令和5年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問3は、化学物質による健康影響と、その毒性を表す管理指標に関する問題です。
5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、毒性を量で表す基本の用語を、定義どおりに対応させられるかを問うものです。
論点は、個体ごとに影響の大きさを見る量-影響関係、集団の中で影響が出た割合を見る量-反応関係、有害な影響が出はじめる最小毒性量(LOAEL)、半数が死亡する量であるLD50、許容ばく露濃度のTLV-TWAの5つです。
引っかけの核心は、LD50を慢性毒性の指標と取り違えさせるところにあります。LD50は短期間で半数が死ぬ量なので、急性毒性の指標です。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢4(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 量-影響関係を、一個体についてばく露量とある生体影響の大きさの関係とするのは正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | 量-反応関係を、集団についてばく露量とある生体影響が出た個体の割合の関係とするのは正しい。 |
| 3 | ○(正しい) | 最小毒性量(LOAEL)を、有害な影響が認められた最小のばく露量とするのは正しい。 |
| 4 | ×(誤り) | LD50を「慢性毒性を評価する指標」とするのが誤り。LD50は半数が死亡する量で、急性毒性の指標。 |
| 5 | ○(正しい) | ACGIHのTLV-TWAを、8時間・週40時間繰り返しばく露しても健康影響が出ないとされる気中濃度とするのは正しい。 |
LD50は、半数致死量と呼ばれる量です。一群の試験動物にある量をばく露させたとき、その50%が死亡すると予想されるばく露量を指します。
死亡という結果は短期間のばく露で見るので、LD50が表すのは急性毒性です。
選択肢4は、このLD50を「慢性毒性を評価する指標」としています。
半数致死量という量の中身(50%が死亡する量)は正しく書かれているのに、それが評価する毒性の種類だけが急性から慢性へすり替えられています。
長期間の繰り返しばく露で少しずつ現れる影響をとらえるのが慢性毒性の指標であり、半数が死ぬ量を見るLD50はここには当たりません。
慢性毒性側で量を表す指標は、有害な影響が出はじめる最小毒性量(LOAEL)や、影響が認められない無毒性量(NOAEL)です。
LD50とは見ている毒性の種類が違うので、LD50=急性毒性と固定して覚えると取り違えを防げます。
問題:LD50は、慢性毒性を評価する指標といえるか。
いいえ。LD50は試験動物の50%が死亡すると予想されるばく露量で、死亡という結果を短期間で見るため急性毒性の指標です。慢性毒性で量を表すのはLOAELやNOAELです。
問題:量-影響関係と量-反応関係は、何を見る点が違うか。
量-影響関係は一個体について、ばく露量とある生体影響の大きさの関係を見ます。量-反応関係は集団について、ばく露量とその影響が出た個体の割合の関係を見ます。個体の影響の大きさか、集団での割合かが違いです。
出典
※ 最終更新:2026年6月