令和6年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問3は、化学物質による健康影響に関する用語と毒性試験の意味を問う問題です。
5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、ばく露量と影響の関係を表す用語(量-影響関係・無影響量・最小影響量・半数致死濃度)と、毒性試験が何を調べる試験なのかを束ねて問うものです。
前半の4つは用語の定義どおりで素直に正しく、最後の1つだけが試験の目的をすり替えた記述になっています。
引っかけの核心は、変異原性試験と催奇形性試験の目的を入れ替えている一点です。
変異原性試験は遺伝子や染色体の変異を調べる試験で、胎児期の臓器や組織の形成への影響を見るのは催奇形性試験です。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢5(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 量-影響関係を、個体についてばく露量とある生体影響の大きさとの関係としており、定義どおりで正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | 無影響量(NOEL)を、影響が認められなかった最高のばく露量とするのは正しい。 |
| 3 | ○(正しい) | 最小影響量(LOEL)を、何らかの影響が認められた最低のばく露量とするのは正しい。 |
| 4 | ○(正しい) | 半数致死濃度(LC50)を、短時間の吸入ばく露で実験動物の半数を死亡させると予想される濃度とするのは正しい。 |
| 5 | ×(誤り) | 変異原性試験を「胎児期の臓器・組織形成への影響を見る試験」とするのが誤り。それは催奇形性試験の目的で、変異原性試験は遺伝子・染色体の変異を調べる試験。 |
変異原性試験は、化学物質が遺伝子(DNA)や染色体に変異を起こす性質を持つかどうかを調べる試験です。
細菌や培養細胞などを使って変異の有無を確かめ、発がん性のスクリーニングとして位置づけられます。
胎児期という時期や、臓器・組織がつくられる過程は、変異原性試験が見ている対象ではありません。
選択肢5が述べる「胎児期の臓器・組織形成への影響を見る」は、催奇形性試験の目的です。
催奇形性試験は、妊娠した実験動物に化学物質を与え、胎児に奇形などの異常が生じるかを調べます。
選択肢5は、この催奇形性試験の目的を変異原性試験のものとして書いているため誤りになります。
試験の名前と、その試験が何を見るのかが対応していない、という入れ替えの引っかけです。
問題:変異原性試験は、化学物質による胎児期の臓器・組織形成への影響を調べる試験か。
いいえ。変異原性試験は遺伝子や染色体の変異を調べる試験で、発がん性のスクリーニングに用いられます。胎児期の臓器・組織形成への影響を調べるのは催奇形性試験です。
問題:無影響量(NOEL)と最小影響量(LOEL)は、それぞれどのばく露量を指すか。
NOELは毒性試験で影響が認められなかった最高のばく露量、LOELは何らかの影響が認められた最低のばく露量です。影響が出ない側の上限と、影響が出る側の下限という関係になります。
出典
※ 最終更新:2026年6月