ゼロから学ぶ土木施工管理|資格のT

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急傾斜地崩壊防止工とは?もたれ式・待受式擁壁と法枠工の使い分けを整理

けんせつる

けんせつる

もたれ式と待受式、どっちが斜面から離れてるの?

枠工の桁って、鉄筋いるの?

この記事の要点

急傾斜地崩壊防止工とは、がけ崩れが起きるおそれのある急な斜面で、崩れを防いだり、崩れた土砂を受け止めたりする工事のことです。

工法の数は多いのですが、聞かれ方は「覆うだけか、力で受け止めるか」「斜面に接するか、離すか」の2軸に整理できます。

  • もたれ式擁壁……斜面にもたれかからせて(脚部に接して)据える。離して据えるのは誤り。
  • 待受式擁壁……斜面下部から離して据え、崩壊土砂を待ち受ける。天端に落石防護柵。
  • 現場打ちコンクリート枠工の桁は、一般に鉄筋コンクリート。無筋は誤り。
  • 重力式擁壁の水抜き孔は、前面へわずかな下り勾配。水平は誤り。

「もたれ式を斜面脚部から離して設置」は令和5・7年度の2回出ています。

まず、この工事が何を守るものなのかを押さえます。守る対象が分かると、工法の並び方も見えてきます。

急傾斜地崩壊防止工とは何を守る工事か

急傾斜地崩壊防止工が守るのは、斜面の下にある人家や道路です。斜面そのものを保存するのが目的ではありません。ここがのり面保護工との違いです。のり面保護工は、自分たちが切ったり盛ったりしてつくった斜面を守る工事ですが、こちらは自然のがけから下を守る工事です。

守り方は2つに分かれます。

  • 崩れないようにする……排水工で水を入れない、切土工で勾配を緩める、擁壁や法枠工で押さえる。
  • 崩れても届かないようにする……待受式擁壁で土砂をためる、落石防護工で受け止める。

この2つのどちらなのかで、工法の据える位置が変わります。地すべりのほうは地すべり防止工、砂防は砂防えん堤で扱っています。

擁壁は3つ。据える位置で分かれる

擁壁の据え方(模式図) 重力式 水抜き孔 自重で抑止・排水に留意 もたれ式 斜面に接して据える 待受式 落石防護柵 土砂をためる 斜面下部から離して据える
擁壁の据え方(模式図)。位置関係をつかむためのイメージで、形・比率は実物どおりではありません。離すのは待受式、接するのがもたれ式です。
工法 据える位置 はたらき・留意点
重力式コンクリート擁壁工 斜面下部 自重で小規模な崩壊を直接抑止。押え盛土の安定や法面保護工の基礎にも使う。排水に特に留意し、水抜き孔は前面へわずかな下り勾配
もたれ式コンクリート擁壁工 斜面にもたれかからせて(脚部に接して) 背面の地山に支えられて安定する。離して据えると寄りかかる相手がなく成立しない
待受式コンクリート擁壁工 斜面下部より離して 崩壊土砂を待ち受ける。擁壁と斜面の間に土砂をためる余地を取り、一般に天端に落石防護柵を設置する

もたれ式は擁壁の各部名称でも扱っています。2級の断面図問題でも出る形式です。

法枠工は作り方で3つ

工法 作り方 向いている斜面
現場打ちコンクリート枠工 現場で枠を打設する。桁は一般に鉄筋コンクリート 切土法面の安定勾配が取れない場合、湧水をともなう場合
現場吹付法枠工 地山に金網等で枠を作り、モルタル等を直接吹き付ける 凹凸のある不整形な斜面にも施工できる
プレキャスト法枠工 工場で製作した枠材を運び込んで据え付ける ある程度整形された斜面が前提

そのほかの工法

  • 排水工……斜面の安定を損なう可能性のある地表水・地下水の斜面への流入を防止し、斜面の安定性を高める。水を斜面に入れないことが最初の対策です。
  • コンクリート張り工……斜面の風化・侵食や軽微な剥離・崩壊を防ぐ被覆。崩壊土圧を受け持つ構造ではない。土圧に抵抗させるならロックボルトやグラウンドアンカー工と併用し、そのときに構造計算を行う。
  • 切土工……斜面勾配の緩和、不安定な土塊・岩石の除去。切土高が大きくなれば、のり面の安定と維持管理・排水のために一定の高さごとに小段を設ける
  • 落石予防工……斜面上の転石の除去等により、落石の発生を未然に防ぐ
  • 落石防護工……落下してくる落石を斜面下部や中部で止める

なぜ据える位置と桁の配筋が決まるのか

もたれ式は接して据えないと成立しない

もたれ式擁壁は、名前のとおり斜面にもたれかかることで安定します。壁だけでは自立しません。背面の地山が支えてくれるから、たて壁を比較的うすくできます。

だから斜面脚部から離して据えると、寄りかかる相手がなくなり、構造として成り立ちません。逆に、離して据えて崩れてきた土砂をためるのが待受式です。同じ「擁壁」でも、力の受け方がまったく違います。

枠工の桁が鉄筋コンクリートである理由

現場打ちコンクリート枠工は、法面に格子状の枠を打設し、枠の中を植生やコンクリートで押さえる工法です。地山が動こうとする力は、枠のに伝わります。

桁は支点間に渡されたとして働き、曲げを受けます。曲げを受ける部材は引張側にひび割れが入ろうとするので、そこに鉄筋が要ります。無筋コンクリートでは曲げに持ちません。アンカーと併用する場合は、その反力も桁が受け持つのでなおさらです。

令和6年度1級No.31は、ここを「無筋コンクリート」とした肢が誤りでした。

水抜き孔に下り勾配を付ける理由

重力式擁壁は自重で土圧に抵抗します。背面に水がたまると、その水圧が土圧に上乗せされて設計を超えます。だから水抜き孔で前面へ逃がします。

このとき孔を水平に設けると、泥や砂がたまって詰まります。抜けない水抜き孔は、付けていないのと同じです。だから前面へわずかな下り勾配を付けます。令和7年度1級No.31では、これを「水平に設置する」とした肢が誤りでした。

施工管理での確認ポイント

  • 擁壁の据える位置を図面と照合する:もたれ式なら斜面脚部に接しているか、待受式なら土砂をためる余地が確保されているか。位置が違えば構造が成立しない。
  • 水抜き孔の勾配と通水を見る:前面へ下り勾配が付いているか、型枠撤去後に詰まっていないか。棒を差し込んで通水を確認する。
  • 枠工の配筋を確認する:桁が鉄筋コンクリートで、設計どおりの配筋になっているか。コンクリートを打つ前が最後の機会。
  • 切土工では小段を確認する:切土高に応じて小段が設けられているか。「高さにかかわらず不要」ではない。
  • 排水工を先に効かせる:地表水・地下水が斜面に入らないよう、施工中も含めて排水経路を確保する。
  • 待受式は天端の落石防護柵を確認する:擁壁だけでは落石が越えてくることがある。

混同しやすい用語

もたれ式擁壁 と 待受式擁壁

もたれ式は斜面にもたれかからせて(脚部に接して)据える擁壁で、背面の地山に支えられて安定します。待受式は斜面下部から離して据え、崩れてきた土砂を擁壁との間にためる工法です。接するのがもたれ式、離すのが待受式。過去問では、もたれ式を「離して設置」と書く形が令和5年度と令和7年度の2回出ています。

現場吹付法枠工 と プレキャスト法枠工

地山に金網等で枠を作りモルタルを直接吹き付けるのが現場吹付法枠工で、凹凸のある不整形な斜面にもなじみます。プレキャスト法枠工は工場製の枠材を据え付けるので、ある程度整形された斜面が前提です。名前を入れ替えるのが引っかけです。

落石予防工 と 落石防護工

発生させないのが予防工(転石の除去等)、落ちてきたものを止めるのが防護工です。

過去問でどう問われたか

急傾斜地崩壊防止工は、1級で令和5年度No.26・令和6年度No.31・令和7年度No.31と3年続けて出ています。引っかけは大きく3パターンです。

  • 設置位置の逆転……もたれ式を「斜面脚部から離して設置」とする。
  • 名前の入れ替え……現場吹付法枠工の説明をプレキャスト法枠工として書く。落石予防工と落石防護工を入れ替える。
  • 仕様の書き替え……枠工の桁を「無筋コンクリート」、水抜き孔を「水平に設置」、切土工を「高さにかかわらず小段不要」とする。
出題年度・級(問番)問われ方/引っかけ
令和7年度 1級(No.31)水抜き孔を「水平に設置」、もたれ式を「離して設置」、現場吹付とプレキャストの名前を入れ替え。正しいのは現場打ち枠工の桁=鉄筋コンクリート ←①②③
令和6年度 1級(No.31)現場打ちコンクリート枠工の桁を「無筋コンクリート」→ 鉄筋コンクリート ←③仕様
令和5年度 1級(No.26)もたれ式を「離して設置」、切土工を「高さにかかわらず小段不要」、コンクリート張り工に土圧を考慮。正しいのは重力式擁壁 ←①③

つまり接するのがもたれ式、離すのが待受式。枠工の桁は鉄筋コンクリート。水抜き孔は下り勾配。この3点で、3年分の誤り肢がほぼ切れます。

管理人からのコメント

擁壁の据える位置は、名前がそのまま意味を表しています。もたれ式は「もたれる」のだから相手が要ります。待受式は「待ち受ける」のだから、土砂がたまる余地を空けておく必要があります。名前から逆算すれば、設置位置を覚え直す必要はありません。

水抜き孔は、型枠を外したあとの詰まりが見落とされやすい部分です。設置漏れより、詰まったまま完成させるほうが起きやすい失敗です。棒を差し込んで通るかを見ておきます。

理解度チェック

問題:もたれ式コンクリート擁壁を、斜面脚部から離して据えてはいけないのはなぜか。

もたれ式は背面の地山に寄りかかることで安定する形式で、壁だけでは自立しないためです。離して据えると寄りかかる相手がなく、構造として成立しません。斜面下部から離して据えて崩壊土砂を待ち受けるのは待受式です。(令和5年度1級 No.26/令和7年度1級 No.31)

問題:現場打ちコンクリート枠工の桁に、無筋コンクリートではなく鉄筋コンクリートを用いるのはなぜか。

桁は支点間に渡された梁として働き、地山からの土圧やアンカーの反力で曲げを受けるためです。曲げを受ける部材は引張側にひび割れが入るので、そこに鉄筋が要ります。無筋では持ちません。(令和6年度1級 No.31)

問題:重力式コンクリート擁壁の水抜き孔を、水平ではなく前面へ下り勾配で設けるのはなぜか。

水平だと孔に泥や砂がたまって詰まり、水が抜けなくなるためです。背面に水がたまると水圧が土圧に上乗せされて擁壁が不安定になります。抜けない水抜き孔は、付けていないのと同じです。(令和7年度1級 No.31)

まとめ

  • 急傾斜地崩壊防止工とは、がけ崩れから斜面の下の人家・道路を守る工事。崩さない届かせないかで工法が分かれる。
  • もたれ式擁壁は斜面に接して据える。待受式擁壁は斜面下部から離して据え、天端に落石防護柵。
  • 重力式擁壁は自重で抑止。背面の排水に特に留意し、水抜き孔は前面へわずかな下り勾配。
  • 現場打ちコンクリート枠工は安定勾配が取れない切土法面や湧水地に用い、桁は鉄筋コンクリート(曲げを受けるため)。
  • 現場吹付法枠工は金網に直接吹き付けるので不整形な斜面にも施工できる。プレキャスト法枠工は工場製の枠材を据え付ける。
  • コンクリート張り工は覆う工法で、崩壊土圧に抵抗する構造ではない。
  • 切土工は切土高が大きければ一定の高さごとに小段を設ける。
  • 落石予防工=発生させない/落石防護工=止める。

のり面保護工はのり面保護工、のり面の排水は切土・盛土のり面の排水で確認できます。

参考資料

  • 国土交通省「急傾斜地崩壊防止工事技術指針」
  • 公益社団法人 日本道路協会「道路土工-切土工・斜面安定工指針」
  • 一般財団法人 全国建設研修センター 公表の第一次検定 問題・正答

※ 小段の幅や間隔などの数値は、各都道府県の急傾斜地崩壊技術基準で定めが異なります。実務では該当する基準で確認してください。

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土木施工管理技士試験で過去に問われた用語・数値・施工手順を、官公庁の仕様書や日本道路協会の便覧に照らして整理しています。

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