令和8年2月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問4は、化学物質の吸収・代謝・蓄積に関する問題です。5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、有害物質が体内に取り込まれてから尿などに排泄されるまでの流れと、それを使った生物学的モニタリングの基本を問うものです。
マンガンや鉛の指標物質、有機溶剤の尿の採取時期、代謝産物の毒性まで広く触れています。
引っかけの核心は、体内に取り込まれた物質(前駆体)と、代謝されてできる物質(代謝物)を逆にすり替えるところにあります。
ベンゼンとフェノールはその典型で、どちらが入ってきてどちらが出ていくのかを取り違えさせる作りです。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢3(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | マンガンの生物学的モニタリング指標として、尿中または血液中のマンガン量を用いるのは正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | 鉛のばく露では血液中の鉛濃度の上昇が先に現れ、尿中δ-アミノレブリン酸の上昇は遅れて現れるとするのは正しい。 |
| 3 | ×(誤り) | 前駆体と代謝物が逆。フェノールがベンゼンになるのではなく、ベンゼンが代謝されて尿中フェノールとして排泄される。 |
| 4 | ○(正しい) | 有機溶剤の指標物質を含む尿は、連続した作業日では後半の作業日の作業終了時に採取するのがよいとするのは正しい。 |
| 5 | ○(正しい) | 取り込まれた物質は代謝で無害になることもあるが、代謝産物が毒性を示し障害の原因になることもあるとするのは正しい。 |
ベンゼンは体内に取り込まれると、肝臓などで酸化され、最終的に尿中フェノール(フェノール硫酸抱合体など)として排泄されます。
つまり入ってくるのがベンゼンで、出ていくのがフェノールです。この向きが、生物学的モニタリングでベンゼンばく露を尿中フェノールで評価する根拠になっています。
選択肢3は、これを「フェノールが代謝されて、尿中にベンゼンとして排泄される」と説明しています。
前駆体と代謝物が真逆で、体外に出ていくはずのフェノールを取り込まれた側に、取り込まれたはずのベンゼンを排泄される側に置き換えています。
揮発性が高く体内で代謝されるベンゼンが、そのまま尿に出てくることも通常ありません。代謝の流れを反対向きにした点が誤りです。
選択肢2の鉛のように、ばく露で先に動く指標と遅れて動く指標の順序を入れ替える出し方とあわせ、この科目ではどちらが先か・どちらに変わるかという向きの取り違えが定番の引っかけです。
問題:ベンゼンにばく露されたとき、生物学的モニタリングで指標とする尿中の物質は何で、それはどちらが代謝物か。
指標は尿中フェノールです。体内に取り込まれたベンゼンが代謝されてフェノールになり、尿中フェノールとして排泄されます。フェノールが代謝物の側で、ベンゼンが取り込まれた前駆体です。
問題:代謝を経た物質は必ず無害になるといえるか。
いいえ。代謝によって無害になることもありますが、代謝産物のほうが毒性を示し、それが障害の原因になることもあります。
出典
※ 最終更新:2026年6月