令和5年度 1級電気工事施工管理技士 第一次検定 No.18は、変電所に設置される油入変圧器に関する記述として、最も不適当なものを選ぶ問題です。
この問題は、変圧器の音がどこから出ているかを分かっているかを問うものです。鉄心の磁気ひずみが音源なので、磁束密度は下げるほど静かになります。
高くするのは逆の対策です。
正解:選択肢1(磁束密度を高くすることが騒音対策に有効)
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 磁束密度を高くすると騒音対策に有効 | 低くするのが有効。不適当 |
| 2 | 呼吸口に吸湿呼吸器を付ける | 湿気の侵入を防ぐ。適当 |
| 3 | 無圧密封形コンサベータは油の劣化防止 | 外気と触れさせない。適当 |
| 4 | 送油風冷式はポンプとファンを併用 | 名前のとおり。適当 |
不適当なのは選択肢1です。
引っかけの核心は、磁束密度を高くすると鉄心を小さくできて材料が減るので、いいことのように読めるところです。小型化には有効ですが、騒音は逆に大きくなります。
変圧器の音のうち、いちばん大きいのが励磁騒音です。鉄心のけい素鋼板は、磁化されるとわずかに伸び縮みします。これを磁気ひずみといいます。
交流なので1秒間に何十回も磁化の向きが変わり、そのたびに鉄心が伸び縮みして振動します。磁束密度が高いほど、この伸び縮みが大きくなります。
| 対策 | 効果 | 理由 |
|---|---|---|
| 磁束密度を低くする | 有効 | 磁気ひずみが小さくなる。鉄心の断面積は大きくなる |
| 磁気ひずみの小さい鋼板を使う | 有効 | 高配向性けい素鋼板など |
| 防音タンク・防振ゴム | 有効 | 振動を外に伝えない |
| 敷地境界から遠ざける | 有効 | 距離で減衰する |
この論点は3つの年度で確定しています。令和3年度 2級 No.14は「鉄心の磁束密度を高くすることは、騒音対策に有効である」という同じ文で公表正答が4(=この肢が誤り)でした。
令和6年度 2級 No.12は「鉄心の断面積を小さくし、磁束密度を高くする」で正答2、令和元年度 2級 No.14は「鉄心の断面積を小さくして磁束密度を大きくする」で正答1です。3年度とも、磁束密度を上げる肢が誤りと確定しています。
選択肢2の吸湿呼吸器は、コンサベータの呼吸口に付ける部品です。油の量は温度で増減するので、その分だけ空気が出入りします。
入ってくる空気に湿気があると、絶縁油に水分が溶け込んで絶縁が落ちます。だからシリカゲルなどの吸湿剤を通してから入れます。青い粒が桃色に変われば交換の合図です。
選択肢3の無圧密封形コンサベータは、油の上にゴムの袋や隔膜を置いて、絶縁油を外気と直接触れさせない方式です。酸素と水分を断つので、油の酸化が進みません。
選択肢4の送油風冷式は、冷却の方式のひとつです。
| 方式 | 油の流れ | 放熱器 |
|---|---|---|
| 油入自冷式 | 自然対流 | 自然放熱 |
| 油入風冷式 | 自然対流 | ファンで風を当てる |
| 送油風冷式 | ポンプで強制循環 | ファンで強制風冷 |
名前の前半が油の送り方、後半が放熱器の冷やし方です。送油+風冷なので、ポンプとファンの両方を使います。
変圧器の磁束密度を下げると騒音が減るのはなぜか。
鉄心の磁気ひずみによる伸び縮みが小さくなるためです。その代わり鉄心の断面積は大きくなります。
吸湿呼吸器は何のために付けるか。
油の温度変化で出入りする空気から湿気を取り除くためです。水分が絶縁油に溶け込むと絶縁性能が落ちます。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月