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風力発電の風車とは?ナセル・ヨー制御・ピッチ制御の役割の違い

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ナセルの説明って、年度によって書かれ方が違わない?

プロペラ形の制御も、できる年とできない年があるのはなんで?

この記事の要点

ナセルとは、水平軸風車のタワーの頂部に配置され、動力伝達装置などを格納するもののことです。

ナセルは格納するものです。風向に追従させる制御装置と書いた肢は、誤りとされています。

試験は、部品の名前と役割を貼り替えて出してきます。名前と役割の対応だけ覚えれば切れます。

風車の肢は、分類のしかたと、部品の役割の2つに分かれます。

だから確認も、この2つに分けます。

風車の分類には軸が2本ある

分類の基準が2つあり、どちらも正しい肢として出ています。

分類の基準 分かれ方 出題
ロータ軸の配置 水平軸形垂直軸形 平成27年度 1級 学科 No.17 選択肢1(正しい側)
回転のトルクを発生させる方式 揚力形抗力形 平成30年度 1級 学科 No.17 選択肢3(正しい側)

ロータ軸のほうは、JISに定義があります。

JIS C 1400-1:2017「風力発電システム-第1部:設計要件」 3.21/3.58

3.21 水平軸風車(horizontal axis wind turbine) ロータの回転軸がほぼ水平な風車。

3.58 垂直軸風車(vertical axis wind turbine) ロータ軸が風の流れに対して,おおむね垂直な風車。

言い換えると、「分類の基準を2つ持っておかないと、揚力形という語が出た瞬間に迷う」ということです。

例えば、平成30年度の選択肢3は「回転のトルクを発生させる方式によって、揚力形と抗力形に分類される」と書かれており、こちらは誤りにされていません。ロータ軸の話ではないので、水平軸形か垂直軸形かとは別の話です。

ダリウス形が向きを変えなくてよい理由

ダリウス形が向きを変えなくてよいという肢は、平成27年度1級No.17・平成30年度1級No.17・令和3年度1級No.17・令和6年度1級No.14・令和8年度1級No.14の5年度とも正しい側に置かれています。令和3年度以降は「垂直軸形のため」という理由が肢の中に書かれるようになりました。

プロペラ形の制御は行える側

プロペラ形は「回転数制御や出力制御が行えない」と書けば誤り、「風速変動に対する回転速度の制御が容易である」と書けば正しい側です。同じ論点が肯定形と否定形で出ています。

制御が行えないと書いた肢が誤り、容易であると書いた肢が正しい側です。4年度で扱いが食い違っていません(平成27年度1級No.17が誤り、令和3年度1級No.17・令和6年度1級No.14・令和8年度1級No.14が正しい側)。同じことを裏返しただけです。令和3年度は「風速変動に対する制御」、令和6年度と令和8年度は「風速変動に対する回転速度の制御」と書かれます。

ナセル・ヨー制御・ピッチ制御を見分けるポイント

この3つは、出題で互いに説明を貼り替えられます。まず何をするものかを分けます。

名前 何をするか
ナセル 水平軸風車のタワー頂部に配置され、動力伝達装置・発電機・制御装置などを格納するもの。装置ではなく入れ物です
ヨー制御装置 風車ロータ回転面を風向に追従させる装置。ナセルごと水平に向きを変えます
ピッチ制御装置 風況に応じてブレードの設置角度を制御する装置。羽根をひねります

向きを変えるのがヨー、羽根をひねるのがピッチ、入れ物がナセル。この3語の対応だけで、複数年度の肢が切れます。

JIS C 1400-1:2017「風力発電システム-第1部:設計要件」 3.29

3.29 ナセル(nacelle) 水平軸風車において,タワーの頂部に配置され,動力伝達装置,その他の構成要素を格納するもの。

定義の述語が「格納するもの」です。装置ではありません。

出題は、この3つを円を描くように入れ替えてきます。

  • ナセルにヨーの説明を貼る:「ナセルは、風車ロータ回転面を風向に追従させる運転制御装置である」=平成30年度1級No.17と令和6年度1級No.14の2年度とも誤り
  • ヨー制御装置にピッチの説明を貼る:「ヨー制御装置は、風況に応じてブレードの設置角度を制御する装置である」=令和3年度1級No.17で誤り
  • ピッチ制御装置にヨーの説明を貼る:「ピッチ制御装置は、風車ロータ回転面を風向に追従させる装置である」=令和8年度1級No.14で誤り

正しい形も出ています。「ピッチ制御装置は、風況に応じてブレードの設置角度を制御する装置である」は令和6年度1級No.14の正しい肢、「ナセルは…格納するもの及びその内容物の総称である」は令和3年度・令和8年度の正しい肢です。

ナセル・ヨー・ピッチはどこの話か(模式図) タワー ナセル =入れ物。装置ではない ヨー=向きを変える ピッチ=羽根をひねる 緑=ブレード(羽根) ヨーはナセルごと水平に回す ピッチは羽根1枚ずつの角度
3つの用語がどこの話かをイメージでつかむための模式図です。形・寸法・羽根の枚数は実物どおりではありません。正しいのは、ナセルがタワー頂部の入れ物で、ヨーが向きを変え、ピッチが羽根の角度を変えるという対応だけです。

過去問でどう問われたか

1級で5年度に出ています。引っかけは大きく2つです。

  • ①述語を入れ替える:ナセルの「格納するもの」を「制御装置」に、ヨーの「ロータ軸の回転」を「ブレードの角度」に書き換えます。
  • ②できることをできないと書く:プロペラ形の制御について、行えないという否定形にします。
年度・級・問 誤りとされた記述
平成27年度 1級 学科試験 No.17
(公表正答は選択肢4)
プロペラ形風車は、回転数制御や出力制御が行えない ←②
平成30年度 1級 学科試験 No.17
(公表正答は選択肢4)
ナセルは、風車ロータ回転面を風向に追従させる運転制御装置である ←①
令和3年度 1級 第一次 No.17
(公表正答は選択肢4)
ヨー制御装置は、風況に応じてブレードの設置角度を制御する装置である ←①
令和6年度 1級 第一次 No.14
(公表正答は選択肢3)
ナセルは、風車ロータ回転面を風向に追従させる運転制御装置である ←①
令和8年度 1級 第一次 No.14
(公表正答は選択肢3)
ピッチ制御装置は、風車ロータ回転面を風向に追従させる装置である ←①

5年度とも、誤り肢は部品の役割を1つずらした形で作られています。数値を問う肢は1つもありません。

ナセルは格納するもの、ヨーはロータ軸の回転。この2つで5年度すべての誤り肢を切れます。平成30年度と令和6年度は一字一句同じ文、令和8年度は同じ説明をピッチ制御装置に付け替えた形です。

混同しやすい語

ヨー制御とピッチ制御:ヨーはロータ回転面ごと水平に向きを変える制御、ピッチはブレード1枚ずつの設置角度を変える制御です。動かす対象が、風車全体か羽根かで分かれます。

ナセルと制御装置:ナセルは装置ではなく、タワー頂部の入れ物です。規格の定義も述語が「格納するもの」になっています。

水平軸形・垂直軸形と揚力形・抗力形:前者はロータ軸の配置による分類、後者は回転のトルクを発生させる方式による分類です。分類の基準そのものが違うので、どちらも正しい肢になります。

風力と他の発電方式:出力が風まかせという点が、他と大きく違います。水をためて調整する揚水発電の記事や、需要に合わせて組み合わせる発電運用の記事とあわせて読むと位置づけがつかめます。

分散型電源としての風力:系統につなぐときは保護リレーが要ります。略号の読み分けは系統連系用保護装置の略記号の記事、切り離す事由は解列と保護リレーの記事で扱っています。

太陽光との違い:どちらも自然の条件で出力が変わりますが、部品の置き場所の問われ方が違います。シリコン太陽電池の記事にまとめました。

まちがえやすいポイント

この分野の肢は、3つの用語の説明を円を描くように入れ替えて作られています。

ナセルにヨーの説明、ヨーにピッチの説明、ピッチにヨーの説明。どれか1つを覚えていても、残り2つの対応を知らないと切れません。

向きを変える=ヨー、羽根をひねる=ピッチ、入れ物=ナセル。3語をセットで覚えます。

理解度チェック

Q.

ナセルとは何か?

水平軸風車において、タワーの頂部に配置され、動力伝達装置その他の構成要素を格納するものです(JIS C 1400-1:2017 3.29)。制御装置と書いた肢は誤りとされています。

Q.

ヨー運動とは、何が回ることか?

鉛直軸まわりのロータ軸の回転です(同 3.72、水平軸風車だけに適用)。ブレードの設置角度を制御することではありません。

Q.

風車を揚力形と抗力形に分けるのは、何による分類か?

回転のトルクを発生させる方式による分類です。ロータ軸の配置による水平軸形・垂直軸形とは別の基準です。

Q.

ナセルは何をするものか?

発電機や増速機などを格納するものです。向きを変えるのはヨー制御装置、羽根の角度を変えるのはピッチ制御装置で、役割が別々です。

まとめ

  • ナセル=タワーの頂部に配置され、動力伝達装置などを格納するもの(JIS C 1400-1:2017 3.29)。制御装置と書けば誤り。
  • ヨー運動=鉛直軸まわりのロータ軸の回転(同 3.72)。ブレードの設置角度の制御ではない。
  • 水平軸風車=ロータの回転軸がほぼ水平(同 3.21)。垂直軸風車=ロータ軸が風の流れにおおむね垂直(同 3.58)。
  • 分類の基準は2本。ロータ軸の配置(水平軸形/垂直軸形)と、トルクの発生方式(揚力形/抗力形)。
  • ダリウス形は垂直軸型なので、風向の変化に対して姿勢を変える必要がない。
  • プロペラ形は水平軸形の一種で、制御は行える側。行えないと書けば誤り。

参考資料

  • 日本産業規格 JIS C 1400-1:2017「風力発電システム-第1部:設計要件」3.21(水平軸風車)・3.29(ナセル)・3.58(垂直軸風車)・3.72(ヨー運動)・3.73(ヨーミスアラインメント)
  • 一般財団法人 建設業振興基金 試験研修本部「1級電気工事施工管理技術検定 問題・正答肢」(公式サイト)平成27年度No.17・平成30年度No.17・令和3年度No.17・令和6年度No.14・令和8年度No.14
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