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化学物質のリスクアセスメント(リスク低減措置の優先順位)|作業環境測定士

編集部

「保護具をつければOK?」と思いがちですよね。リスク低減はまず有害な物質をやめる・替える(本質安全対策)が最優先で、保護具は最後の手段。優先順位の向きが定番の引っかけです。

この記事の要点

リスク低減措置の優先順位は、①有害性のより低い物質への代替・プロセス変更(本質安全対策)→②密閉化・局所排気装置(工学的対策)→③作業手順・立入禁止(管理的対策)→④有効な保護具の順です。保護具が最後です。

リスクの見積りは、ばく露濃度を濃度基準値・ばく露限界と比較する方法などで行います。「危険性又は有害性」はハザードを指し、リスクとは別の概念です。

2022〜2024年の化学物質規制の見直しで、危険有害な化学物質はリスクアセスメントが義務づけられ、結果に基づく自律的な管理が求められています。

作業環境測定士にとっても重要な労働衛生一般の論点で、問1でほぼ毎年問われます。指針=「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が前提です。

リスク低減措置は、代替・プロセス変更(本質安全対策)が最優先、保護具が最後。見積りはばく露濃度と濃度基準値・ばく露限界の比較で行います。

リスク低減措置の優先順位

リスクを下げる対策には、信頼性の高い順に優先順位があります。保護具は最も優先順位が低い(最後の手段)です。

優先順位対策の種類
1(最優先)本質安全対策有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス・運転条件の変更
2工学的対策(衛生工学的対策)機械設備の密閉化、局所排気装置の設置
3管理的対策作業手順の改善、立入禁止措置、マニュアルの整備
4(最後)有効な保護具の使用呼吸用保護具・化学防護手袋など

「衛生工学的対策よりも代替・プロセス変更を優先する」「作業手順等の管理的対策は保護具より優先順位が高い」というのは、いずれも正しい考え方です。

逆に、保護具を上位に置く記述は誤りです。

リスクの見積り方法

リスクの見積りには、いくつかの方法があります。

  • ばく露濃度と基準値の比較…作業環境測定や個人ばく露測定で求めた濃度を、濃度基準値やばく露限界と比較します。管理濃度が定められている物質では、作業環境測定の第一評価値を管理濃度と比較する方法もあります(最大値ではありません)。
  • 発生可能性と重篤度の数値化…健康障害の発生可能性と重篤度を尺度で数値化し、加算または乗算する方法。
  • コントロール・バンディング…有害性・揮発性(飛散性)・取扱量などをバンド(区分)に分けてリスクレベルを求める簡易手法。
  • 数理モデル…CREATE-SIMPLE(経皮ばく露も考慮可)、ECETOC TRAなどの支援ツール。

見積りに当たっては、労働者の疲労等、危険性・有害性への付加的影響も考慮します。「疲労等は考慮しない」とするのは誤りです。

「危険性又は有害性」はハザード(リスクではない)

指針でいう「危険性又は有害性」は、労働者に負傷や疾病を生じさせる潜在的な根源(ハザード)のことです。これと、ハザードによって実際に災害が起こる可能性と重大性を組み合わせたリスクとは別の概念です。「危険性又は有害性とは、一般にリスクといわれるもの」とするのは誤りです。

混同しやすいところ

リスク低減措置の優先順位

代替・プロセス変更(本質安全対策)が最優先、保護具が最後です。保護具を上位に置く記述は誤りです。

危険性又は有害性(ハザード) と リスク

危険性又は有害性は危険・有害の潜在的な根源(ハザード)。リスクはそれによる災害の可能性と重大性です。

見積りでの管理濃度の使い方

管理濃度がある物質では、作業環境測定の第一評価値を管理濃度と比較します。「A測定の最大値」と比較ではありません。

過去問でどう問われたか

リスクアセスメントは、労働衛生一般の問1で繰り返し(令和6年2月〜令和7年8月)出題されています。低減措置の優先順位、見積り方法、用語の定義が中心です。

年度問われ方・引っかけ
令和7年8月問1「リスクの見積りに当たり、疲労等の付加的影響は考慮しない」とした選択肢が誤り(考慮する)。低減措置は代替・プロセス変更を工学的対策より優先、は正しい。
令和7年2月問1管理濃度がある物質で「A測定の最大値を管理濃度と比較」とした選択肢が誤り(第一評価値)。
令和6年8月問1リスクアセスメントの実施時期に「実施体制の変更・管理者の異動」を挙げた選択肢が論点(実施時期は物質・作業の新規/変更や新たな有害性情報の入手など)。
令和6年2月問1「危険性又は有害性とは、一般にリスクといわれるもの」とした選択肢が誤り(ハザードを指す)。

引っかけは次の型に整理できます。

  • 低減措置の優先順位を崩す(代替・プロセス変更が最優先、保護具が最後)。
  • 疲労等の付加的影響を考慮しないとする(考慮する)。
  • 「危険性又は有害性」をリスクと同一視する(ハザードを指す)。
  • 見積りで管理濃度をA測定の最大値と比較するとする(第一評価値)。

低減措置は代替・プロセス変更→工学的対策→管理的対策→保護具の順。保護具が最後。疲労等も考慮し、危険性又は有害性はハザードを指します。

理解度チェック

問題:リスク低減措置の検討では、局所排気装置の設置などの衛生工学的対策よりも、有害性のより低い物質への代替を優先して行う。

〇か×か。

答えを見る

答え:

本質安全対策(代替・プロセス変更)が最優先で、工学的対策(密閉化・局所排気)より優先します。保護具は最後の手段です(令和7年8月 労働衛生一般 問1の論点)。

問題:リスクの見積りに当たっては、労働者の疲労等の付加的影響については考慮しない。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

疲労等の危険性・有害性への付加的影響も考慮します(令和7年8月 労働衛生一般 問1の論点)。

問題:指針でいう「危険性又は有害性」とは、一般にリスクといわれるものである。

〇か×か。

答えを見る

答え:×

「危険性又は有害性」は、負傷や疾病を生じさせる潜在的な根源(ハザード)です。リスクは、それによる災害の可能性と重大性を組み合わせたものです(令和6年2月 労働衛生一般 問1の論点)。

まとめ

化学物質のリスク低減措置は、有害性のより低い物質への代替・プロセス変更(本質安全対策)を最優先に、工学的対策・管理的対策と続き、保護具が最後です。

見積りはばく露濃度と濃度基準値・ばく露限界の比較などで行い、疲労等の付加的影響も考慮します。

問1で毎年問われる引っかけは、優先順位の崩し、付加的影響の考慮、ハザードとリスクの混同、見積りでの管理濃度の使い方です。

参考資料

  • リスク低減措置の優先順位(本質安全対策=代替・プロセス変更>工学的対策>管理的対策>保護具)、リスクの見積り方法、「危険性又は有害性」(ハザード)とリスクの区別は、厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」、職場のあんぜんサイト、職場の化学物質管理総合サイトによる。
  • 見積りでは、管理濃度がある物質は作業環境測定の第一評価値を管理濃度と比較。疲労等の付加的影響も考慮する。CREATE-SIMPLE・コントロールバンディング等の支援ツールがある。
  • 過去問の問われ方は、安全衛生技術試験協会の公表試験問題(労働衛生一般 問1、令和6年2月〜令和7年8月)にもとづく。正答は公表正答・一次資料による。

この記事を書いた人

作業環境測定士 独学ノート 編集部

作業環境測定士試験を独学で受ける人のための学習ノートの編集部です。