けんせつる
弾性と塑性、どっちが先だっけ?グラフの点の名前が多すぎて覚えられない…
この記事の要点
鋼材は、力が小さいうちは弾性を示し、ある限度を超えると塑性に変わります。
「弾性限度までは塑性、超えると弾性」は逆です。この入れ替えが3年続けて出ています。
2級の第一次検定では、鋼材が毎年出ます。中でも力学的性質は、同じ引っかけが繰り返されている論点です。
弾性とは、力を加えて変形しても、力を抜けば元の形に戻る性質です。輪ゴムを軽く引っ張って離すと戻るのと同じです。
塑性とは、力を抜いても元に戻らない性質です。針金を大きく曲げると、手を離しても曲がったままになります。
鋼材はこの両方の性質を持ち、加える力の大きさによって切り替わります。
切り替わる境目が弾性限度です。
出題では、この順序を入れ替えてきます。「弾性限度までは塑性を示し、それを超えると弾性を示す」という書き方です。弾性が先と覚えれば見抜けます。
簡単に言えば、そっと押している間は戻る(弾性)、押しすぎると曲がったまま(塑性)ということです。
構造物の鋼材は弾性域の中で使うのが前提です。「塑性領域内で使用する」という記述も、同じ理由で誤りになります。
鋼材に引張力を加えていくと、応力度とひずみの関係が曲線で表せます。試験ではこの曲線上の点の名前が問われます。
| 点 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| P | 比例限度 | 応力度とひずみが直線的に比例する上限 |
| E | 弾性限度 | 弾性変形をする最大限度。ここまでは力を抜けば戻る |
| YU | 上降伏点 | 応力度が下がりながらひずみが進み始める点 |
| U | 引張強さ | 曲線の頂点=最大応力度の点 |
「点YUは弾性変形をする最大限度である」という記述は誤りです。弾性変形の最大限度は弾性限度(点E)で、上降伏点YUとは別の点です。曲線上ではEのほうが手前にあります。
鋼は炭素の含有量で性質が変わります。
低炭素鋼は延性・展性に富むため、橋梁等に広く用いられます。粘りがあるほうが、急に壊れにくいためです。
鋼材が劣化する原因は2つあり、対策も別々です。
| 劣化の原因 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 腐食 | 気象や化学的な作用で錆び、断面が減って強度が低下する | 防食(塗装・耐候性鋼材・溶融亜鉛めっき等) |
| 疲労 | 繰り返し荷重を受け、前触れなく急激な破壊に至ることがある | 応力集中を避ける設計・溶接部の管理 |
耐候性鋼材は腐食対策であって、疲労対策ではありません。疲労が心配な場面で耐候性鋼材を持ち出す記述が、誤り肢として出ています。
混同しやすい用語
比例限度 と 弾性限度
曲線上で比例限度Pのほうが手前です。比例限度は応力度とひずみが直線的に比例する上限、弾性限度は力を抜けば元に戻る上限です。比例限度を少し超えても、しばらくは元に戻る性質が残っています。さらに進むと上降伏点YU、最後に引張強さU(曲線の頂点)が来ます。
腐食 と 疲労
原因も対策も別です。腐食は気象や化学的作用による錆で、耐候性鋼材や塗装で防ぎます。疲労は繰り返し荷重によるもので、急激な破壊に至ります。疲労対策として耐候性鋼材を挙げる記述は誤りです。
同じNo.17の枠では、鋼材の種類とその用途の組合せも出ます。力学的性質と交互に出題される形です。
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 鋳鋼・鍛鋼 | 橋梁の支承・伸縮継手 |
| 溶接鋼管 | 基礎杭・支柱 |
| PC鋼棒 | プレストレストコンクリートの緊張材 |
| 棒鋼 | コンクリート内の鉄筋 |
| 線材 | 細い線をより合わせて使うもの |
引っかけは2つあります。ひとつは棒鋼と線材の用途を入れ替える形。太い棒はコンクリートの中へ、細い線はより合わせて使う、と分けられます。
もうひとつが鋳鉄と鋳鋼の取り違えです。橋梁の支承や伸縮継手に使うのは、もろい鋳鉄ではなく、ねばりのある鋳鋼です。地震時の力や車の衝撃を受ける部位なので、粘りが要ります。
ここでも判断の軸は同じです。衝撃や繰り返しを受けるところには、粘りのある材料。炭素が少ないほど延性・展性が上がるという話とつながっています。
鋼材は2級の第一次検定で毎年出ます。力学的性質では弾性と塑性の入れ替えが3年続けて出題されました。
| 出題年度・級(問番) | 誤りとされた記述 |
|---|---|
| 令和8年度 2級(No.17) | 弾性限度までは塑性を示し、超えると弾性を示す |
| 令和7年度 2級(No.17) | 鋼材を塑性領域内で使用する |
| 令和6年度 2級前期(No.17) | 弾性限界までは塑性、超えると弾性 |
| 令和5年度 2級前期(No.12) | 点YUは弾性変形をする最大限度である(正しくは点E=弾性限度) |
| 令和4年度 2級後期(No.12) | 疲労対策として耐候性鋼材を用いる(耐候性鋼材は防食用) |
問題:鋼材は弾性限度までどちらの性質を示すか。超えるとどうなるか。
弾性限度までは弾性で、応力度とひずみが比例し、力を抜けば元に戻ります。超えると塑性になり、比例しなくなって、応力度をゼロに戻しても永久ひずみが残ります。「弾性限度までは塑性」は順序が逆です。(令和6年度2級前期・令和8年度2級 No.17)
問題:応力ひずみ曲線で、弾性変形をする最大限度はどの点か。
弾性限度(点E)です。上降伏点(点YU)ではありません。曲線上では、比例限度P → 弾性限度E → 上降伏点YU → 引張強さUの順に並びます。引張強さUは曲線の頂点で、最大応力度を示す点です。(令和5年度2級前期 No.12)
問題:疲労が心配な部材に耐候性鋼材を使うのは適切か。
適切ではありません。耐候性鋼材は腐食(錆)への対策で、疲労対策ではありません。疲労は繰り返し荷重によるもので、前触れなく急激な破壊に至ります。原因が違うので対策も別です。(令和4年度2級後期 No.12)
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
同じ引っかけが3年続けて出ている
令和6年・7年・8年と、弾性と塑性の関係が3年連続で誤り肢になりました。表現は変わりますが、狙いはひとつです。
「弾性が先、塑性があと」だけ覚えておけば、この3年分がすべて取れます。順序を入れ替えた記述と、塑性域で使うとした記述。どちらも同じ勘違いを突いています。