令和5年8月の作業環境測定士試験 労働衛生一般 問1は、厚生労働省の化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針に関する問題です。
5つの記述のうち、誤っているものを1つ選びます。
この問題は、化学物質のリスクアセスメント指針が示す手順の基本を問うものです。
問われているのは、必要な情報の入手、重篤度の見積り尺度、リスクの見積り手法、低減措置の優先順位といった指針の骨格です。
引っかけの核心は、「作業環境測定で得た気中濃度を、ばく露限界と比較してはならない」という言い切りにあります。
実際にはこの比較こそがリスク見積りの代表的な手法であり、否定文に書き換えられている点で誤りになります。
※ 問題文そのものは、公益財団法人 安全衛生技術試験協会が公表している試験問題で確認できます。
正解:選択肢3(誤っている記述)
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ○(正しい) | 必要に応じ入手すべき情報に作業環境測定結果・特殊健康診断結果・生物学的モニタリング結果が含まれるのは正しい。 |
| 2 | ○(正しい) | 重篤度の見積りでは、傷害や疾病の種類によらず、基本的に休業日数等を尺度とするのは正しい。 |
| 3 | ×(誤り) | 気中濃度をばく露限界と比較してはならないとするのが誤り。気中濃度をばく露限界と比較する方法は、指針が示すリスク見積りの基本的な手法。 |
| 4 | ○(正しい) | 個人ばく露濃度がばく露限界を相当程度下回る場合に、低減措置の検討を要しないとするのは指針に沿っており正しい。 |
| 5 | ○(正しい) | 運転条件や取り扱う物質の形状の変更による低減を、防爆構造化や局所排気装置の設置より優先するのは正しい。 |
リスクの見積りには複数の手法がありますが、その代表が気中濃度をばく露限界と比べる方法です。
作業環境測定で得た化学物質の気中濃度を、管理濃度や許容濃度といったばく露限界と照らし合わせ、上回るか下回るかでリスクの大きさをつかみます。
これは指針が示す基本的な見積り手法です。
選択肢3は、この比較を「比較してはならない」と禁止の形に書き換えています。指針はこの比較を禁じておらず、むしろ推奨される手法として位置づけています。
正しい手法を否定文にすり替えるのが、この肢の引っかけです。
選択肢4が「個人ばく露濃度をばく露限界と比較する手法」を正しい前提として扱っていることも、比較自体が認められた手法であることの裏づけになります。
比較してよいのに「してはならない」と読ませる、という一点で誤りと判断できます。
問題:作業環境測定で得た化学物質の気中濃度を、その物質のばく露限界と比較してリスクを見積もる方法は、指針上認められているか。
認められています。気中濃度を管理濃度や許容濃度などのばく露限界と比較する方法は、指針が示すリスク見積りの基本的な手法です。「比較してはならない」とする記述は誤りです。
問題:リスク低減措置で、局所排気装置の設置と、取り扱う化学物質の形状の変更とでは、どちらを優先して検討するか。
物質の形状の変更や運転条件の変更を優先します。発散そのものを抑える対策が先で、防爆構造化や局所排気装置の設置といった設備による対策はその次に検討します。
出典
※ 最終更新:2026年6月