令和6年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問6は、化学物質等による健康障害に関する問題です。5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
一酸化炭素・二酸化炭素・二酸化窒素・窒素といった代表的なガスの健康影響と、ガス・蒸気の水溶性が体内のどこで効くかが題材です。
この問題は、よく出るガス・蒸気の健康影響(一酸化炭素のヘモグロビン結合、二酸化炭素の濃度別症状、二酸化窒素の刺激、窒素酔い)を一通り押さえているかを問うものです。
引っかけの核心は、ガス・蒸気の水への溶解度が体内のどこで作用するかにあります。
水溶性が高い物質ほど肺の奥(肺胞)まで届きやすいと思わせるところが、この問題のひっかけです。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢5(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 一酸化炭素が赤血球のヘモグロビンと強く結びつき、組織に酸素が行き渡らない酸素欠乏を招くという記述で正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | 二酸化炭素は数%の濃度で呼吸数や脈拍・血圧が上がり、さらに高濃度では短時間で意識を失い命に関わるという段階的な影響で正しい。 |
| 3 | ○(正しい) | 二酸化窒素は急性では粘膜への刺激、慢性では歯牙酸蝕症や慢性気管支炎などがみられるという記述で正しい。 |
| 4 | ○(正しい) | 窒素は空気の約8割を占める無色無臭の気体で、高い分圧で吸うと飲酒に似た窒素酔いを起こすという記述で正しい。 |
| 5 | ×(誤り) | 水溶性が高いガス・蒸気を「肺胞まで到達しやすい」とするのが誤り。水溶性が高いものは上気道の粘膜で溶けて吸収されるため、肺胞まで届きにくい。 |
吸い込んだガスや蒸気が体のどこで作用するかは、その物質の水への溶けやすさで大きく変わります。
気道の表面は粘膜という湿った膜でおおわれているため、水に溶けやすい物質ほど、入口に近い鼻や喉の粘膜で先に溶け込んで吸収・刺激されます。
したがって水溶性が高い物質は、上気道で捕まってしまい、肺の奥の肺胞までは届きにくいのが正しい理解です。
選択肢5はこれを逆にして、水溶性が高いものほど肺胞まで到達しやすいとしている点が誤りです。
反対に、水に溶けにくい物質は上気道で吸収されずに通り抜け、肺胞まで到達しやすくなります。
上気道では症状が出にくいぶん、深く吸い込んでから肺の奥で遅れて作用することがあり、こちらのほうが見落とされやすい危険を持ちます。
水溶性が高い=奥に届く、ではなく、水溶性が高い=手前で止まるという向きで覚えるのが要点です。
問題:水への溶解度が高いガス・蒸気を吸い込むと、肺胞まで到達しやすいか。
いいえ。水溶性が高いものは鼻や喉などの上気道の粘膜で溶けて吸収・刺激されるため、肺胞までは届きにくくなります。肺胞まで到達しやすいのは、むしろ水に溶けにくい物質です。
問題:一酸化炭素が体内で酸素欠乏を起こすのはなぜか。
一酸化炭素が赤血球中のヘモグロビンと強く結合し、酸素を運ぶ働きを妨げるためです。その結果、体内の組織に十分な酸素が届かず酸素欠乏状態になります。
出典
※ 最終更新:2026年6月