令和5年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問8は、粉じん及びそれによる健康障害に関する問題です。5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、粉じんの沈着部位(粒径と肺胞)、じん肺・けい肺(アーク溶接ヒューム・遊離けい酸による肺の線維化)、石綿関連疾患(中皮腫)、木材粉じんの有害性という、粉じん障害の基本知識を横断的に問うものです。
引っかけの核心は、木材粉じんの発がん性を「ない」と言い切らせるところにあります。
木材粉じんはヒトに対して発がん性が認められており、ここを取り違えると誤りを見抜けません。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢5(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 空気力学相当径がおおむね1〜2µm程度の粒子は、気道の奥まで届いて肺胞に沈着しやすいので正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | アーク溶接ヒュームは金属粉じんを吸い込ませ、じん肺の原因になるので正しい。 |
| 3 | ○(正しい) | 遊離けい酸(結晶質シリカ)は肺の線維化を起こす作用が強く、けい肺の原因になるので正しい。 |
| 4 | ○(正しい) | 石綿によって生じる中皮腫は、胸膜や腹膜などにできる原発性のがんなので正しい。 |
| 5 | ×(誤り) | 木材粉じんを「発がん性はない」とする点が誤り。木材粉じんはヒトに対して発がん性があり、鼻腔・副鼻腔のがんを起こす。 |
木材粉じんは、ぜんそく(アレルギー性の呼吸器症状)を起こすことがある、という前半は正しい記述です。
問題は後半で、「発がん性はないとされている」と言い切っている点です。
実際には、木材粉じんはヒトに対して発がん性があると評価されており、長期間の吸入により鼻腔がん・副鼻腔がんなどを起こすことが知られています。
とくに広葉樹(ハードウッド)の粉じんで鼻腔・副鼻腔のがんとの関連が指摘されてきました。したがって「発がん性はない」は事実と逆で、ここが誤りになります。
ぜんそくを起こすという正しい記述の後ろに、発がん性を打ち消す一文をつなげて、全体を正しそうに見せる作りです。
前半が正しくても後半が逆なら、その記述は誤りになる、という読み方で見抜きます。
問題:木材粉じんは、ぜんそくを起こすことはあっても、ヒトに対して発がん性はないと考えてよいか。
いいえ。木材粉じんはヒトに対して発がん性があると評価されており、鼻腔がん・副鼻腔がんなどを起こします。ぜんそくを起こすのは正しいですが、「発がん性はない」とするのは誤りです。
問題:経気道的に侵入した粒子のうち、肺胞に沈着しやすいのはおおむねどのくらいの大きさか。
空気力学相当径で1〜2µm程度の粒子が肺胞に沈着しやすいとされます。これより大きい粒子は上気道で捕らえられやすく、小さすぎる粒子は沈着せずに排出されやすくなります。
出典
※ 最終更新:2026年6月