けんせつる
片持ち式って、部材を張り出すの?送り出すの?
鋼橋の架設工法が混ざる…
この記事の要点
鋼橋の架設工法は、ベント式・片持ち式・ケーブルクレーン式・一括架設があります。
桁下が使えるか、地形はどうかで選びます。種類の違いと過去問での問われ方も押さえます。
鋼橋(鋼でできた橋)は、工場でつくった部材を現場で組み立ててかけます。その組み立て方(架設工法)が、現場の条件によって変わります。
鋼橋の架設工法は、ベント式・片持ち式・ケーブルクレーン式・一括架設などがあり、桁下や地形の条件で選びます。
現場の条件に応じて、大きく次のように分かれます。
ベント式は、桁下に仮設工事で組んだ支柱(ベント)を立て、橋桁を自走クレーンでつり上げて仮受けしながら組み立てる工法です。桁下に支柱を立てられる場所で使います。なお、載荷位置を偏心させない場合でも、転倒に対する安全照査は省略できません。
片持ち式は、橋脚や既に架設した桁を使い、トラベラークレーンなどで部材をつりながら張り出して組み立てる工法です。桁下が深い谷や河川などで、支柱を立てられない場所で使います。
ケーブルクレーン式は、ケーブルクレーンを使って橋桁の部材をつり込んで架設する工法です。深い谷など、桁下に支柱を立てられない場所で使います。
一括架設は、組み立てた橋桁を台船で現場までえい航し、フローティングクレーン(起重機船)でつり上げて架設する工法です。海上など、船が使える場所で使います。
一括架設の利点は現場での作業が短く済むことです。橋桁は陸上のヤードで組み立てておき、現場では据え付けるだけになります。航路や交通を止める時間が最小限になるので、現場を長く占有できない場所ほど値打ちがあります。そのかわり、桁を丸ごと運べる船と水路が要ります。
どの工法でも、箱形断面の桁などにつり上げ用として取り付ける吊り金具や補強材は、工場であらかじめ取り付けておきます。現場で後から取り付けるのではありません。
4つの工法は、桁下が使えるかどうかという1つの問いで分かれます。
| 桁下の状況 | 工法 | 桁を支えるもの |
|---|---|---|
| 支柱を立てられる | ベント式 | 下からベントで受ける |
| 深い谷・河川で立てられない | 片持ち式 | すでに架けた桁から張り出す |
| ケーブルクレーン式 | 上からケーブルでつる | |
| 海上(船が使える) | 一括架設 | 船からつり上げる |
ベント式がいちばん確実で安価です。桁を下から仮受けできれば、あとは順に載せていくだけだからです。だから使えるなら第一候補になります。
桁下が谷や川で足場を組めないとき、支える力をどこから持ってくるかで2つに分かれます。片持ち式は「もう架かっている桁」から、ケーブルクレーン式は「上に張ったケーブル」から取ります。
片持ち式は、張り出した先端が支えのない状態で伸びていきます。伸ばすほど根元にかかる力が増えるので、施工の各段階で応力を確かめる必要があります。名前が「片持ち」なのは、この状態そのものを指しています。
吊り金具や補強材を工場であらかじめ取り付けるのには、2つの理由があります。
1つは溶接の品質です。吊り金具は桁を丸ごと持ち上げる力を受けます。ここが外れれば桁が落ちます。工場なら姿勢も環境も整い、検査もできますが、現場の高所で、風の中で行う溶接は品質が安定しません。
もう1つは作業の安全です。現場で後から付けるとなれば、まだつり上げていない桁の上や、足場の悪い場所での作業になります。つり上げる前に済ませておけば、その危険な作業自体が無くなります。
ベント式で「載荷位置を偏心させない場合でも転倒の安全照査を省略できない」のも、同じ考え方です。計算上は釣り合っていても、風・作業手順・据付けの誤差で偏りは生じます。倒れれば取り返しがつかないので、確かめる手順そのものを省きません。
混同しやすい用語
片持ち式工法 と 送出し工法
名前が似ていますが、桁の動かし方が違います。片持ち式工法は、既に架設した桁の先へ、部材をつりながら継ぎ足すように張り出して組み立てます。送出し工法は、岸などであらかじめ組み立てた桁を、所定の位置まで横方向に送り出して架設します。先端へ張り出すのが片持ち式、組んだ桁を送り出すのが送出し、と整理できます。
架設工法は、2級では工法名と架設方法の組合せ、1級では架設の留意点が正誤判定で問われます。
| 年度・級(No.) | 問われ方 | 引っかけ(正誤の分かれ目) |
|---|---|---|
| 令和7年・1級(No.21) | 鋼道路橋の架設 | ベント工法で「転倒に対する安全照査を省略できる」は誤り(省略できない) |
| 令和5年・1級(No.16) | 架設の留意事項 | 箱形断面の吊り金具・補強材を「現場で取り付ける」は誤り(工場で取り付ける) |
| 平成26年・2級後期(No.13) | 鋼橋の架設工法 | 片持ち式を「部材を送り出して架設」は誤り(張り出す。送り出すは送出し工法) |
| 平成25年・2級後期(No.13) | 架設工法と架設方法 | ケーブルクレーン工法を「縦送り」は誤り(空中でつり込み。縦送りは送出し) |
年度をまたいで狙われるのは、工法名と架設方法の取り違えです。片持ち式は部材を張り出して架設し、送り出すのは送出し工法です。1級ではこれに加えて、ベント工法でも転倒照査は省略できないこと、吊り金具は工場で取り付けることが問われます。
問題:ベント式は、桁下に組んだ支柱(ベント)で橋桁を仮受けしながら組み立てる工法である。
〇か×か。
答え:〇
ベント式は桁下に支柱を立てて仮受けします。桁下に支柱を立てられる場所で使います。
問題:片持ち式架設工法は、既に架設した桁から部材を送り出して架設する工法である。
〇か×か。
答え:×
片持ち式は部材を張り出して架設します。送り出すのは送出し工法です。
問題:一括架設は、組み立てた橋桁を台船でえい航し、フローティングクレーンでつり上げて架設する。
〇か×か。
答え:〇
一括架設は船で運んで起重機船でつり上げます。海上など船が使える場所で用います。
問題:ベント工法では、載荷位置を偏心させなければ、転倒に対する安全照査を省略できる。
〇か×か。
答え:×
偏心させない場合でも、転倒に対する安全照査は省略できません。令和7年度の1級でも、この点が問われました。
鋼橋の架設工法は、ベント式・片持ち式・ケーブルクレーン式・一括架設などがあり、桁下に支柱を立てられればベント式、立てられない谷部などは片持ち式やケーブルクレーン式と、現場の条件で選びます。
過去問では、片持ち式を「送り出す」とする取り違え、ベント工法でも転倒照査は省略できないこと、吊り金具は工場で取り付けることが問われます。
橋の防食は鋼橋の防食もあわせて確認すると、鋼橋の施工の流れがつながります。
参考資料
※ 工法・架設方法は標準的な内容です。基準の改定や現場条件で変わるため、最新の資料で確認してください。
※ この記事の確認日:2026年6月
このサイトについて