けんせつる
力×距離は分かるけど、図のどの長さを使えばいいの?符号もよく分からない。
この記事の要点
力のモーメントとは、ある点のまわりに物体を回そうとする力のはたらきです。力の大きさ×腕の長さで求めます(単位 kN・m)。
力の大きさだけを比べて距離を忘れると、シーソーの問題は必ず外します。
1級・2級とも第一次検定のNo.4で出ます。2級では令和7年度の前期・後期、令和8年度と3年連続で力のモーメントが出ました。
物体に力を加えると、押されて動くだけでなく、ある点を中心に回ろうとします。この回そうとするはたらきの大きさが力のモーメントです。
力のモーメント M = 力の大きさ P × 腕の長さ L (単位は kN・m)
同じ力でも、回転の中心から遠い所に加えるほど大きくなります。ドアの取っ手が蝶番から遠い側に付いているのはこのためです。
単位がkN・mである点に注意してください。力(kN)と長さ(m)の積なので、力そのものとは別の量です。
ここが最大の引っかけです。腕の長さとは、回転の中心から力の作用線に下ろした垂線の長さを指します。
作用線とは、力の矢印をそのまま前後に伸ばした直線のことです。図では力の矢印が短く描かれていますが、その延長線までの距離を取ります。
斜めの距離で計算すると、腕の長さが実際より長くなり、モーメントが大きく出ます。選択肢には、その値が誤り肢として並んでいます。
簡単に言えば、力の向きに対して真横に測った長さが腕です。力と平行な向きの距離は、いくらあっても回す働きに関係しません。
この取り方から、2つのことが導けます。
1つは、作用線が点を通っているとき、モーメントは0になることです。垂線の長さが0だからです。点に向かって押しても、その点を中心には回りません。
もう1つは、力を作用線上で前後に動かしても、モーメントは変わらないことです。作用点が移っても、点から作用線までの垂直距離は同じままだからです。図で力の矢印がどこに描かれていても、作用線が同じなら値は変わりません。
力が2つ以上あるときは、それぞれのモーメントを出して足し合わせます。この合計を合モーメントと呼びます。
このとき、回転の向きで符号をつけます。問題文で「時計回りを正とする」と約束が示されるので、それに従います。
| 回転の向き | 符号 | 計算での扱い |
|---|---|---|
| 時計回り | 正(+) | そのまま足す |
| 反時計回り | 負(−) | 引く |
向きが逆の力どうしは、打ち消し合います。だから合モーメントは、それぞれのモーメントの合計より小さくなることがあります。
符号を無視して足すのが、この問題の代表的な誤りです。令和7年度後期の2級では、正解が Mo=5kN・m でした。2つのモーメントを符号なしで足すと、まったく違う値になります。
物体が回らずに静止しているとき、時計回りのモーメントと反時計回りのモーメントが等しくなっています。これがモーメントのつり合いです。
(左回りのモーメントの合計)=(右回りのモーメントの合計)
令和8年度2級では、シーソーの形で出ました。支点をはさんで左右に荷重が載り、片方の荷重P₁を求めさせる問題です。
解き方は支点まわりでつり合いの式を立てるだけです。左の荷重×左の距離=右の荷重×右の距離。この1本の式から、未知の荷重が出ます。答えはP₁=20kNでした。
遠くにかかる小さい力と、近くにかかる大きい力は釣り合います。力の大きさだけを見比べて「大きいほうへ傾く」と判断すると外します。
簡単に言えば、体重の軽い子でも支点から離れて座れば、重い子と釣り合うということです。
力のモーメントが分かると、曲げモーメントもそのまま計算できます。考え方は同じだからです。
| 力のモーメント | 曲げモーメント | |
|---|---|---|
| 何を表すか | 点のまわりに回そうとするはたらき | 梁を曲げようとするはたらき |
| 求め方 | 力×腕の長さ | 力×断面までの距離 |
| 単位 | kN・m | kN・m |
| 出題 | 2級 No.4 | 1級・2級 No.3 |
単純梁の曲げモーメントを求めるときも、まず支点まわりのモーメントのつり合いから反力を出します。つり合いの式は共通の入口です。
混同しやすい用語
腕の長さ と 点から作用点までの距離
取り方が違います。腕の長さは、点から力の作用線に下ろした垂線の長さです。点から作用点まで斜めに測った距離ではありません。力が斜めに描かれている図では両者が食い違い、斜めの距離を使うと値が大きく出ます。作用線を延長してから、垂線を引いて測ります。
合モーメント と モーメントの合計
符号の扱いが違います。合モーメントは、時計回りを正・反時計回りを負として符号をつけて足した値(代数和)です。符号を無視して大きさだけを足すと、逆向きの力が打ち消し合う分を計算に入れられません。問題文の「時計回りを正とする」という約束を先に読みます。
現場でも同じ見方をします。クレーンの定格荷重が作業半径で変わるのは、荷重×作業半径が転倒方向のモーメントになるためです。同じ吊り荷でも、ブームを伸ばして半径が大きくなるほど、機体を倒そうとするはたらきが増えます。
構造力学は1級・2級とも第一次検定のNo.4で出ます。2級は力のモーメント、1級は図心と断面一次モーメントに分かれています。
| 出題年度・級(問番) | 問われ方 | 答え |
|---|---|---|
| 令和8年度 2級(No.4) | シーソーのつり合い。支点まわりで式を立てる | P₁=20kN |
| 令和7年度 2級(No.4) | 点Oまわりの合モーメント。2力を符号つきで合成 | Mo=62kN・m |
| 令和7年度 2級後期(No.4) | 点Oまわりの合モーメント。腕の長さは作用線までの垂直距離 | Mo=5kN・m |
| 令和6年度 1級(No.4) | 図心と断面一次モーメント | 断面を分けて計算 |
2級では3年連続で出ています。問われ方は合モーメントを求める形とつり合いから未知の荷重を求める形の2つだけです。
問題:腕の長さを、点から作用点までの斜めの距離で取るとどうなるか。
腕の長さが実際より長くなり、モーメントが大きく出ます。斜めの距離は、垂線の長さを直角三角形の斜辺として含むためです。正しい腕の長さは、点から力の作用線に下ろした垂線の長さです。作用線を延長してから測ります。
問題:合モーメントを求めるとき、符号をつけずに足すとなぜ違う値になるのか。
逆向きに回そうとする力が打ち消し合う分を計算に入れられないためです。時計回りと反時計回りの力は、互いに相手を減らす向きにはたらきます。符号なしで足すと、この打ち消しが消えて値が大きくなります。時計回りを正、反時計回りを負として足します。
問題:つり合いの式を立てるとき、支点を回転の中心に選ぶと計算が楽になるのはなぜか。
支点反力の腕の長さが0になり、その項が式から消えるためです。モーメントは力×腕の長さなので、腕が0なら値も0です。反力を求めずに未知の荷重だけを出せるので、未知数が1つ減ります。単純梁の反力を求めるときも同じ手を使います。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
図に3つ書き込めば、計算は1行で終わる
この問題は、図に作用線の延長・垂線・回転の向きの3つを書き込むだけで解けます。書き込む前に計算を始めると、腕の長さと符号のどちらかを落とします。
選択肢の値がばらけているのは、腕を斜めに取った値と、符号を無視した値が混ぜてあるためです。3つを書き込めば、その2つの罠を踏みません。