ゼロから学ぶ土木施工管理|資格のT

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海岸堤防の形式とは?直立型・傾斜型・緩傾斜型・混成型を地盤と堤体土砂で選ぶ

けんせつる

けんせつる

直立型と傾斜型、どこでどっちを使うの?

地盤の話だけじゃないの?

この記事の要点

海岸堤防の形式とは、前面の勾配によって分かれる直立型・傾斜型・緩傾斜型・混成型のことです。選ぶ条件は地盤・用地・堤体土砂・親水性の4つです。

  • 傾斜型……比較的軟弱な地盤で、堤体土砂が容易に得られる場合。
  • 直立型……比較的良好な地盤で、堤防用地が容易に得られない(狭い)場合。
  • 緩傾斜型……堤防用地が広く得られる場合や、海水浴場等に利用する場合。
  • 混成型……水深が割合に深く、地盤が比較的軟弱な場合。

地盤だけで覚えると落ちます。傾斜型は「土がそろうかどうか」で決まります。

まず、海岸堤防が何をする構造物かを押さえます。

海岸堤防とは何か。なぜ形式が分かれるのか

海岸堤防は、高潮や波が背後の土地へあふれるのを防ぐ構造物です。防波堤が港の中の静穏を保つのに対し、海岸堤防は陸の土地を守ります

波を止めるやり方は2つしかありません。壁で受け止めるか、斜面で受け流すかです。この2つと、その組合せ、そして斜面をさらに緩くしたものを合わせて、形式は4つになります。

海岸堤防の形式(模式図) ←海側 直立型 良好な地盤 用地が狭い 傾斜型 軟弱地盤でも可 堤体土砂が得られる 緩傾斜型 用地が広い 海水浴場等 混成型 水深が深い 軟弱な地盤
海岸堤防の形式(模式図)。各形式とも左側が海です。形状・比率は実物どおりではありません。

4つの形式と適する条件

形式 地盤 用地・堤体土砂 そのほかの条件
直立型 比較的良好 堤防用地が容易に得られない(狭い) 壁状なので用地が小さくてすむ。天端や法面の利用は難しい
傾斜型 比較的軟弱でも可 堤体土砂が容易に得られる 堤防の直前で砕波が起こる場合にも向く
緩傾斜型 堤防用地が広く得られる 海水浴場等に利用する場合。人が水辺に近づきやすい
混成型 比較的軟弱 水深が割合に深い場合。マウンドの上に直立部をのせる

覚えるときは傾斜型と直立型を対にします。土がそろって地盤がやや軟らかければ傾斜型、地盤が良くて用地が狭ければ直立型(コンクリートの壁)。この2つが決まれば、残りの2つは「用地が広く親水性なら緩傾斜型」「水深が深ければ混成型」で片づきます。

なぜ傾斜型は「堤体土砂が容易に得られる場合」なのか

ここが試験の核心です。地盤の条件だけで覚えていると、必ず落とします。

傾斜型は、前面がゆるやかな斜面状の形式です。斜面をつくるには、土砂を斜面状に大量に積む必要があります。だから、堤体になる土砂が現場の近くで手に入らなければ、そもそも成立しません。傾斜型が適するのは「堤体土砂が容易に得られる場合」であって、「得られない場合」ではありません。

地盤の条件のほうは、斜面が荷重を広く分散するので、比較的軟弱でも築けます。つまり傾斜型には条件が2つあり、地盤(軟弱でも可)と土砂(得られること)の両方がそろって選ばれます。試験は、正しいほうの地盤条件を残しておいて、土砂の条件だけを逆にしてきます

直立型はこの裏返しです。土砂が要らない代わりに、壁が受けた波の力を全部地盤に渡すので良好な地盤が要ります。そして壁なので用地が小さくてすみます

海岸堤防の各部の名称

形式と並んで問われるのが各部の名称です。海側の前面から順に、根固工・基礎工・波返し工と並びます。

名称 位置 役割
根固工 いちばん海側(法先の前) 法先の洗掘を防ぐ。捨石や異形ブロックを敷く
基礎工 根固工の陸側、法先 表法被覆工を支える。砂地盤で洗掘や吸出しを受けやすい箇所は栗石・捨石で施工する
表法被覆工 海側の法面 堤体の海側を覆って波から守る
波返し工 天端 上がってきた波を陸側へ返す(越波を減らす)

根固工の施工では、捨石根固工は表層に所要の質量の石を三個並び以上とし、内部に向かって次第に小さな石を設置します。「内部に向かって次第に大きな石」は逆で、誤りです。異形ブロック根固工はブロック間の空隙が大きいので、その下部に空隙の少ない捨石層を設けるのが望ましいとされます。汀線付近に設置する場合は、地盤を掘り込むか天端幅を広くとって、海底土砂の吸出しを防ぎます。

施工管理での確認ポイント

  • 堤体土砂の調達を確認する:傾斜型は土砂の量がそろって初めて成立する。土取場と運搬計画が押さえられているか。
  • 盛土材料を確認する:原則として多少粘土を含む砂質又は砂礫質のもの。締固めは土質と使用機械に応じ、適当な含水量で各層・全面にわたり均等に行う。
  • 地盤の強度を確認する:強度の低い地盤に施工せざるをえない場合は、押え盛土や地盤改良を考慮する。
  • 根固工の石の並べ方を確認する:表層に大きい石、内部へ向かって小さく。表層は三個並び以上。
  • 吸出しの対策を確認する:法先が砂地盤なら基礎工に栗石・捨石。汀線付近の根固工は掘り込みか天端幅の確保。
  • 作業時間の制約を見込む:海上工事は波浪・潮汐・潮流の影響を強く受け、作業時間が制限されることがある。

混同しやすい用語

海岸堤防 と 海岸護岸

どちらも海から陸を守りますが、成り立ちが違います。海岸堤防は背後の土地より高く土砂などを盛り上げて、高潮や波の越流を防ぎます。海岸護岸はもともとある海岸の地盤や斜面の前面を覆って、波による浸食や崩れを防ぎます。盛り上げるのが堤防、覆うのが護岸です。

傾斜型 と 緩傾斜型

どちらも斜面ですが、選ぶ理由が違います。傾斜型堤体土砂が容易に得られることが条件で、軟弱地盤でも築ける点が利点です。緩傾斜型は勾配をさらに緩くしたもので、堤防用地が広く得られる場合や海水浴場等に利用する場合に選びます。土砂の話か、用地と利用の話か、で分かれます。

根固工 と 基礎工

並んでいるので位置を取り違えやすいところです。根固工はいちばん海側で、法先の洗掘そのものを防ぎます基礎工はその陸側で、表法被覆工を支えます。海側から根固工・基礎工・波返し工の順です。

過去問でどう問われたか

海岸堤防の形式は2級でくり返し出ます。引っかけは3型です。

  • 堤体土砂の条件の反転……傾斜型を「堤体土砂が容易に得られない場合」とする。
  • 地盤条件の反転……混成型を「比較的良好な地盤」とする。
  • 各部の位置の入れ替え……根固工・基礎工・波返し工の並び順。
出題年度・級(問番)問われ方/引っかけ
令和7年度 2級後期(No.30)傾斜型を「軟弱な地盤で、堤体土砂が容易に得られない場合に適している」→ 誤り。得られる場合 ←①(正答1)
令和5年度 2級後期(No.25)混成型を「水深が割合に深く、比較的良好な地盤に適している」→ 誤り。比較的軟弱な地盤 ←②(正答4)
令和6年度 2級後期(No.30)各部の名称。海側から根固工・基礎工・波返し工の組合せが正しい ←③(正答2)
令和7年度 1級(No.42)捨石根固工を「内部に向かって次第に大きな石を設置する」→ 誤り。次第に小さな石(正答1)
令和6年度 1級(No.43)海岸堤防の施工。盛土材料(多少粘土を含む砂質又は砂礫質)・締固め・海上工事の制約(正答3)

2級の形式問題は、4つの形式のうち1つだけ条件を反転させる形で出ます。令和7年度は堤体土砂、令和5年度は地盤でした。4形式ぶんの条件を、地盤・用地・堤体土砂・親水性の4列で覚えておけば、どこを反転されても気づけます。

管理人からのコメント

海岸堤防の形式は、地盤の良し悪しだけで覚えている人が多いところです。ところが令和7年度後期は、地盤の条件(軟弱でも可)を正しいまま残して、堤体土砂の条件だけを逆にしてきました。地盤だけ見ていると、正しい肢に見えてしまいます。

傾斜型は土を大量に積む形式です。だから土がそろうことが前提。この一点を押さえておけば引っかかりません。土がそろえば傾斜型、そろわず地盤が良ければ直立型(コンクリートの壁)。この対で覚えると、両方いっぺんに片づきます。

各部の名称も出ます。海側から根固工・基礎工・波返し工。前から順に「洗掘を防ぐ・被覆工を支える・波を返す」と役割で並べると、位置も思い出せます。

理解度チェック

問題:傾斜型の海岸堤防が「堤体土砂が容易に得られる場合」に適するのはなぜか。

前面が緩やかな斜面状なので、堤体をつくるのに土砂を大量に積む必要があるためです。土砂が手に入らなければ成立しません。「堤体土砂が容易に得られない場合に適している」は誤りです。地盤のほうは、斜面が荷重を広く分散するので比較的軟弱でも築けます。(令和7年度2級後期 No.30)

問題:直立型の海岸堤防に良好な地盤が必要なのはなぜか。

壁状の構造が受けた波の力を、そのまま地盤に渡すためです。地盤が弱いと支えきれません。その代わり用地は小さくてすむので、堤防用地が容易に得られない(狭い)場所に向きます。

問題:混成型が水深の深い場所に適するのはなぜか。地盤の条件は良好か、軟弱か。

下部のマウンドが水深を埋めて高さを稼ぎ、その上に直立部をのせるためです。地盤の条件は比較的軟弱な場合です。マウンドが直立部の荷重を広く分散して地盤に伝えます。「比較的良好な地盤に適している」は誤りです。(令和5年度2級後期 No.25)

問題:捨石根固工で、表層に大きな石を置き内部に向かって小さな石にするのはなぜか。

波が直接当たる表層ほど大きな力を受けるため、そこに所要の質量の石を三個並び以上で置きます。内部は波の力が弱まるので次第に小さな石でよく、小さい石が大きい石のすき間を埋めて全体が締まります。「内部に向かって次第に大きな石」は逆で、誤りです。(令和7年度1級 No.42)

まとめ

  • 海岸堤防の形式は、前面の勾配で直立型・傾斜型・緩傾斜型・混成型に分かれる。選ぶ条件は地盤・用地・堤体土砂・親水性の4つ。
  • 傾斜型=比較的軟弱な地盤でも可、堤体土砂が容易に得られる場合。「得られない場合」は誤り。
  • 直立型=比較的良好な地盤、堤防用地が容易に得られない(狭い)場合。
  • 緩傾斜型=堤防用地が広く得られる場合、海水浴場等に利用する場合。
  • 混成型=水深が割合に深く、地盤が比較的軟弱な場合。
  • 各部は海側から根固工・基礎工・波返し工。捨石根固工は表層に三個並び以上、内部へ向かって次第に小さな石。
  • 盛土材料は原則として多少粘土を含む砂質又は砂礫質。締固めは適当な含水量で各層・全面均等に。

波そのものを弱める施設は離岸堤と海岸侵食対策、港内を守る施設は防波堤の型式で確認できます。

参考資料

  • 農林水産省・国土交通省「海岸保全施設の技術上の基準・同解説」
  • 一般財団法人 全国建設研修センター 公表の第一次検定 問題・正答
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