編集部
「この溶剤の尿中の指標は何?」が覚えにくいですよね。トルエンは馬尿酸、キシレンはメチル馬尿酸、スチレンはマンデル酸…と、物質と代謝物をペアで結びつけるのが近道。鉛だけは骨に蓄積、と押さえます。
この記事の要点
有機溶剤は脂溶性で脂肪に富む組織(中枢神経など)に蓄積し、主に肝臓で代謝されて尿中に排泄されます。代謝物を測るのが生物学的モニタリングです。
トルエン=馬尿酸、キシレン=メチル馬尿酸、スチレン・エチルベンゼン=マンデル酸、n-ヘキサン=2,5-ヘキサンジオン。鉛は骨に蓄積し、指標は血中鉛・尿中δ-アミノレブリン酸などです。採尿は作業終了時に行います。
有害物質は、吸収され、代謝・蓄積され、排泄されます。その過程で生じる代謝物を尿などで測り、体内に取り込まれた量を評価するのが生物学的モニタリングです。
試験では労働衛生一般の問4で、物質と代謝物・指標の組合せがほぼ毎年問われます。
トルエンは馬尿酸、キシレンはメチル馬尿酸、スチレンはマンデル酸、n-ヘキサンは2,5-ヘキサンジオン。鉛は骨に蓄積します。
標的臓器とは、全身の臓器のうち最も早く臨界濃度(有害作用が生じる最小の細胞内濃度)に達する臓器のことです。
物質と尿中の指標(代謝物)はペアで覚えます。これが問4の中心です。
| 物質 | 尿中などの指標(代謝物) |
|---|---|
| トルエン | 馬尿酸 |
| キシレン | メチル馬尿酸 |
| スチレン・エチルベンゼン | マンデル酸 |
| n-ヘキサン | 2,5-ヘキサンジオン |
| ベンゼン | フェノール(代謝物。毒性も示す) |
| テトラクロロエチレン | トリクロロ酢酸・総三塩化物 |
| 鉛 | 血中鉛、尿中δ-アミノレブリン酸、赤血球プロトポルフィリン |
| マンガン | 尿中・血液中のマンガン |
| カドミウム | 尿中β₂-ミクログロブリン |
有機溶剤の代謝物は、ばく露後すぐに尿で測れます。
採尿は有機溶剤業務の作業終了時(直後)に行うのが原則で、連続して作業する場合は後半の作業日の作業終了時に行います。
「代謝に時間がかかるので24時間以上たってから採尿する」とするのは誤りです。
また、ベンゼンとフェノールの関係に注意します。ベンゼンが代謝されてフェノールになるのであって、その逆ではありません。
「フェノールが代謝されてベンゼンとして排泄される」は誤りです。
混同しやすいところ
n-ヘキサン と シクロヘキサノン
n-ヘキサンの指標は尿中2,5-ヘキサンジオンです。シクロヘキサノンと取り違える選択肢が出ます。
鉛の蓄積部位
鉛は主に骨に蓄積します(腎臓ではありません)。指標は血中鉛、尿中δ-アミノレブリン酸、赤血球プロトポルフィリンです。δ-アミノレブリン酸は尿中で測ります。
ベンゼン と フェノール
ベンゼンが代謝されてフェノールを生じます。逆(フェノール→ベンゼン)ではありません。
化学物質の吸収・代謝・蓄積は、労働衛生一般の問4で6回連続(令和5年8月〜令和8年2月)出題されています。物質と代謝物・指標の取り違え、採尿のタイミングが中心です。
| 年度 | 問 | 問われ方・引っかけ |
|---|---|---|
| 令和8年2月 | 問4 | 「フェノールは代謝されて尿中にベンゼンとして排泄される」とした選択肢が誤り(逆。ベンゼン→フェノール)。 |
| 令和7年8月 | 問4 | 採尿を「業務終了後24時間以上経過してから行う」とした選択肢が誤り(作業終了時)。 |
| 令和7年2月 | 問4 | 「鉛は主に腎臓に蓄積された後、尿中に排出される」とした選択肢が誤り(鉛は主に骨に蓄積)。 |
| 令和6年8月 | 問4 | 「n-ヘキサンの指標は尿中n-ヘキサノール」とした選択肢が誤り(2,5-ヘキサンジオン)。 |
| 令和6年2月 | 問4 | 「鉛の指標として赤血球中のδ-アミノレブリン酸」とした選択肢が誤り(δ-アミノレブリン酸は尿中で測る)。 |
| 令和5年8月 | 問4 | 「n-ヘキサンの指標は尿中シクロヘキサノン」とした選択肢が誤り(2,5-ヘキサンジオン)。 |
引っかけは次の型に整理できます。
トルエン=馬尿酸、キシレン=メチル馬尿酸、スチレン=マンデル酸、n-ヘキサン=2,5-ヘキサンジオン。鉛は骨に蓄積、採尿は作業終了時、ベンゼン→フェノールです。
問題:n-ヘキサンの生物学的モニタリング指標は、尿中のシクロヘキサノンである。
〇か×か。
答え:×
n-ヘキサンの指標は尿中の2,5-ヘキサンジオンです(令和5年8月 労働衛生一般 問4の論点)。
問題:鉛は、体内に入ると主に腎臓に蓄積された後、尿中に排出される。
〇か×か。
答え:×
鉛は主に骨に蓄積します(生物学的半減期は約10年)。指標は血中鉛、尿中δ-アミノレブリン酸、赤血球プロトポルフィリンです(令和7年2月 労働衛生一般 問4の論点)。
問題:有機溶剤は代謝に時間がかかるため、採尿は業務終了後24時間以上経過してから行う。
〇か×か。
答え:×
有機溶剤の代謝物は作業終了時に尿で測れます。採尿は作業終了時(連続作業なら後半の作業日の終了時)に行います(令和7年8月 労働衛生一般 問4の論点)。
有機溶剤は脂溶性で脂肪組織に蓄積し、肝臓で代謝されて尿中に排泄されます。
トルエンは馬尿酸、キシレンはメチル馬尿酸、スチレン・エチルベンゼンはマンデル酸、n-ヘキサンは2,5-ヘキサンジオンが指標です。
鉛は骨に蓄積し、血中鉛・尿中δ-アミノレブリン酸などで評価します。
問4で毎年問われる引っかけは、物質と代謝物の取り違え、代謝の向き、鉛の蓄積部位、採尿のタイミングです。
参考資料
※ 最終更新:2026年6月