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保安規程と工事計画の違いは?届出・認可の時期と場面を整理

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保安規程の届出って、工事の前なの?後なの?

「遅滞なく」って書いてあると、もう判断できない…。

この記事の要点

保安規程とは、事業用電気工作物の工事・維持・運用に関する保安を確保するために、設置する者が定めて主務大臣に届け出る規程のことです。

届け出るのは使用の開始前です。工事完了後に遅滞なく届け出るとした肢は、2年度とも誤りとされています。

「遅滞なく」は変更のときの言葉です。条文の別の項に置かれています。

電気事業法は、工事の前に出す書類と、変更のときに出す書類を分けて定めています。

だから確認も、どちらの場面の話かを先に読みます。

いつ出すかは、場面ごとに決まっている

電気事業法は、書類を出す場面を4つに分けて、それぞれ時期を書いています。誤りの肢は、この4つの言葉を1文に混ぜて作られます。

出す時期は、場面で決まる 使用の開始 保安規程を定める(第42条1項) 使用の開始前 自主検査を伴うなら工事の開始前 保安規程を変える(第42条2項) 変更したあと、遅滞なく 最初に定めるときの言葉ではない 誤り肢は「工事完了後、遅滞なく」と、この2つを混ぜてくる
時期の関係を示した模式図です。手続の流れや期間の長さを表したものではありません。
場面 条文 時期・手続
保安規程を定める 第42条第1項 使用の開始前に届出。自主検査を伴うものは、その工事の開始前
保安規程を変える 第42条第2項 変更したときは遅滞なく届出
工事計画(特に重要なもの) 第47条第1項 認可を受ける
工事計画(それ以外) 第48条第1項・第2項 届出。受理された日から30日を経過した後でなければ工事を開始できない

4つとも工事や使用を始める前に手続を済ませるという向きです。あとから出してよいのは、保安規程を変えたときだけです。

条文は、届け出る時期をはっきり書いています。

電気事業法 第42条第1項(保安規程)

事業用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。以下この款において同じ。)を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、主務省令で定めるところにより、保安を一体的に確保することが必要な事業用電気工作物の組織ごとに保安規程を定め、当該組織における事業用電気工作物の使用(第五十一条第一項又は第五十二条第一項の自主検査を伴うものにあつては、その工事)の開始前に、主務大臣に届け出なければならない。

言い換えると、「使い始める前、自主検査を伴うものなら工事を始める前」ということです。

例えば、令和5年度の肢では工事計画について「届出が受理された日から30日を経過した後でなければ、工事を開始してはならない」と書かれており、こちらも誤りにされていません。工事の前に手続を済ませるという点で、保安規程と同じ向きです。

誤りは、場面の言葉を混ぜて作る

まったく同じ文が、8年をおいて2度出ています。

年度・級・問 肢の書かれ方 扱い
平成28年度 1級 No.83 工事計画の届出を必要とする自家用電気工作物を新たに設置する者は、保安規程を工事完了後、遅滞なく届け出なければならない 誤り
令和3年度 1級 No.83 (一字一句同じ文) 誤り

「工事完了後」という時期が条文と逆です。条文は使用の開始前と定めています。

誤り肢に混ぜられた「遅滞なく」は、条文の次の項に実在します。

同 第42条第2項

事業用電気工作物を設置する者は、保安規程を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を主務大臣に届け出なければならない。

最初に定めるときは使用の開始前、変えたときは遅滞なく。誤り肢は、この2つを1文に混ぜています。

保安規程に何を書くかについては、平成28年度と令和3年度の両方で「災害その他非常の場合に採るべき措置に関することを定めなければならない」という肢が正しい側に置かれています。

工事計画は認可と届出の2本立て

工事計画の手続は、重要度で2つに分かれます。

同 第47条第1項(工事計画)

事業用電気工作物の設置又は変更の工事であつて、公共の安全の確保上特に重要なものとして主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画について主務大臣の認可を受けなければならない。ただし、事業用電気工作物が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするときは、この限りでない。

同 第48条第1項・第2項

事業用電気工作物の設置又は変更の工事(前条第一項の主務省令で定めるものを除く。)であつて、主務省令で定めるものをしようとする者は、その工事の計画を主務大臣に届け出なければならない。その工事の計画の変更(主務省令で定める軽微なものを除く。)をしようとするときも、同様とする。

2 前項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から三十日を経過した後でなければ、その届出に係る工事を開始してはならない。

令和5年度1級No.83は、この第48条第2項をそのまま肢にして正しい側に置きました。「工事計画を届け出、その届出が受理された日から30日を経過した後でなければ、工事を開始してはならない」。30日の起点は、提出した日ではなく受理された日です。

なお、この30日は固定ではありません。条文は次のようにも定めています。

同 第48条第3項

主務大臣は、第一項の規定による届出のあつた工事の計画が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、前項に規定する期間を短縮することができる。

同じ問題には、主任技術者の義務も並びます。保安規程を守らせる側の話です。届出が要る事業用電気工作物の範囲や、そこから外れる小規模事業用電気工作物は別の記事で扱っています。

同じ問題に並ぶ肢も、条文がそのまま根拠です。

同 第43条第5項(主任技術者)

事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。

平成28年度は、この条文をほぼそのまま肢にして正しい側に置いています。

3年度を通して正しい側に置かれる記述

1級で3年度に出ています。引っかけは大きく2つです。

  • ①時期の言葉を入れ替える:使用の開始前を工事完了後にし、変更のときの「遅滞なく」を付けます。
  • ②同じ文を使い回す:平成28年度の誤り肢が、令和3年度にそのまま再登場しています。

3年度を通して、次の記述はいずれも正しい側に置かれています。

  • 保安規程には、災害その他非常の場合に採るべき措置に関することを定めなければならない(H28・R03)
  • 船舶、車両又は航空機に設置されるものは、電気工作物から除かれている(H28)
  • 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない(H28)
  • 発電のために設置するダム、水路及び貯水池は電気工作物である(R03・R05)
  • 自家用電気工作物を設置する者は、死亡又は入院を要する感電事故の発生を知った時から24時間以内可能な限り速やかに概要を報告し、30日以内に報告書を提出しなければならない(R03・R05)

保安規程は使用の開始前、工事計画は受理から30日。どちらも工事の前です。

どこを確認すれば読み分けられるか

保安規程と工事計画の肢は、次の順に見ます。

  • 時期の言葉を読む:工事完了後と書いてあれば誤りです。
  • 定めるのか変えるのかを読む:「遅滞なく」が使えるのは変更のときです。
  • 認可か届出かを読む:公共の安全の確保上特に重要なものだけが認可です。
  • 30日の起点を読む:届出が受理された日からです。

まちがえやすいポイント

この問題は、条文の別の項にある言葉を1文に混ぜて作られています。

「遅滞なく」は第42条第2項の変更のときの言葉です。最初に定めるときは第1項の使用の開始前どちらの場面の話かを読んでから、時期の言葉を当ててください。

混同しやすい語

認可と届出:公共の安全の確保上特に重要なものは認可(第47条)、それ以外の主務省令で定めるものは届出(第48条)です。

使用の開始前と遅滞なく:保安規程を定めるときは使用の開始前、変更したときは遅滞なくです。

30日を経過した後と遅滞なく:工事計画の届出は受理から30日を経過した後に着工します。主務大臣が期間を短縮することもあります。

事業用電気工作物と自家用電気工作物:区分そのものは電気工作物の区分で扱っています。令和5年度は「一般用電気工作物以外の電気工作物は、すべて自家用電気工作物である」とした肢が誤りとされています。

理解度チェック

Q.

保安規程はいつまでに届け出るか?

事業用電気工作物の使用の開始前です。自主検査を伴うものは、その工事の開始前になります(電気事業法第42条第1項)。

Q.

「遅滞なく」届け出るのはどんなときか?

保安規程を変更したときです(同第42条第2項)。最初に定めるときの言葉ではありません。

Q.

工事計画の届出をした者は、いつから工事を開始できるか?

届出が受理された日から30日を経過した後です(同第48条第2項)。主務大臣がこの期間を短縮することもあります(同第3項)。

まとめ

  • 保安規程=使用の開始前に届け出る。自主検査を伴うものはその工事の開始前(第42条第1項)。
  • 「工事完了後、遅滞なく」とした肢は2年度とも同一文で誤り。
  • 「遅滞なく」は保安規程を変更したときの言葉(第42条第2項)。
  • 工事計画=公共の安全の確保上特に重要なものは認可(第47条)、それ以外の主務省令で定めるものは届出(第48条)。
  • 届出をした者は、受理された日から30日を経過した後でなければ工事を開始できない。主務大臣が短縮することもある。
  • 工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者の保安のための指示に従う(第43条第5項)。

参考資料

  • 電気事業法 第42条第1項・第2項(保安規程)/第43条第5項(主任技術者)/第47条第1項(工事計画の認可)/第48条第1項・第2項・第3項(工事計画の届出)(e-Gov 法令ID 339AC0000000170)
  • 一般財団法人 建設業振興基金 試験研修本部「1級電気工事施工管理技術検定 問題・正答肢」(公式サイト)平成28年度・令和3年度・令和5年度
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