けんせつる
仮締切の高さって、水位ちょうどでいいの?
掘ってるとき、ボイリングとヒービングどっちを心配するの?
この記事の要点
仮締切工とは、樋門・樋管などをつくるために堤防を開削するあいだ、堤防の代わりをする仮設構造物のことです。
堤防の代役なので、開削する堤防と同等の機能が求められます。押さえるのは4つです。
地盤の種類と破壊現象の組合せを入れ替えるのが、令和7年度の引っかけでした。
まず、仮締切工が何をする構造物なのかを押さえます。「仮」の名前のわりに要求が厳しい理由が、そこにあります。
堤防の中に樋門・樋管を通すには、堤防をいったん開削しなければなりません。開削すると、その区間だけ堤防に穴が開いた状態になります。
工事中に出水が来ても堤内地を守らなければならないので、そこに仮の堤防を築きます。これが仮締切工です。代表的なのは、鋼矢板を2列打ってその間に土を詰める二重仮締切です。
| 項目 | 求められること |
|---|---|
| 高さ | 非出水期間中の施工でも、施工期間中の設計対象水位+余裕高さを確保する |
| 強度 | 堤体としての強度を確保する |
| 洗掘対策 | 法面や河床の洗掘対策を行う |
堤防そのものの構造は河川堤防の築堤、通す構造物は樋門・樋管にまとめています。
仮締切工の工事は、水位の低い非出水期に行います。それでも高さは設計対象水位そのままではなく、余裕高さを加えます。
理由は単純で、非出水期に雨が降らない保証がないからです。仮締切を越えて水が入れば、開削中の堤防を通って堤内地が浸水します。守るべき対象が本設と同じなので、要求も本設に準じます。「仮設だから簡易でよい」という考え方が通らないのは、ここです。
法面や河床の洗掘対策まで求められるのも同じです。水が当たれば足元が削られ、鋼矢板が支えを失います。
撤去の順序も水の向きで決まります。
令和5年度1級No.23は、撤去の順序で上流側を先にした肢が誤りでした。水は上流から来るので、開けるのは下流からです。
仮締切の内側を掘るとき、掘削底面付近の地盤が何かで、警戒する破壊現象が変わります。ここが令和7年度の核心です。
| 掘削底面付近の地盤 | 想定する破壊現象 | 起き方 |
|---|---|---|
| 砂質地盤 | ボイリング・パイピング | 外側の高い地下水が鋼矢板の下を回り込み、浸透流の力で砂が水とともに噴き上がる |
| 軟弱な粘性土地盤 | ヒービング | 背面の土の重さで、掘削底面が下から押し上げられて盛り上がる |
砂は水で動き、粘土は重さで動きます。砂は粒どうしがかみ合っているだけなので、下から水が噴き上がる力で浮き上がります。粘土は水を通しにくいので浸透流では動かず、代わりに背面の土の重量差で底面が押し上げられます。
令和7年度1級No.28は、砂質地盤にヒービングの検討を結び付けた肢が誤りでした。検討は根入れ長さ・壁体幅・安定数などで行いますが、安定数を使うのはヒービング側です。土留め全般の破壊現象は土留めの破壊現象にまとめています。
混同しやすい用語
ボイリング と ヒービング
ボイリングは、地下水の浸透流によって砂が水と一緒に噴き上がる現象です。ヒービングは、背面の土の重さで軟弱な粘性土の底面が押し上げられる現象です。砂なら水、粘土なら重さで分けます。パイピングは浸透流が水みちをつくる現象で、ボイリングと同じ砂質地盤側の話です。
中埋め土 と 裏込め材
中埋め土は、二重仮締切の鋼矢板2列のあいだに詰める土です。擁壁の背面に入れる裏込め材とは別のものです。
設計対象水位 と 天端高さ
設計対象水位は施工期間中に想定する水位、天端高さは仮締切工の頂部の高さです。天端高さ=設計対象水位+余裕高さで決めます。両者を同じにするのが引っかけです。
仮締切工は、1級の第一次検定で令和5年度No.23・令和6年度No.28・令和7年度No.28と3年続けて出ています。河川分野では出題の当たりが決まっている論点です。引っかけは大きく3パターンです。
| 出題年度・級(問番) | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 令和7年度 1級(No.28) | 「砂質地盤の場合にはヒービングの検討」→ 砂質はボイリング・パイピング ←①地盤と現象 |
| 令和6年度 1級(No.28) | 開削の大きさ、仮締切り工の高さ(設計対象水位+余裕高さ)、同等の機能、樋門の床付け面 ←③大きさ |
| 令和5年度 1級(No.23) | 撤去の順序で上流側を先にした肢が誤り。二重仮締切内の掘削時の監視、中埋め土の材料 ←②順序 |
つまり仮締切は堤防の代役。高さは水位+余裕高さ、開けるのは下流から、砂ならボイリング・粘土ならヒービング。この3点で肢が切れます。
問題:非出水期に施工するのに、仮締切工の高さに余裕高さを加えるのはなぜか。
非出水期でも雨が降らない保証がないためです。仮締切を越えて水が入れば、開削中の堤防を通って堤内地が浸水します。守る対象が本設の堤防と同じなので、要求も本設に準じます。(令和6年度1級 No.28)
問題:仮締切工の撤去を下流側から行うのはなぜか。
上流側を先に開けると、締切りの内側へ流れが入り込むためです。まだ復旧が終わっていない場所に水を通すことになります。水は上流から来るので、開けるのは下流からです。(令和5年度1級 No.23)
問題:掘削底面付近が砂質地盤のときにボイリング、軟弱な粘性土地盤のときにヒービングを想定するのはなぜか。
砂は粒どうしがかみ合っているだけなので、鋼矢板の下を回り込んだ地下水の浸透流に押されて水とともに噴き上がります。粘土は水を通しにくいので浸透流では動かず、代わりに背面の土の重さで底面が押し上げられます。砂は水で動き、粘土は重さで動くという違いです。(令和7年度1級 No.28)
護岸は護岸(のり覆工・基礎工・根固工)、堤防の足元は堤脚で確認できます。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
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管理人からのコメント
仮締切工の問題は、全部「守る対象が本設と同じ」という一点から出ています。工事中でも堤内地には人が住んでいます。だから仮設なのに堤防と同等の機能が要り、非出水期でも余裕高さを加え、洗掘対策までやります。「仮設だから簡易でよい」という発想で肢を読むと、全部逆に見えます。
掘削中の監視で実務上いちばん効くのは、水替え工の排水の濁りです。鋼矢板の変位計測は数値が出るまで時間がかかりますが、濁りは目で見て分かります。急に濁ってきたら、地中で砂が動いています。