作業環境測定士 独学ノート
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令和5年8月 作業環境測定士試験 労働衛生一般 問10を解説(有機溶剤による健康障害)

令和5年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問10は、有機溶剤とそれによる健康障害に関する問題です。5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。

この問題のポイント

この問題は、有機溶剤の体への入り方と、慢性ばく露で起きる障害の基本を問うものです。

脂溶性で脳など脂肪の多い組織に入りやすいこと、慢性中毒で頭痛・めまい・記憶力減退などの不定愁訴が出ること、肝臓・腎臓の障害や皮膚・粘膜の症状を起こすことが、有機溶剤の典型像です。

引っかけの核心は、体内への入口を呼吸器だけに限定し、皮膚からの吸収を否定してしまうところにあります。

※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。

正解:選択肢2(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
1○(正しい)有機溶剤は脂溶性で、脂肪の多い脳などに入りやすいので正しい。中枢神経への作用の入口になる。
2×(誤り)呼吸器から吸収されやすいのは正しいが、皮膚からも吸収される(経皮吸収あり)。「皮膚から吸収されることはない」とした点が誤り。
3○(正しい)低濃度の繰り返しばく露による慢性中毒で、頭痛・めまい・記憶力減退・不眠などの不定愁訴が出るのは正しい。
4○(正しい)有機溶剤には肝機能障害や腎機能障害を起こすものがあり、正しい。
5○(正しい)皮膚・粘膜の症状として皮膚の角化や結膜炎などがみられるのは正しい。

選択肢2のポイント(ここが誤り)

有機溶剤は揮発性が高く、蒸気となって呼吸器から吸収されやすい物質です。ここまでは正しい記述です。

問題は、その続きで体への入口を呼吸器だけに限ってしまった点にあります。

有機溶剤は脂溶性です。皮膚の表面は皮脂などの脂で覆われ、その下に脂質を含む層が続くため、脂に溶ける有機溶剤は皮膚を通り抜けて体内に入っていきます。

つまり経皮吸収が起こります。手指が直接ふれる作業では、呼吸器からのばく露とは別に、皮膚から取り込まれる分を見落とせません。

そのため「皮膚から吸収されることはない」という言い切りが誤りです。

許容濃度の勧告でも、皮膚から吸収されやすい物質には経皮吸収に注意する旨の印(皮膚マーク)が付されており、皮膚からの吸収は実際に管理上考慮されています。

呼吸器だけを入口と考えると、皮膚からのばく露を取りこぼしてばく露量を過小評価する危険につながります。

覚え方

  • 有機溶剤の入口=呼吸器と皮膚の両方(脂溶性ゆえ経皮吸収あり)
  • 脂溶性→脂肪の多い脳に入りやすい→中枢神経の不定愁訴(頭痛・めまい・記憶力減退)
  • 標的は中枢神経だけでなく、肝臓・腎臓・皮膚・粘膜にも及ぶ
  • 許容濃度の勧告で皮膚マークが付く物質=経皮吸収に注意

理解度チェック

問題:有機溶剤は揮発性が高く呼吸器から吸収されやすいが、皮膚から吸収されることはないといえるか。

答えを見る

いいえ。有機溶剤は脂溶性のため皮膚からも吸収されます(経皮吸収)。呼吸器だけが入口ではなく、皮膚からの吸収も体内への入口になります。

問題:有機溶剤が脂溶性であることは、健康障害のうえでどんな意味を持つか。

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脂に溶ける性質のため、脂肪の多い脳など中枢神経に入りやすく、頭痛・めまい・記憶力減退などの症状につながります。また皮膚を通り抜けて吸収される(経皮吸収)一因にもなります。

出典

  • 公益財団法人 安全衛生技術試験協会「作業環境測定士試験(労働衛生一般)令和5年8月」公表試験問題 問10・公表正答。
  • 日本産業衛生学会「許容濃度等の勧告」(経皮吸収・皮膚マークの考え方)。最新版による。

この記事を書いた人

作業環境測定士 独学ノート 編集部

作業環境測定士試験を独学で受ける人のための学習ノートの編集部です。