けんせつる
ケーソンの据付けって、なんで手早さが大事なの?
海上の施工って、何に左右されるの?
この記事の要点
ケーソンとは、防波堤や岸壁の本体に使う、箱状のコンクリート構造物のことです。陸上で造ってから海上に運び、水を入れて沈めて据え付けます。
施工は製作 → 進水 → 曳航 → 据付 → 中詰 → 蓋コンクリートの順。海の上でしかできない作業が続くので、手早さと気象・海象がすべてを決めます。
「注水を中断せず連続して据え付ける」は誤りです。
まず、ケーソンが何で、どういう順で施工するのかを押さえます。
ケーソンは、内部が隔壁で仕切られた中空の箱です。中が空なので水に浮きます。この性質を使って、陸上で造ったものを海に浮かべて運び、据える場所で水を入れて沈めます。
沈めたあとは、内部に砂や石を詰めて重くします。空洞のままでは波で動いてしまうためです。最後に上をコンクリートでふさぎます。
ケーソンをどこで造り、どうやって浮かべるかで方式が分かれます。用地・水深・規模の条件で選びます。
| 方式 | 造り方・浮かべ方 | 条件・留意点 |
|---|---|---|
| 斜路(滑路)方式 | 斜路の上で製作し、自重で滑らせて降下進水させる | 製作函台部に勾配があるため、延長を長くすると奥側のケーソンの降下速度が大きくなり危険 |
| 吊り降し方式 | 既設護岸の背後などで製作し、クレーンで吊り降ろす | 計画時に、ケーソンの自重による既設護岸の安定を確認しておく |
| ドライドック方式 | ドック内で製作し、注水したのち引き出す | 安全性に富む。規模が大きく長期的な利用が可能な場合に有利 |
| ドルフィンドック(浮ドック)方式 | 浮ドックの上で製作し、浮ドックを沈めて進水させる | 背後の作業用地は要らないが、十分な水深がある静穏な係留場所が必要 |
ケーソン式の直立堤は、本体をドライワーク(乾いた状態)で造れるので施工が確実です。その反面、据付けは海上作業なので荒天日数の多い場所では施工日数に著しく制限を受けます。防波堤の形式ごとの長所短所は防波堤の型式にまとめています。
据付けは、隔室に水を入れてケーソンを沈める作業です。ここには相反する2つの要求があります。
この2つを両立させるのが、着底の直前に注水を一時止めるという手順です。底面が据付け面に近づいたところで水を止め、潜水士が正確な位置を決めてから、再び注水して着底させます。
「注水を中断することなく連続して行い速やかに据え付ける」は誤りです。速さだけを取ると位置が決まりません。
据え付けたばかりのケーソンは、まだ空洞に近く軽い状態です。海水が入っているだけなので、波の力で動かされる危険があります。
だから据付け後はすぐに中詰めをして、砂や石で質量を増して安定させます。「できるだけゆっくり行う」は向きが逆です。
起重機船は、ケーソン本体のような重量物を吊る船です。砂や石をばらばらと隔室に流し込む作業には向きません。中詰め材の投入には、ガット船やグラブ船といった、土砂をつかんで落とす設備を使います。
令和6年度・令和7年度の2級後期で2年続けて、中詰め材の投入に「起重機船を使用する」とした肢が誤りとして出ました。据付けに使う船と、中詰めに使う設備は別です。据付けに使う船そのものはフローティングクレーンにまとめています。
中詰めが終わったら、上をコンクリートでふさぎます。波によって中詰め材が洗い出されるのを防ぐためです。詰めただけでは、波が隔室に出入りするたびに砂が抜けていきます。
混同しやすい用語
中詰め と 蓋コンクリート
続けて行う作業ですが役割が違います。中詰めは、据え付けたケーソンの内部(各隔室)に砂や石を詰めて重量を与えて安定させる作業です。蓋コンクリートは、中詰めのあとに上を覆うコンクリートで、波による中詰め材の洗い出しを防ぎます。内部を詰めるのが中詰、上にふたをするのが蓋コンクリートです。
起重機船 と 中詰め材の投入設備
起重機船はケーソン本体などの重量物を吊る船で、据付けに使います。砂や石を隔室に流し込む中詰め材の投入には、一般に使いません。使う機械が違います。
斜路(滑路)方式 と ドルフィンドック方式
斜路方式は自重で滑らせて降下進水させる方式で、延長を長くすると奥側の降下速度が大きくなり危険です。ドルフィンドック(浮ドック)方式は浮ドックを沈めて進水させる方式で、背後の用地は要らない代わりに、十分な水深がある静穏な係留場所が必要です。
ケーソン式混成堤の施工は、2級でくり返し問われています。引っかけは大きく3パターンです。
| 出題年度・級(問番) | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 令和7年度 2級後期(No.31) | 中詰材の投入に「一般に起重機船を使用する」→ 起重機船は重量物を吊る船 ←③機械 |
| 令和6年度 2級後期(No.31) | 「起重機船を使用して中詰め材を投入する」→ 使う機械が違う ←③機械 |
| 令和5年度 2級後期(No.26) | 中詰めを「できるだけゆっくり行う」→ 据付け後すぐに行う ←②速さ |
| 令和4年度 2級後期(No.26) | 注水を中断せず連続して据え付けるとした肢。着底直前に止めて位置決め ←①注水 |
| 平成26年度 2級(No.26) | 大型起重機船なら「気象・海象条件にかかわらず」据え付けられる→ 海上施工は条件に左右される |
| 令和7年度 1級(No.44) | 大廻しワイヤは原則二重回し、取付けは吃水線以下でできれば浮心付近の高さ |
| 令和6年度 1級(No.45) | 製作・進水方式(斜路・ドライドック・ドルフィンドック・吊り降し)の見分け |
| 令和6年度 1級(No.44) | ケーソン式直立堤はドライワークで確実だが、荒天日数の多い場所では施工日数に制限 |
つまり注水は短時間だが着底直前は止める、中詰めはすぐ、中詰め材の投入に起重機船は使わない。この3点で肢が切れます。
問題:据付け時の注水を短時間で行うのに、着底の直前だけ一時止めるのはなぜか。
海上作業なので短時間で終えたい一方、ケーソンは1個ずつ並べて堤体をつくるので位置がずれると次が入らないためです。底面が据付け面に近づいたところで注水を止め、潜水士が正確な位置を決めてから再注水します。「中断することなく連続して」は誤りです。(令和4年度2級後期 No.26)
問題:据付け後すぐに中詰めを行うのはなぜか。
据え付けたばかりのケーソンは中が空洞に近く軽いため、波の力で動かされる危険があるからです。砂や石を詰めて質量を増すことで安定します。「できるだけゆっくり行う」は向きが逆です。(令和5年度2級後期 No.26)
問題:中詰め材の投入に起重機船を使わないのはなぜか。
起重機船はケーソン本体のような重量物を吊る船で、砂や石を隔室に流し込む作業には向かないからです。据付けに使う船と、中詰めに使う設備は別です。令和6年度・令和7年度の2級後期で2年続けて問われました。
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
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管理人からのコメント
ケーソンの問題は、全部「海の上では時間が敵」という一点から出ています。だから注水は短時間、中詰めはすぐ、蓋コンクリートまで一気に。逆に「ゆっくり」「条件にかかわらず」と書いてある肢は、この前提に反するので疑ってかかれます。
ただし速さだけを取ると位置が決まりません。着底直前に注水を止めるのは、その例外です。急ぐ工程の中に1か所だけ「止める」が入るので、そこが出題されます。