する車両の内側方向への転倒を防止するものである ←② |
| 令和5年度 2級 第一次(前期)No.36 | カントに関する記述として、不適当なもの | 運行速度が同じであれば、曲線半径が大きいほどカントは大きい ←② |
| 令和3年度 1級 第一次 No.53 | 鉄道の線路に関する用語の定義として、JIS上、不適当なもの | カントとは、曲線部において軌間を拡大する量をいう ←① |
| 令和元年度 2級 学科(後期)No.37 | カントに関する記述として、不適当なもの | カントは、左右レールの水平軸に対する傾斜角で表される ←②(規格の定義は高低差=長さ) |
| 平成25年度 1級 学科 No.54 | 鉄道線路に関する用語の定義として、JIS上、不適当なもの | スラックとは、曲線部における、外側レールと内側レールとの高低差をいう ←① |
令和3年度と平成25年度は、まったく同じ入れ替えを向きを変えて出したものです。カントの位置にスラックの定義、スラックの位置にカントの定義を置いています。
高低差ならカント。軌間の拡大ならスラックです。
レールそのものの種類はレールの種類と用途に、継目を溶接した長いレールはロングレールに、まくらぎを使わない構造はスラブ軌道にまとめました。
曲線部の肢は、次の順に見ます。
カントとは何か?
曲線部における、外側レールと内側レールとの高低差です。
曲線部において軌間を拡大する量を何というか?
スラックです。カントではありません。
運行速度が同じとき、曲線半径とカントの大小関係はどうなるか?
曲線半径が小さいほどカントは大きくなります。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の規格・出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
「半径が大きいほどカントは大きい」と書かれていたら誤りです。
半径が大きい曲線はほとんど直線に近く、傾ける必要が小さくなります。