編集部
拡散セルの「濃度が上がる・下がる」がこんがらがりますよね。温度が高い・内径が大きいほど蒸気がたくさん出て濃度は高い。チューブが長いほど出にくく濃度は低い。出やすさで考えると整理できます。
この記事の要点
拡散セル(ディフュージョンチューブ)では、液溜めの標準物質が拡散チューブを通って蒸発・拡散し、希釈空気で薄めて標準ガスを得ます。流出速度は拡散チューブの断面積(内径の2乗)に比例し、長さに反比例します。
温度が高いほど、内径が大きいほど濃度は高く、チューブが長いほど濃度は低くなります。濃度の微調整は希釈空気の流量を変える方が温度を変えるより短時間です。
分析の検量線づくりには、濃度の分かった標準ガスが要ります。その調製法の一つが拡散セル(ディフュージョンチューブ)法です。
分析に関する概論の問8でほぼ毎年、その性質が問われます。濃度が上がる・下がる方向の取り違えが引っかけの中心です。
流出速度は内径の2乗に比例・長さに反比例。温度が高いほど・内径が大きいほど濃度は高く、チューブが長いほど濃度は低くなります。
液体の標準物質を液溜めに入れ、細い拡散チューブを通して蒸気を一定の速さで拡散させ、希釈空気で薄めて一定濃度の標準ガスを連続的に得る方法です。
標準物質の流出速度(単位時間に出る量)は、拡散の法則から次のように決まります。
流出速度 ∝ 拡散チューブの断面積(内径の2乗)÷ 長さ
そのため、標準ガスの濃度は次のように変わります。
| 条件 | 濃度 | 理由 |
|---|---|---|
| 温度が高い | 高くなる | 蒸気圧が上がり流出速度が増える |
| 拡散チューブの内径が大きい | 高くなる | 断面積(内径の2乗)が大きく流出速度が増える |
| 拡散チューブが長い | 低くなる | 拡散距離が長く流出速度が減る |
「流出速度は内径に比例する」とするのは不正確です(内径の2乗=断面積に比例)。「チューブが長いほど濃度が高い」とするのは逆で、誤りです(長いほど低い)。
混同しやすいところ
内径 と 流出速度
流出速度は拡散チューブの断面積(内径の2乗)に比例します。「内径に比例」では不正確です。
チューブの長さ と 濃度
チューブが長いほど拡散距離が長くなり流出速度が減るので、濃度は低くなります(高くなる、ではありません)。
濃度の微調整
微調整は希釈空気の流量を変える方が、温度を変えるより短時間で行えます。
標準ガスの調製は、分析に関する概論の問8で繰り返し(令和5年8月〜令和8年2月)出題されています。濃度が変わる方向や流出速度が中心です。
| 年度 | 問 | 問われ方・引っかけ |
|---|---|---|
| 令和7年8月 | 問8 | 「標準物質の流出速度は拡散チューブの内径に比例する」とした選択肢が誤り(内径の2乗=断面積に比例)。 |
| 令和6年2月 | 問8 | 「液面の高さにより濃度が変化するため試薬量を常に一定にする必要がある」とした選択肢が誤り。温度が高いほど濃度が高い、は正しい。 |
| 令和5年8月 | 問8 | 「拡散チューブの長さが長いほど濃度が高い」とした選択肢が誤り(長いほど低い)。 |
引っかけは次の型に整理できます。
流出速度は内径の2乗に比例・長さに反比例。温度が高い・内径が大きいほど濃度は高く、チューブが長いほど低い。微調整は希釈空気の流量で行います。
問題:拡散セルの標準物質の流出速度は、拡散チューブの内径に比例する。
〇か×か。
答え:×
流出速度は拡散チューブの断面積、すなわち内径の2乗に比例します(長さには反比例)(令和7年8月 分析概論 問8の論点)。
問題:標準ガスの濃度は、拡散チューブの長さが長いほど高くなる。
〇か×か。
答え:×
チューブが長いほど拡散距離が長くなり流出速度が減るため、濃度は低くなります(令和5年8月 分析概論 問8の論点)。
問題:標準ガスの濃度の微調整は、拡散セルの温度を変えるよりも希釈空気の流量を変える方が短時間で行える。
〇か×か。
答え:〇
温度は安定までに時間がかかるため、微調整は希釈空気の流量を変える方が短時間で行えます(令和6年2月 分析概論 問8の論点)。
拡散セル(ディフュージョンチューブ)法では、標準物質の流出速度が拡散チューブの断面積(内径の2乗)に比例し長さに反比例します。
温度が高いほど、内径が大きいほど濃度は高く、チューブが長いほど低くなります。濃度の微調整は希釈空気の流量を変える方が温度より短時間です。
問8で毎年問われる引っかけは、流出速度と内径、チューブの長さと濃度、微調整の方法、温度と濃度の関係です。「出やすさ」で濃度の方向を考えると整理できます。
参考資料
※ 最終更新:2026年6月
捕集袋(テドラーバッグ)法との違い
標準ガスは、一定量の液体を捕集袋内の清浄空気中で完全に気化させ、容量から濃度を計算して作る方法(捕集袋法)でも調製できます。拡散セル法は連続的に一定濃度を得られるのが特徴で、検量線づくりや機器の校正に使われます。どちらも作業環境測定の分析でよく問われます。