平成30年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問8を解説|製油所の排水(冷却水は海水ならワンスルー・工業用水なら循環)
平成30年度 大規模水質特論 問8は、石油を精製する工場で発生するさまざまな水とその扱い方についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
石油精製の工場では、油と直に触れて汚れた水、熱を運ぶだけの水、船から抜き取る水、区域に降った水と、性質のちがう水が何種類も出ます。五つの選択肢は、その一つひとつについて、どこから出てどう始末するかの組合せを並べたものです。したがって解き方は、水の名前を見た瞬間に油と接触しているのかどうかとその水はどこから調達したのかを思い浮かべること。引っかけの核心は冷却水にあり、水源が海水か工業用水かで使い方が正反対になる点を、逆向きにひっくり返して提示しています。取り入れやすさと使ったあとの始末という二つの物差しで比べれば、迷いは消えます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 原油には産出のときから水分が混じっており、装置内で分かれた水が油と接した排水になります。 |
| (2) | ○(正しい) | 人が使う設備から出る水は家庭の生活排水と似た性質なので、生物処理でそのまま扱えます。 |
| (3) | ○(正しい) | 船の姿勢を保つために積んだ水は油に触れているため、静置で浮かせてから残りを処理設備で追い込みます。 |
| (4) | ×(誤り) | 大量に取り込めるのは海水のほうで、工業用水は使い回すのが基本です。関係が入れ替わっています。 |
| (5) | ○(正しい) | 装置やタンクの並ぶ区域に降った雨は油をさらって流れるため、油水分離を通してから放流します。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
冷却水は、装置の熱を受け取って温度が上がるだけで、油や薬品と混ざるわけではありません。だから汚れの心配より先に考えるのはその水をどれだけ楽に確保できるかです。臨海に立地する工場が海から取る水は、量の制約がほとんどなく、費用も汲み上げの動力が中心です。そのため一度通して熱を受け取らせ、そのまま海へ戻す一過式(ワンスルー)が成り立ちます。
これに対して工業用水は、外部から供給を受けて代金を払う量にかぎりのある資源です。同じ調子で流しっぱなしにすれば、必要量が跳ね上がって工場が立ち行かなくなります。そこで冷却塔で熱だけを大気へ捨て、水そのものは何度も使い回す循環方式をとるのが普通です。選択肢(4)は大量に取り込めるのが工業用水のほうだと述べ、そのうえで循環させないと結論づけている点で、二重に向きが反対になっています。落ち着いて読めば、水道の栓をひねって流しっぱなしにする冷却など現実的でないと分かるはずです。
循環方式には別の管理が付いてきます。水が蒸発するたびに溶けていた塩類だけが系内に残るので、繰り返すほど濃くなり、放っておけばスケールや腐食の原因になります。そこで一部を意図的に抜き(ブロー)、その分を補給して濃さを一定に保ちます。この抜く量と補給量の関係が、問6の濃縮倍率で計算させられている内容です。海水は使い捨て、工業用水は循環と濃縮管理という対比で覚えると、両方の問題が一度に片づきます。
残りの四つは、油と接触したかどうかで素直に分けられます。原油に同伴してきた水は油と長く触れているため、油分のほかに硫黄分やフェノール類を伴う厄介な排水になり、油水分離のあとに生物処理まで通します。船から抜くバラスト水も油の入っていた区画を経ているので、まず静置して比重差で浮いた油をすくい、残りを排水処理設備で仕上げます。装置やタンクが並ぶ区域の雨水は、ふだんは何も出ていなくても地面や機器に付いた油をさらって流れるため、油水分離を経ずに放流するわけにはいきません。一方、手洗いや食堂から出る水だけは油と無縁で、有機物の質も家庭排水に近いので、生物処理でそのまま片づきます。
覚え方
- 冷却水は海水ならワンスルー、工業用水なら循環。取り入れやすさで方式が決まる。
- 循環させれば蒸発の分だけ塩類が濃くなる。抜く量と補給量で濃さを保つ。
- 工場の水は、油に触れた水と触れていない水でまず二分する。触れた水は油水分離が先。
- 装置区域の雨水は汚れた水の仲間。ふだん出ないからと素通しにしない。
- 人が使う設備の水は生活排水と同じ扱い。生物処理でよい。
理解度チェック
冷却水を循環させるか一度きりで流すかは、何で決まるか。
水をどれだけ楽に大量調達できるかで決まります。制約の少ない海水は一度通して戻す一過式が成り立ちますが、量にかぎりのある工業用水は冷却塔で熱を捨てて使い回します。
装置やタンクの区域に降った雨水を、そのまま放流してはならないのはなぜか。
地面や機器の表面に付いている油をさらって流れるため、雨水であっても油分を含む排水になるからです。油水分離を通したうえで放流します。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月