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有機溶剤の人体への影響(健康障害)は過去問でどう問われる?|作業環境測定士

編集部

有機溶剤は種類が多くて、どれが何の障害か覚えきれませんよね?まず「全部に共通する性質」を押さえ、そのうえで物質ごとの“標的”を結びつけると整理できます。

この記事の要点

有機溶剤は脂溶性が高く中枢神経に作用し(麻酔作用・頭痛・めまいなどの不定愁訴)、呼吸器だけでなく皮膚からも吸収されます。肝臓・腎臓の障害を起こすものもあります。

物質ごとの標的は、ベンゼン=造血器、n-ヘキサン=末梢神経、メタノール・酢酸メチル=視神経、二硫化炭素=血管・精神、塩素系=肝・腎と結びつけて覚えます。

有機溶剤の問題は、共通する性質と、物質ごとの代表的な健康障害を入れ替える引っかけが中心です。

有機溶剤は脂溶性で中枢神経に効き、皮膚からも吸収されます。物質ごとに標的(造血器・末梢神経・視神経など)が違います。

すべての有機溶剤に共通する性質と影響

  • 脂溶性が高い:脳など脂肪に富んだ組織に入りやすく、中枢神経に作用します。
  • 中枢神経への作用:高濃度では麻酔作用、低濃度の繰り返しばく露では頭痛・めまい・記憶力減退・不眠などの不定愁訴がみられます。
  • 吸収経路:揮発性が高く呼吸器から吸収されますが、皮膚からも吸収されます(「皮膚からは吸収されない」は誤り)。
  • 肝臓・腎臓の障害:肝機能障害・腎機能障害を起こすものがあります。皮膚・粘膜への刺激(皮膚の角化、結膜炎など)もあります。

引火性と密度(よく問われる物理的性質)

有機溶剤は引火性のものが多いのですが、ハロゲン化炭化水素(塩素系など)は難燃性のものが多いのが特徴です。

「ハロゲン化炭化水素は特に引火性が強い」とするのは誤りです。

密度は物質で分かれます。塩素系(ハロゲン化)は水より重く、トルエンなどの炭化水素は水より軽いです。

蒸気の密度はおおむね空気より大きく、低いところにたまりやすい点は共通します。

物質ごとの代表的な健康障害

物質主な健康障害(標的)
ベンゼン造血器障害(再生不良性貧血・白血病)
トルエン中枢神経への作用、生殖毒性
n-ヘキサン末梢神経障害(多発性神経炎)※代謝産物2,5-ヘキサンジオンによる
メタノール・酢酸メチル視神経障害(視力低下・視野狭窄)
二硫化炭素動脈硬化・脳血管/虚血性疾患、精神障害、生殖毒性
四塩化炭素・トリクロロエチレン(塩素系)肝臓・腎臓の障害(トリクロロエチレンは腎がん・肝がん)
1,2-ジクロロプロパン胆管がん
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)頭痛・めまい・肝機能障害

混同しやすい物質

ベンゼン と トルエン

造血器障害(再生不良性貧血・白血病)を起こすのはベンゼンです。トルエンは中枢神経への作用や生殖毒性で、「トルエンが造血器障害」とするのは誤りです。

二硫化炭素の影響

二硫化炭素は、動脈硬化や脳血管・虚血性疾患、精神障害、生殖毒性が特徴です。「腎臓や肝臓に対する発がん性」とするのは誤りです。

過去問でどう問われたか

有機溶剤の人体への影響は、労働衛生一般の問10で毎回問われます。共通の性質や物質ごとの標的を入れ替える引っかけが中心です。

年度・問正答問われ方(引っかけの核心)
令和8年2月 問10トルエンによる健康障害で再生不良性貧血などの造血器障害」=誤り。造血器障害はベンゼン。
令和7年8月 問10「二硫化炭素は腎臓や肝臓に対する発がん性がある」=誤り。二硫化炭素は動脈硬化・精神障害など。
令和7年2月 問10「1,2-ジクロロエチレンの密度は水より小さい」=誤り。塩素系は水より重い。
令和6年8月 問10「トルエンの密度は水より大きい」=誤り。トルエンは水より軽い(蒸気は空気より重い)。
令和6年2月 問10「ハロゲン化炭化水素は特に引火性が強い」=誤り。塩素系は難燃性のものが多い。
令和5年8月 問10「揮発性が高く呼吸器から吸収されるが、皮膚から吸収されることはない」=誤り。皮膚からも吸収される。

造血器障害はベンゼン(トルエンではない)。有機溶剤は皮膚からも吸収され、塩素系は難燃性・水より重い。物質ごとの標的を結びつけて覚えます。

理解度チェック

問題:再生不良性貧血などの造血器障害を起こす代表的な有機溶剤はトルエンである。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

造血器障害(再生不良性貧血・白血病)はベンゼンです。トルエンは中枢神経への作用・生殖毒性が代表です(令和8年2月 問10)。

問題:有機溶剤は揮発性が高く呼吸器から吸収されるが、皮膚から吸収されることはない。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

有機溶剤は皮膚からも吸収されます。脂溶性が高いことも、皮膚から入りやすい理由です(令和5年8月 問10)。

まとめ

有機溶剤は脂溶性が高く、中枢神経に作用して麻酔作用や不定愁訴を起こし、呼吸器だけでなく皮膚からも吸収されます。肝・腎障害を起こすものもあります。

物質ごとの標的は、ベンゼン=造血器、n-ヘキサン=末梢神経、メタノール・酢酸メチル=視神経、二硫化炭素=血管・精神、塩素系=肝・腎です。

塩素系は難燃性で、水より重いという物理的性質もあります。

参考資料

  • 有機溶剤の性質と健康影響(脂溶性・吸収経路・中枢神経作用・物質別の標的臓器)は、労働衛生・産業中毒の基礎、有機溶剤中毒予防規則の対象物質にもとづく。
  • 過去問の問われ方は、安全衛生技術試験協会の公表試験問題(労働衛生一般 令和5年8月〜令和8年2月の問10)にもとづく・公表正答。

この記事を書いた人

作業環境測定士 独学ノート 編集部

作業環境測定士試験を独学で受ける人のための学習ノートの編集部です。