作業環境測定士 独学ノート
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発がん性と発がん物質(発がん性分類・変異原性試験・標的)|作業環境測定士

編集部

変異原性試験=発がんのスクリーニングです。変異原性は遺伝子の突然変異、催奇形性は胎児への影響。混同が引っかけです。

この記事の要点

日本産業衛生学会の許容濃度勧告では、発がん性を第1群(ヒトに発がん性がある)・第2群A(おそらくある)・第2群B(疑われる)に分類します。

変異原性試験は遺伝子の突然変異を調べる発がん性のスクリーニング試験です(胎児への影響を見る催奇形性試験ではありません)。しきい値がないとされる発がん物質のリスク評価は、無毒性量(NOAEL)を用いません。

発がん性は、労働衛生一般で毎年のように問われます。発がん性分類・変異原性試験の意味・主な発がん物質と標的が、化学物質の有害性の問題で問われます。

許容濃度・管理濃度は管理濃度と許容濃度を参照してください。

発がん性分類(日本産業衛生学会)

分類意味
第1群ヒトに対して発がん性がある(と判断できる)
第2群Aヒトに対しておそらく発がん性がある
第2群Bヒトに対して発がん性が疑われる

確かさが高い順に第1群・第2群A・第2群Bです。国際機関(IARC)も第1群・第2群A・第2群Bに似た分類(Group1・2A・2B)を用います。

変異原性試験と発がん性

  • 変異原性試験…化学物質が細胞の遺伝子に突然変異を引き起こすかを調べる試験で、発がん性のスクリーニング試験として使われます。細菌を用いる試験(エームス試験)などがあります。
  • 催奇形性試験…胎児期の臓器・組織形成への影響を見る試験で、変異原性試験とは別です。
  • しきい値…発がん物質には「これ以下なら安全」というしきい値がないとされるものがあり、その場合のリスク評価は、しきい値のある物質とは別の考え方(無毒性量を用いない)で行います。

主な発がん物質と標的

物質主な標的・がん
ベンゼン造血器(白血病)
塩化ビニル肝臓(肝血管肉腫)。レイノー現象・指端骨溶解も
石綿(アスベスト)中皮腫(胸膜・腹膜など)・肺がん
クロム酸など6価クロム化合物肺がん・鼻中隔穿孔
ベンジジンなど芳香族アミン膀胱がん
中皮腫は、胸膜・腹膜・心膜などの中皮細胞に生じる原発性のがんに分類されます。石綿による中皮腫は胸膜だけでなく腹膜などにも生じます(「胸膜のみ」とするのは誤り)。石綿は中皮腫と肺がんの両方を起こします。じん肺・石綿の健康影響はじん肺・粉じんを参照してください。

混同しやすいところ

変異原性試験 と 催奇形性試験

変異原性試験は遺伝子の突然変異を調べる発がん性のスクリーニングです。胎児への影響を見るのは催奇形性試験で、別物です。

しきい値のある物質 と しきい値のない発がん物質

しきい値のある物質は無毒性量などからばく露限界を導きます。しきい値がないとされる発がん物質は、この考え方(無毒性量)をそのまま使えません。

発がん性分類の順

確かさが高い順に第1群(ある)・第2群A(おそらくある)・第2群B(疑われる)です。

過去問でどう問われたか

発がん性は、労働衛生一般の化学物質の有害性・管理指標の問(令和5年8月〜令和8年2月)で繰り返し問われます。

年度問われ方・引っかけ
令和8年2月しきい値がない発がん物質のリスク評価に無毒性量を用いるとした記述が誤り。変異原性試験は発がん性のスクリーニング(正)。
令和6年8月変異原性試験を「胎児期の臓器・組織形成への影響を見るもの」とした記述が誤り(それは催奇形性試験)。
令和5年8月発がん性分類(第1群・第2群A・第2群B、第1群=ヒトに発がん性がある)が正しい記述として出題。

引っかけは次の型に整理できます。

  • 変異原性試験を催奇形性試験と取り違える(変異原性は遺伝子の突然変異)。
  • しきい値のない発がん物質に無毒性量を使うとする(使わない)。
  • 石綿の中皮腫を胸膜のみとする(腹膜などにも生じる)。

発がん性分類は第1群・第2群A・第2群B。変異原性試験は遺伝子の突然変異を調べる発がんのスクリーニング(催奇形性ではない)。しきい値のない発がん物質は無毒性量を用いない。ベンゼン→白血病、塩化ビニル→肝血管肉腫、石綿→中皮腫・肺がんを起こします。

編集部メモ

発がん性は、「変異原性試験=発がんのスクリーニング(催奇形性ではない)」と「主な物質の標的(ベンゼン白血病・塩化ビニル肝血管肉腫・石綿中皮腫)」の2点が頻出です。発がんのおそれのある物質(特別管理物質)は記録の保存期間が長く、記録の保存ともつながります。

理解度チェック

問題:変異原性試験は、化学物質による胎児期の臓器・組織形成への影響を見るためのものである。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

変異原性試験は遺伝子の突然変異を調べる発がん性のスクリーニングです。胎児への影響を見るのは催奇形性試験です(令和6年8月 労働衛生一般の論点)。

問題:日本産業衛生学会の許容濃度勧告では、ヒトに対して発がん性があると判断できる物質は第1群に分類される。

〇か×か。

答えを見る

答え:

発がん性は第1群(ある)・第2群A(おそらくある)・第2群B(疑われる)に分類されます(令和5年8月 労働衛生一般の論点)。

問題:石綿により発症する中皮腫は、胸膜の中皮細胞にのみ生じる。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

中皮腫は胸膜・腹膜・心膜などの中皮細胞に生じます。胸膜のみではありません(令和8年2月ほか 労働衛生一般の論点)。

まとめ

発がん性は、日本産業衛生学会の分類で第1群・第2群A・第2群Bに分かれます。

変異原性試験は遺伝子の突然変異を調べる発がん性のスクリーニング試験で、催奇形性試験とは別です。しきい値のない発がん物質のリスク評価は無毒性量を用いません。

主な発がん物質はベンゼン(白血病)・塩化ビニル(肝血管肉腫)・石綿(中皮腫・肺がん)などです。

参考資料

  • 発がん性分類(日本産業衛生学会の許容濃度等の勧告=第1群・第2群A・第2群B)、変異原性試験(遺伝子の突然変異を調べる発がん性のスクリーニング・催奇形性試験とは別)、しきい値のない発がん物質のリスク評価、主な発がん物質と標的(ベンゼン=白血病、塩化ビニル=肝血管肉腫、石綿=中皮腫・肺がん、6価クロム=肺がん、芳香族アミン=膀胱がん)、中皮腫(胸膜・腹膜・心膜の原発性がん)は、労働衛生(化学物質の有害性)の基礎による。
  • 過去問の問われ方は、安全衛生技術試験協会の公表試験問題(労働衛生一般、令和5年8月〜令和8年2月)にもとづく。正誤は公表正答による。

この記事を書いた人

作業環境測定士 独学ノート 編集部

作業環境測定士試験を独学で受ける人のための学習ノートの編集部です。