編集部
分配係数は「量の比」ではなく「濃度の比」です。ここを間違えると体積を無視して計算が崩れます。各相の濃度=質量÷体積をていねいに出すのが核です。
この記事の要点
分配係数 K=有機相の濃度 ÷ 水相の濃度。「量(質量)の比」ではなく「濃度の比」です。各相の濃度は質量÷体積で出します。
抽出後の有機相・水相の質量から分配係数を求める型と、分配係数と体積から残る量を求める型があります。体積をそろえて濃度に直すのが計算の核です。
溶媒抽出は、水溶液中の物質を、水と混ざらない有機溶媒(ヘキサンなど)に移して取り出す操作です。
分析に関する概論の問5・問6で、分配係数の計算が繰り返し出ます。分配係数は濃度の比であり、体積を必ず考えに入れるのが要点です。
| 項目 | 式・内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 分配係数 K | 有機相の濃度 ÷ 水相の濃度 | 濃度の比。量(質量)の比ではない |
| 各相の濃度 | その相の質量 ÷ その相の体積 | 体積(mL)をそろえる |
| 質量保存 | 有機相の質量+水相の質量=はじめの全量 | 移った分だけ水相が減る |
「物質A 50 mgを含む水溶液100 mLにヘキサン5.0 mLを加え、Aをヘキサンに抽出したら40 mgが移った。
分配係数K(=ヘキサン相の濃度÷水相の濃度)は?」(令和5年8月 問6)。
公表正答は80です。質量の比(40÷10=4)で出すと誤りで、体積で割って濃度にしてから比を取ります。
同型で「A 50 mgを水溶液200 mL+ヘキサン10 mLで抽出、45 mgが移った」(令和6年8月 問5)は、ヘキサン相=45÷10=4.5、水相=5÷200=0.025、K=4.5÷0.025=180(公表正答)です。
「物質A 60 mgを含む水溶液100 mLからヘキサン10 mLに抽出した。分配係数K=50のとき、水溶液に残ったAの質量は?」(令和7年2月 問6)。
公表正答は10 mgです。体積(水100 mL、ヘキサン10 mL)の違いを式に入れるのが要点です。
混同しやすいところ
濃度の比 と 量の比
分配係数は各相の「濃度」の比です。各相の体積が違うため、質量(量)の比とは一致しません。必ず質量÷体積で濃度に直します。
有機相 と 水相
分配係数は通常「有機相の濃度÷水相の濃度」で定義します。問題文の定義式の向き(分子・分母)を確認します。
抽出した量 と 残った量
移った量と残った量の合計は、はじめの全量に等しくなります(質量保存)。一方を求めたら他方は引き算で出せます。
分配係数は、分析に関する概論の問5・問6で、形を変えて繰り返し出ています(令和5年8月・令和6年8月・令和7年2月で確認)。
| 年度 | 問 | 問われ方・型 | 公表正答 |
|---|---|---|---|
| 令和7年2月 | 問6 | K=50、水100 mL・ヘキサン10 mLで抽出後に水相に残る量 | 10 mg |
| 令和6年8月 | 問5 | 水200 mL・ヘキサン10 mLで45 mg抽出したときの分配係数 | 180 |
| 令和5年8月 | 問6 | 水100 mL・ヘキサン5.0 mLで40 mg抽出したときの分配係数 | 80 |
計算の型は次に整理できます。
分配係数K=有機相の濃度÷水相の濃度で、濃度(質量÷体積)の比です。量の比で出す・体積の違いを無視するのがよくある引っかけです。質量保存で残量を引き算します。
問題:A 50 mgを含む水溶液100 mLにヘキサン5.0 mLを加え40 mgが移ったとき、分配係数(ヘキサン相÷水相)は80である。
〇か×か。
答え:〇
ヘキサン相40÷5.0=8.0、水相10÷100=0.10、K=8.0÷0.10=80です(令和5年8月 分析概論 問6)。
問題:分配係数は、各相に存在する物質の質量の比である。
〇か×か。
答え:×
分配係数は各相の濃度(質量÷体積)の比です。体積が違うため、質量の比とは一致しません。
問題:A 60 mgを含む水溶液100 mLからヘキサン10 mLに抽出(K=50)すると、水溶液に残るAは10 mgである。
〇か×か。
答え:〇
残量x:(60−x)×10÷x=50を解くとx=10 mgです(令和7年2月 分析概論 問6)。
分配係数は、有機相の濃度÷水相の濃度で、濃度(質量÷体積)の比です。抽出後の質量から分配係数を求める型と、分配係数と体積から残量を求める型があります。
どちらも各相の体積をそろえて濃度に直すのが核です。
引っかけは、量の比で出す・体積を無視する、です。質量保存(移った量+残った量=全量)も使います。
参考資料
※ 最終更新:2026年6月
編集部メモ
分配係数の計算は、最初に「各相の濃度=質量÷体積」を書き出すだけで道が開けます。体積が水とヘキサンで違うことを式に入れれば、量の比との取り違えを防げます。容量分析や有機化合物の性質とあわせて、化学の基礎をまとめて固められます。