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用語の定義が4つ並ぶと、どれももっともらしく読めちゃう。
どこが入れ替わってるの?
この記事の要点
鉄道信号保安の用語とは、閉そく・信号・連鎖・鎖錠・軌道回路など、列車の運転の安全を保つしくみを表す言葉のことです。
出題は、ある語に別の語の定義をそのまま貼って誤りを作ります。7年度ともこの型です。
貼り替えられた語のうち3つは、省令第2条が定義を持っています。条文と突き合わせれば決まります。
鉄道信号保安の用語は、1級で8年度に出ています。
問われ方の言い回しは年度で動きますが、4つの定義のうち1つだけが別の語のものという作りは変わりません。
出題は日本産業規格を根拠に挙げていますが、主要な語は省令にも定義があります。
鉄道に関する技術上の基準を定める省令(平成13年国土交通省令第151号)第2条
十五 閉そく 一定の区間に同時に二以上の列車を運転させないために、その区間を一列車の運転に占有させることをいう。
十六 鉄道信号 信号、合図及び標識をいう。
十七 信号 係員に対して、列車又は車両(以下「列車等」という。)を運転するときの条件を現示するものをいう。
十八 合図 係員相互間で、その相手方に対して合図者の意思を表示するものをいう。
十九 標識 係員に対して、物の位置、方向、条件等を表示するものをいう。
「一列車の運転に占有させる」のは閉そくです。信号のほうは「運転するときの条件を現示するもの」で、意味がまったく違います。
この2つを入れ替えた肢が、実際に出ています。
次の語は、正しい定義のまま置かれました。読み飛ばして構いません。
| 用語 | 正しい側で置かれた定義 |
|---|---|
| 表示 | 合図、標識などで条件・状態を表すこと |
| 閉そく | 一定区間を1列車だけの運転に専用させること |
| 連鎖 | 二つ以上の信号機、転てつ器などの相互間で、その取扱いについて一定の順序及び制限をつけること |
| 鎖錠 | 信号機、転てつ器などを電気的又は機械的に操作できないようにすること |
| 連動装置 | 信号機、転てつ器などの相互間の連鎖を行う装置 |
| 軌道回路 | 列車又は車両を検知するために、レールを用いる電気回路 |
| 転てつ器 | 線路を分岐させるもの |
| フェールセーフ | 装置が故障した場合でも安全側状態になり、危険側に動作しないこと |
| 連動図表 | 配線略図などを記載した連動図と、連動の内容を記載した連動表とから構成されるもの |
このうち表示は3年度に出て、いずれも正しい側でした。
省令に定義がある語のうち、誤りにされたのは次の3語です。
いずれも同じ問題の別の肢に、本来の語がそのまま置かれています。
言い換えると、「同じ内容の説明が2つの語に付いていたら、片方が誤り」ということです。
平成25年度 1級 No.46 選択肢1(正答肢)/令和6年度 1級 第一次 No.42 選択肢1(正答肢)
現示とは、一定区間を1列車だけの運転に専用させることをいう。(平成25年度)
信号とは、合図、標識などで条件・状態を表すことをいう。(令和6年度)
平成25年度の選択肢1は、省令第2条第十五号の閉そくの定義そのものです。令和6年度の選択肢1は、同じ問題の別年度で表示に当てられている定義です。
省令第2条第十七号は、信号を「運転するときの条件を現示するもの」と定めています。条件・状態を表すのは表示のほうで、信号ではありません。
例えば、令和6年度1級No.42を見ます。信号に「合図、標識などで条件・状態を表すこと」を当てた肢が置かれ、そこが誤りとされました。同じ説明は、平成25年度・平成29年度・令和7年度では表示に当てられ、いずれも正しい側です。
もう1つ、自動列車制御装置も誤りにされています。こちらも貼り替えで、貼られた定義には実在する別の語があります。
JIS E 3013:2001 鉄道信号保安用語(自動列車○○装置と自動進路制御装置)
自動列車停止装置 列車が停止信号に接近すると、列車を自動的に停止させる装置。ATSともいう。
自動列車制御装置 列車の速度を自動的に制限速度以下に制御する装置。ATCともいう。
自動列車運転装置 列車の速度制御、停止などの運転操作を自動的に制御する装置。ATOともいう。
自動進路制御装置 列車又は車両の進路設定をプログラム化して自動的に制御する装置。
4語とも役目が別々です。出題は、この4つの定義を入れ替えて誤りを作っています。
貼られる先も、貼られる定義も、年度で入れ替わります。
平成26年度と平成30年度は同じ貼り替えです。平成27年度と令和7年度も、貼る先が停止装置と制御装置に変わっただけで、貼られた定義はどちらも自動列車運転装置のものです。
令和元年度1級No.46は、同じ定義文の正解のほうを選ばせました。
令和元年度 1級 学科試験No.46 選択肢2(公表正答は選択肢2)
自動列車運転装置(「列車の速度制御、停止などの運転操作を自動的に制御する装置」に当たるもの)
規格の定義に照らすと、この文に当たるのは自動列車運転装置です。
平成26年度 1級 No.46 選択肢2(正答肢)/令和7年度 1級 第一次 No.42 選択肢3(正答肢)
自動列車制御装置は、列車又は車両の進路設定をプログラム化して自動的に制御するものである。(平成26年度)
自動列車制御装置とは、列車の速度制御、停止などの運転操作を自動的に制御する装置をいう。(令和7年度)
省令は、この種の装置の役目を次のように限っています。
鉄道に関する技術上の基準を定める省令 第54条第2項・第57条
第54条第2項 列車間の間隔を確保する装置は、列車と進路上の他の列車等との間隔及び線路の条件に応じ、連続して制御を行うことにより、自動的に当該列車を減速させ、又は停止させることができるものでなければならない。
第57条 閉そくによる方法により列車を運転する場合は、信号の現示及び線路の条件に応じ、自動的に列車を減速させ、又は停止させることができる装置を設けなければならない。
どちらも「減速させ、又は停止させる」で止まっています。進路の設定も、運転操作そのものも入っていません。省令と規格のどちらから見ても、貼られた定義は別の装置のものです。
混同しやすい語
現示と閉そく:一定区間を1列車だけの運転に専用させるのは閉そくです(省令第2条第十五号)。現示は信号が条件を示すことです。
信号と表示:信号は運転するときの条件を現示するもの、表示は合図・標識などで条件や状態を表すことです。
連鎖と鎖錠:連鎖は取扱いに順序や制限をつけること、鎖錠は操作できないようにすることです。連動装置は連鎖を行う装置を指します。
信号機の種類:場内・出発・閉そく・誘導などの区別は信号機の種類の記事にまとめました。
軌道回路:列車を検知するしくみの側は軌道回路の記事で扱っています。
軌道変位:軌道そのものの寸法のずれは軌道変位の記事にあります。
建築限界と車両限界:線路まわりの限界は車両限界の記事で扱っています。
軌道を強くする向き:道床やまくらぎの扱いは軌道の速度向上策の記事にまとめました。
「用語の定義として不適当なもの」で問われたのは3年度(平成25年度・平成29年度・令和6年度)です。令和7年度は「誤っているもの」、平成26年度・平成27年度は「鉄道の信号保安に関する記述」、平成30年度は「信号保安設備に関する記述」、令和元年度は「該当する用語として適当なもの」でした。言い回しは動きますが、崩し方は同じです。
| 年度・級・問 | 肢に置かれた語 | 貼られた定義の本来の語 | 正答肢 |
|---|---|---|---|
| 平成25年度 1級 学科 No.46 | 現示 | 閉そく(省令第2条第十五号) | 選択肢1 |
| 平成26年度 1級 学科 No.46 | 自動列車制御装置 | 自動進路制御装置(JIS E 3013) | 選択肢2 |
| 平成29年度 1級 学科 No.46 | 連鎖 | 鎖錠(同じ問題の別年度に実在) | 選択肢4 |
| 令和6年度 1級 第一次 No.42 | 信号 | 表示(省令第2条第十七号と食い違う) | 選択肢1 |
| 令和7年度 1級 第一次 No.42 | 自動列車制御装置 | 自動列車運転装置(JIS E 3013) | 選択肢3 |
この表の5年度に共通するのは、次の3つです。
一定区間を1列車だけの運転に専用させるのはどの語か?
閉そくです。省令第2条第十五号が「その区間を一列車の運転に占有させること」と定めています。平成25年度は、この定義が現示に当てられて誤りになりました。
省令は信号をどう定義しているか?
「係員に対して、列車又は車両を運転するときの条件を現示するもの」です(第2条第十七号)。条件・状態を表すのは表示のほうです。
自動列車制御装置に当てられた説明は、なぜ誤りになるのか?
役目を広げすぎているからです。省令第54条第2項・第57条は「自動的に列車を減速させ、又は停止させる」と限っており、進路の設定や運転操作そのものは入っていません。
連鎖と鎖錠の違いは?
連鎖は取扱いに一定の順序や制限をつけること、鎖錠は操作できないようにすることです。平成29年度は、鎖錠の定義が連鎖に当てられて誤りになりました。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
誤りの肢は、読んだだけではもっともらしく見えます。
「一定区間を1列車だけの運転に専用させる」も「合図、標識などで条件・状態を表す」も、それ自体は正しい説明です。貼られた語が違うだけです。
だから、定義の中身を覚えるより同じ問題の4肢を見比べて、同じ内容が2か所に出ていないかを見るほうが早く決まります。