編集部
「溶解度積はイオン濃度で変わる?」は引っかけです。平衡定数も溶解度積も、変わるのは温度のときだけです。
この記事の要点
化学平衡は正反応と逆反応の速度が等しい状態。平衡定数Kは温度で変わり、濃度から計算できます。温度を上げると吸熱方向に平衡が動きます(ルシャトリエの原理)。
溶解度積(Ksp)は難溶性塩の溶解平衡の平衡定数で、温度だけで決まり、イオン濃度では変わりません。溶解度は極性が似たものどうしほど大きくなります。
化学平衡と溶解度は、分析に関する概論の問3・問6あたりで毎年のように出ます。平衡定数も溶解度積も「温度で変わるが濃度では変わらない」という共通の性質があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 平衡状態 | 正反応と逆反応の速度が等しく、見かけ上は変化が止まった状態 |
| 平衡定数 K | 反応 A+B ⇌ C なら K=[C]/([A][B])。平衡時の濃度から計算できる |
| Kの単位 | 上の例では (mol/L)/((mol/L)(mol/L))=mol⁻¹·L となる |
| 温度との関係 | 平衡定数は温度に依存する(温度が変われば値も変わる) |
| ルシャトリエの原理 | 温度・濃度・圧力を変えると、その影響を和らげる向きに平衡が動く |
温度を上げると、吸熱方向(熱を吸収する向き)に平衡が動きます。正反応が吸熱なら、温度を上げると平衡は右(生成側)へ動きます。
「水素H₂ 1.0 molとヨウ素I₂ 1.0 molを10 Lの容器に入れ、H₂+I₂ ⇌ 2HI でヨウ化水素が1.5 mol生成して平衡になった。平衡定数は?」(令和7年8月 問6)。
公表正答は36です。
溶解度積は、難溶性の塩の溶解平衡についての平衡定数です。塩化銀なら AgCl ⇌ Ag⁺+Cl⁻ で、Ksp=[Ag⁺][Cl⁻]。
性質は平衡定数と同じで、温度だけで決まり、各イオンの濃度を変えても値は変わりません。
混同しやすいところ
溶解度積 と イオン濃度
溶解度積は温度だけで決まる定数です。「水溶液中の塩化物イオンの濃度によって変化する」は誤りです。イオン濃度を変えても積はKspのまま(変えると沈殿や溶解で調整される)です。
平衡定数 と 反応速度
平衡定数は平衡時の濃度の関係を表す値で、温度に依存します。反応の速さ(速度)そのものとは別の概念です。
温度を上げたときの向き
温度を上げると吸熱方向に平衡が動きます。正反応が吸熱なら右(生成側)へ動くため、「左に進む」とするのは誤りです。
化学平衡と溶解度は、分析に関する概論の問3・問6・問11あたりで(令和6年2月〜令和8年2月)問われています。
| 年度 | 問 | 問われ方・引っかけ |
|---|---|---|
| 令和7年8月 | 問6 | H₂+I₂ ⇌ 2HI の平衡定数の計算(答え36)。 |
| 令和7年8月 | 問11 | 「溶解度積は塩化物イオンの濃度によって変化する」が誤り(温度だけで決まる)。 |
| 令和7年2月 | 問3 | 溶解度の比較。極性が似たものほど溶けやすい(ベンゼンは水よりクロロホルムに溶けやすい)。 |
| 令和6年2月 | 問6 | 平衡の性質。吸熱方向に温度を上げたときの平衡の動き・平衡定数の単位など。 |
引っかけは次の型に整理できます。
平衡定数も溶解度積も温度で変わり、濃度(イオン濃度)では変わりません。温度を上げると吸熱方向に平衡が動きます。溶解度はイオン濃度で溶解度積が変わるとする・温度での平衡が動く方向を逆にするのがよくある引っかけです。
問題:塩化銀の溶解度積は、水溶液中の塩化物イオンの濃度によって変化する。
〇か×か。
答え:×
溶解度積は温度だけで決まる定数で、イオン濃度では変わりません(令和7年8月 分析概論 問11の論点)。
問題:H₂ 1.0 molとI₂ 1.0 molを10 Lに入れ、H₂+I₂ ⇌ 2HI でHIが1.5 mol生成して平衡になったとき、平衡定数は36である。
〇か×か。
答え:〇
H₂=I₂=0.25 mol、HI=1.5 mol、K=(1.5)²÷(0.25×0.25)=36です(令和7年8月 分析概論 問6)。
問題:ベンゼンの水に対する溶解度は、クロロホルムに対する溶解度よりも大きい。
〇か×か。
答え:×
無極性のベンゼンは、無極性のクロロホルムにはよく溶けますが水には溶けにくいため、水への溶解度のほうが小さくなります(令和7年2月 分析概論 問3の論点)。
化学平衡は、正反応と逆反応の速度が等しい状態です。平衡定数は平衡時の濃度から計算でき、温度に依存します。
温度を上げると吸熱方向に平衡が動きます(ルシャトリエの原理)。
溶解度積は難溶性塩の溶解平衡の平衡定数で、温度だけで決まりイオン濃度では変わりません。溶解度は極性が似たものほど大きくなります。
「溶解度積がイオン濃度で変わる」「温度での平衡が動く方向を逆にする」が引っかけです。
参考資料
※ 最終更新:2026年6月
編集部メモ
化学平衡は、「平衡定数・溶解度積は温度で変わるが濃度では変わらない」「温度を上げると吸熱方向へ」の2点を軸にすると、正誤判定がぶれません。平衡定数の計算は、係数の合計が等しい反応(H₂+I₂ ⇌ 2HI など)では体積が約分でき、物質量のまま計算できます。