令和4年度 1級電気工事施工管理技士 第一次検定 No.12は、電力系統の安定度向上対策に関する記述として、不適当なものを選ぶ問題です。
この問題は、安定度が系統のリアクタンスで決まることを分かっているかを問うものです。リアクタンスを小さくする対策が正しく、大きくする対策は逆効果です。
直列リアクトルはリアクタンスを増やします。
正解:選択肢2(直列リアクトルを設置する)
> この論点をやさしく解説:直列リアクトルは何のために入れるのか?進相コンデンサと放電コイルの役割の違い
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | 送電電圧の高電圧化 | 適当。送電できる電力が増える |
| 2 | 直列リアクトルを設置 | 不適当。リアクタンスが増えて安定度が下がる |
| 3 | 速応励磁方式の採用 | 適当。電圧の落ち込みに素早く応じる |
| 4 | 高速度の保護継電器や遮断器 | 適当。事故を早く切り離す |
不適当なのは選択肢2です。
引っかけの核心は、直列リアクトルが電力用コンデンサとセットで使われる正しい機器なので、名前だけ見ると正しく見えるところです。正しい機器でも、安定度向上という目的に対しては逆です。
送電できる電力は、系統のリアクタンスXに反比例します。
送電電力の式
P = (Vs Vr / X) sinδ [W]
Vs=送電端電圧、Vr=受電端電圧、X=系統のリアクタンス、δ=相差角
Xが分母にあるので、Xを小さくすれば送れる電力が増え、安定度が上がる。
電圧が分子にあるので、高電圧化も安定度を上げる。
この式1つで選択肢1と2の両方が説明できます。高電圧化は分子を大きくし、リアクタンスを減らす対策は分母を小さくします。
安定度向上に使うのは直列コンデンサです。コンデンサのリアクタンスは誘導性と逆向きなので、送電線のリアクタンスを打ち消して合計を減らします。
この論点は繰り返し出ていて、誤りの肢は必ずリアクタンスを増やすものです。
| 出題 | 公表正答 | 誤りとされた肢 |
|---|---|---|
| 平成25年度 1級 No.12 | 4 | 高リアクタンスの変圧器を採用する |
| 平成28年度 1級 No.11 | 4 | リアクタンスが大きい発電機を採用する |
| 令和元年度 1級 No.11 | 2 | 直列リアクトルを設置する |
| 令和4年度 1級 No.12 | 2 | 直列リアクトルを設置する |
平成28年度の選択肢1には直列コンデンサを設置するが正しい肢として置かれています。令和元年度の選択肢1は「系統のリアクタンスを小さくする」で、これも正しい肢でした。
4年度を並べると、リアクタンスを増やすものは変圧器でも発電機でもリアクトルでも全部誤りだと分かります。機器の名前を覚えるより、増やすか減らすかで見るほうが速いところです。
選択肢3の速応励磁方式は、事故で電圧が落ちたときに界磁電流を素早く増やして電圧を保つものです。発電機が同期を外れる前に立て直せます。
選択肢4の高速遮断は、事故が続く時間を短くする対策です。相差角が開ききる前に切り離せば、系統は元の運転に戻れます。
系統のリアクタンスを小さくすると安定度が上がるのはなぜか。
送電電力の式 P = (VsVr/X) sinδ でXが分母にあるためです。Xが小さいほど送れる電力が増え、余裕ができます。
安定度向上のために設置するのは直列コンデンサか直列リアクトルか。
直列コンデンサです。送電線のリアクタンスを打ち消して合計を減らします。直列リアクトルは逆にリアクタンスを増やします。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月