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化学物質の性状と挙動(蒸気密度・溶解度・ヒューム)|作業環境測定士

編集部

「気体は温まると溶けやすい?溶けにくい?」で迷いますよね。炭酸飲料が温まると気が抜けるのと同じで、気体は温度が高いほど溶けにくくなります。性状の問題は、この手の直感とのズレが狙われます。

この記事の要点

気体の液体への溶解度は、温度が高いほど小さくなります。有機溶剤の蒸気は空気より重く、低いところに滞留します。蒸気圧は沸点が低い物質ほど大きくなります。

ヒュームは固体が蒸発・凝縮した固体の微粒子(一次粒子1μm以下)、ミストは液体の微粒子です。粒子の沈降速度は粒径の2乗に比例します。

化学物質の性状(溶解度・蒸気密度・粒径など)は、作業環境測定でどう発散・分布するかや、捕集方法の選択にも関わる労働衛生一般の論点です。

問5でほぼ毎年、性状と挙動が問われます。直感とのズレや、ヒュームとミストの取り違えが引っかけの中心です。

気体の溶解度は温度が高いほど小さい。有機溶剤の蒸気は空気より重い。ヒュームは固体微粒子、ミストは液体微粒子です。

気体・蒸気のふるまい

  • 溶解度…気体の液体への溶解度は、温度が高いほど小さくなります(温まると溶けにくい)。一定温度では、溶ける気体の質量はその気体の圧力に比例します(ヘンリーの法則)。
  • 蒸気密度…有機溶剤の蒸気は空気より重い(密度が大きい)ものが多く、低いところに滞留しやすいです。分子量が大きいほど蒸気密度は大きくなります。
  • 蒸気圧…沸点が低く揮発しやすい物質ほど蒸気圧が大きくなります(例:ジクロロメタンの蒸気圧はトルエンより大きい)。
  • 水への溶けやすさ…水溶性の高いガスは上気道で吸収されやすく、水溶性の低いガスは肺の深部まで到達しやすい、という挙動の違いがあります。

粒子状物質(ヒューム・ミスト)

粒子状物質は、できかたで呼び名が変わります。

種類でき方・性質
ヒューム固体が高温で蒸発し、その後凝縮した固体の微粒子。一次粒子は1μm以下と小さく、凝集しやすい
ミスト空気中に浮遊する液体の微粒子。めっきや電解の工程などで発生。粒径はヒュームより大きい
粉じん固体の破砕などで生じる固体粒子

ヒュームは固体、ミストは液体という点が基本です。粒径はヒューム<ミストの関係にあります。粒子の沈降速度は粒径の2乗に比例します(ストークスの法則。大きい粒子ほど速く沈む)。

環境空気中の有害物質の濃度は、対数正規分布に従うことが多いとされます。また、混合有機溶剤から出る蒸気の組成は、揮発しやすさの違いから、元の混合液の組成とは異なります。岩石を切断・研磨して生じる粉じんの遊離けい酸含有率は、もとの岩石ではなく、生じた粉じん自体を測定して求めます。

極性・溶解性

極性の有無は、水への溶けやすさや捕集に関わります。クロロホルムは四塩化炭素より極性が大きい(四塩化炭素は対称形で無極性)です。

1,4-ジオキサンやN,N-ジメチルホルムアミドのように、脂溶性と水溶性をともに有する物質もあります。

混同しやすいところ

気体の溶解度 と 温度

気体の液体への溶解度は、温度が高いほど小さくなります。「温度が高いほど大きい」は誤りです。

ヒューム と ミスト

ヒュームは固体が蒸発・凝縮した固体微粒子、ミストは液体の微粒子です。粒径はヒュームのほうが小さくなります。

蒸気圧 と 沸点

沸点が低く揮発しやすい物質ほど蒸気圧が大きくなります(ジクロロメタン>トルエン)。

過去問でどう問われたか

化学物質の性状・挙動は、労働衛生一般の問5で繰り返し(令和5年8月〜令和8年2月)出題されています。溶解度と温度、蒸気圧、ヒューム・ミストが中心です。

年度問われ方・引っかけ
令和8年2月問5「ジクロロメタンの蒸気圧はトルエンより小さい」とした選択肢が誤り(ジクロロメタンのほうが大きい)。
令和6年8月問5「粉じんの遊離けい酸含有率はもとの岩石を測定して知る」とした選択肢が誤り(生じた粉じんを測定)。
令和6年2月・令和5年8月問5「気体の液体への溶解度は、液体の温度が高いほど大きい」とした選択肢が誤り(温度が高いほど小さい)。

引っかけは次の型に整理できます。

  • 気体の溶解度を「温度が高いほど大きい」とする(温度が高いほど小さい)。
  • 蒸気圧の大小を逆にする(沸点が低いほど蒸気圧は大きい)。
  • ヒュームとミストを取り違える(ヒューム=固体、ミスト=液体)。
  • 粉じんの遊離けい酸を「もとの岩石」で測るとする(生じた粉じんを測る)。

気体の溶解度は温度が高いほど小さい。有機溶剤の蒸気は空気より重い。ヒュームは固体微粒子・ミストは液体微粒子、沈降速度は粒径の2乗に比例します。

理解度チェック

問題:気体の液体への溶解度は、一般に、液体の温度が高いほど大きい。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

気体の液体への溶解度は、温度が高いほど小さくなります(温まると溶けにくい)。一定温度では溶ける気体の質量は圧力に比例します(令和6年2月・令和5年8月 労働衛生一般 問5の論点)。

問題:ヒュームは、空気中に浮遊する液体の微粒子で、固体粒子であるミストより粒径が大きい。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

逆です。ヒュームは固体が蒸発・凝縮した固体の微粒子、ミストは液体の微粒子で、粒径はヒュームのほうが小さくなります。

問題:粒子状物質の空気中での沈降速度は、粒径の2乗に比例する。

〇か×か。

答えを見る

答え:

ストークスの法則により、沈降速度は粒径の2乗に比例します(大きい粒子ほど速く沈みます)。

まとめ

気体の液体への溶解度は温度が高いほど小さく、有機溶剤の蒸気は空気より重く低所に滞留します。蒸気圧は沸点が低い物質ほど大きくなります。

ヒュームは固体が蒸発・凝縮した固体微粒子、ミストは液体の微粒子で、沈降速度は粒径の2乗に比例します。

問5で毎年問われる引っかけは、溶解度と温度、蒸気圧の大小、ヒュームとミストの取り違え、粉じんの遊離けい酸の測り方です。いずれも直感とのズレがあります。

参考資料

  • 気体の溶解度と温度の関係(温度が高いほど小さい)・ヘンリーの法則、蒸気密度・蒸気圧、ヒューム(固体微粒子・一次粒子1μm以下)とミスト(液体微粒子)の区別、沈降速度と粒径(ストークスの法則)、極性(クロロホルム>四塩化炭素)は、物理化学・エアロゾル工学の基礎、作業環境測定の解説による。
  • 環境空気中の濃度は対数正規分布に従うことが多い。粉じんの遊離けい酸含有率は生じた粉じん自体を測定する。
  • 過去問の問われ方は、安全衛生技術試験協会の公表試験問題(労働衛生一般 問5、令和5年8月〜令和8年2月)にもとづく。正答は公表正答・一次資料による。

この記事を書いた人

作業環境測定士 独学ノート 編集部

作業環境測定士試験を独学で受ける人のための学習ノートの編集部です。