T
指向性が3つあるけど、どれをどの場面で使うの?
種類と出力方式も混ざって、組合せが分からない…。
この記事の要点
マイクロホンとは、音を電気信号に変える機器のことです。
公共建築工事標準仕様書が使える形を2つに絞っています。
指向性は3つ、出力方式は2つ。狂わされるのはこのどれかです。
マイクロホンの選定には、公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)に規定があります。
書かれているのは、使える種類とワイヤレスマイクの決まりで、性能は表1.8.6(周波数特性・出力方式・感度)が決めています。出題が狂わせてくるのは、種類・指向性・出力方式の3つです。マイクロホンで拾った音を送り出す側は拡声設備の論点になります。順に見ていきます。
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 第6編 第8節 映像・音響装置 1.8.6.1 マイクロホン
(1) マイクロホンは、JIS C 5502「マイクロホン」に適合するものとし、ムービングコイルマイクロホン(ダイナミック形)又はコンデンサマイクロホン(エレクトレット形)とする。
仕様書が挙げているのは、この2つだけです。過去問の肢に出てくる名前も、括弧書きまで含めてこの表記と同じです。
2つの違いは、音を電気に変える仕組みにあります。ムービングコイル形は、振動板につないだコイルが磁石の中で動いて発電します。電源が要らず、丈夫です。コンデンサ形は、振動板と背後の電極でつくったコンデンサの静電容量の変化を取り出します。感度と周波数特性で勝りますが、湿気に弱くなります。
この違いが、そのまま場面の選び分けになります。
| 種類 | 正しい側に置かれた場面 |
|---|---|
| コンデンサマイクロホン | ピアノ演奏の収録/スタジオでのピアノ演奏の録音 |
| ダイナミックマイクロホン (ムービングコイル形) |
屋外での使用/講堂での一般的なスピーチ |
この2つの組合せは、3年度とも正しい側に置かれています。丈夫なほうを屋外と講堂へ、感度の高いほうをピアノの録音へ、という割り振りです。
令和2年度だけは、場面を出さずに2つを直接比べる形で出ています。
令和2年度 1級 No.43 選択肢3(答え)・選択肢4(正しい側)
選択肢3 ダイナミック形のマイクロホンは、コンデンサ形に比べて周波数特性に優れている。
選択肢4 コンデンサ形のマイクロホンは、ダイナミック形に比べて温湿度の影響を受けやすい。
選択肢4だけが正しい側です。言い換えると、「温湿度の影響を受けやすいのはコンデンサ形」ということです。
指向性とは、どの方向の音をよく拾うかという性質のことです。仕様書は周波数特性の欄で、これを全指向性と有指向性の2つに分けています。
公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)令和7年版 第6編 第8節 映像・音響装置 表1.8.6 マイクロホンの性能(抜粋)
周波数特性 全指向性(正面感度レベル) 100Hz〜10kHz 偏差10dB以内
周波数特性 有指向性(正面感度レベル) 100Hz〜10kHz 偏差15dB以内
偏差の許容が全指向性のほうが厳しくなっています。向きを絞ったものは正面以外の特性が乱れるので、その分だけ緩めてあるということです。
試験では、この有指向性がさらに2つに分けて出てきます。両指向性と単一指向性です。仕様書の言葉がそのまま肢になるのは情報通信設備の屋内配線も同じですが、指向性はこのように呼び方が増えます。
| 指向性 | 出題での扱い |
|---|---|
| 両指向性 | 対談の収録で2年度とも正しい側 |
| 単一指向性 | 目的外の音の集音を避けるときに正しい側 |
| 全指向性 | 残響の多い部屋に当てた肢が答え |
例えば、話す人が1人で正面を向くなら、正面だけを拾う単一指向性を選びます。向かい合って対談するなら、前と後ろの両方を拾う両指向性です。同じ部屋でも、誰の声を拾うかで選ぶものが変わります。
指向性が答えになったのは2年度です。狂わせ方は同じではありません。
令和5年度 1級 No.41 選択肢4(答え)
周囲のすべての方向からの音を集音するため、両指向性マイクロホンを選定した。
周囲のすべての方向を拾うのは全指向性です。名前のほうを取り替えた形で、同じ年度の選択肢3では目的外の音を避けるために単一指向性が選ばれ、そちらは正しい側でした。
平成27年度 1級 No.42 選択肢3(答え)
残響の多い部屋で使用するため、全指向性マイクロホンを選定した。
こちらは名前でなく場面のほうを取り替えた形です。残響が多い部屋では壁で跳ね返った音が四方から届くので、全方向を拾う形は向きません。この年度の選択肢4では対談の収録に両指向性が選ばれ、そちらは正しい側でした。
仕様書の表1.8.6は、出力方式を600Ω以下の平衡又は不平衡としています。どちらも使えるという書き方です。試験は、そこから場面を1つ足して問いました。
令和8年度 1級 No.38 選択肢2(答え)
誘導雑音レベルが高い場所に使用するため、出力方式が不平衡型のマイクロホンを選定した。
平衡型は2本の信号線に逆向きの信号を流し、受け側で差を取ります。外から乗った雑音は2本に同じ向きで乗るので、差を取ると消えます。不平衡型は信号線1本と接地なので、この打ち消しが働きません。誘導そのものの防ぎ方は中央監視制御設備の信号線でも問われています。誘導雑音が高い場所で選ぶのは平衡型です。
この年度だけ、指向性でも種類でもない場所を狂わせています。
混同しやすい語
コンデンサ形とダイナミック形:ピアノ演奏の収録はコンデンサ形、屋外や講堂のスピーチはダイナミック形です。
両指向性と全指向性:対談の収録は両指向性です。周囲のすべての方向に両指向性とした肢が令和5年度の答えでした。
単一指向性:目的外の音の集音を避けるときに正しい側で出ています。
平衡型と不平衡型:誘導雑音レベルが高い場所に不平衡型とした肢が令和8年度の答えでした。
1級で4年度に出ています。設問名が「マイクロホンの選定に関する記述」なのは3年度で、令和2年度だけは「放送設備に関する記述」の中にマイクロホンの肢が入る形でした。答えにされた場所は、年度ごとに違います。
この系統の肢は、次の順に見ます。ピアノと講堂は飛ばします。コンデンサ形とダイナミック形が置かれていれば正しい側です。次に対談を探し、両指向性ならそこも飛ばします。残った肢のうち、集音の範囲と指向性の名前が食い違うもの、または出力方式に不平衡型と書いてあるものが答えです。
対談の収録にはどの指向性を選ぶか?
両指向性です。平成27年度と令和8年度の2年度とも正しい側に置かれています。
スタジオでのピアノ演奏の録音にはどの種類を選ぶか?
コンデンサマイクロホンです。屋外や講堂のスピーチはダイナミックマイクロホンで、どちらも3年度とも正しい側です。
温湿度の影響を受けやすいのはどちらか?
コンデンサ形です。令和2年度の選択肢4に正しい側として置かれています。
令和8年度で答えになったのはどの論点か?
出力方式です。誘導雑音レベルが高い場所に不平衡型のマイクロホンを選定したという肢でした。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の出題の確認日:2026年8月
まちがえやすいポイント
正しい側の肢は毎年ほぼ同じです。
コンデンサ形とピアノ演奏、ダイナミック形と講堂のスピーチ、両指向性と対談の収録。この3つはどの年度でも動きません。
動くのは残り1つだけです。平成27年度は場面、令和5年度は集音の範囲、令和8年度は出力方式でした。