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平成30年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問9を解説|紙・パルプ業の汚濁負荷削減(黒液は廃液であり燃料でもある)

平成30年度 大規模水質特論 問9は、パルプと紙をつくる工場で汚れの発生そのものを抑える工夫についての正誤問題です。誤っているものを選びます。

この問題のポイント

この業種は、木材から繊維を取り出す段階で大量の有機物が液に溶け出します。溶け出した分をそのまま流せば汚濁負荷は跳ね上がるので、工場は最初から汚れを排水にしないで回収する方向で組み立てられています。五つの選択肢は、洗って回収する、濃くして燃やす、灰から薬品を戻す、漂白剤を替える、繊維入りの水を戻すという、その回収の輪をたどる並びになっています。引っかけの核心は、燃やす段階でエネルギーが出ていく側なのか入ってくる側なのかという一点です。溶け出した有機物は本来なにものかを思い出せば、方向は取り違えません。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(2)(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)○(正しい)洗浄水を繊維の進む向きと逆に流すと、少ない水で濃いまま液を回収できます。
(2)×(誤り)水分を減らした液は自ら燃え続け、蒸気や電力として取り出せます。回収できないとする点が誤りです。
(3)○(正しい)炉の底にたまる溶融物はナトリウムと硫黄を含み、溶かして繊維を取り出す薬品に戻せます。
(4)○(正しい)塩素ガスを使わない漂白に切り替えることで、有機塩素化合物の副生を抑えられます。
(5)○(正しい)紙をすく工程で抜けた水は繊維分を含むため、繊維を原料に、水を希釈用に戻せます。

選択肢(2)のポイント(ここが誤り)

木材の繊維どうしを接着している成分を薬品で溶かし出すと、その成分が溶け込んだ濃い色の液が残ります。これが黒液です。ここで見落とされがちなのが、溶け出しているのはもともと木という燃える材料の一部だという事実です。水を多く含んだままなら確かに燃えませんが、多重効用缶などで水分を飛ばして濃くしていけば、自分の燃焼熱で燃え続けられる状態になります。したがって専用のボイラーに吹き込んで燃やせば、外から燃料を足し続けなくても蒸気が得られ、工場の熱源や発電に回せます。

選択肢(2)は、助燃のエネルギーが要るからエネルギー回収はできないという筋立てになっていますが、実際は出ていく側ではなく入ってくる側です。この液は工場にとって処理に困る廃液であると同時に、重要な燃料でもあります。汚濁負荷を減らす工夫が同時に省エネルギーにもなっている、というのがこの業種の特徴で、そこを正面から否定している点が誤りです。

燃やして得られるのは熱だけではありません。炉の底には、繊維を取り出すときに使ったナトリウムや硫黄を含む溶融物がたまります。これを水に溶かして処理すれば、再び繊維を取り出す薬品として使えます。つまり同じ設備でエネルギーと薬品の両方が戻ってくるわけで、この輪を回すために、洗浄の段階でいかに濃いまま液を回収するかが効いてきます。洗浄水を繊維の進行方向と逆向きに何段も流す方式は、最後の段でいちばんきれいな水を使い、汚れの濃い側へ順に送るので、水の使用量を抑えたまま回収率を上げられます。回収しそこねた分はそのまま排水の汚濁負荷になるため、洗浄・濃縮・燃焼・薬品再生は一続きの対策と考えるべきです。

残る二つも、汚れを出さない工夫という同じ考え方の上にあります。漂白では、塩素ガスを直接使うと有機物と反応して有機塩素化合物が生まれるため、二酸化塩素を主体とする方式に切り替えて副生を抑えます。紙をすく工程で網から抜ける水は繊維や填料を含んでいますが、これも捨てずに回収工程へ送り、固形分は原料へ、水は希釈用として工程に戻します。回収して使う先があるものは排水に出さないという一本の筋で、五つの記述はつながっています。

覚え方

  • 溶け出した木の成分は廃液であると同時に燃料。濃くすれば助燃なしで燃える。
  • 燃やした先で戻るのは熱と薬品の二つ。汚濁負荷削減と省エネルギーが同じ設備で成立する。
  • 洗浄は逆向きに多段。きれいな水を最後段に入れ、汚れの濃い側へ順送りすると水が少なくて済む。
  • 漂白で塩素ガスを避ける狙いは、有機塩素化合物を生ませないこと。
  • 繊維を含む水は捨てない。固形分は原料へ、水は希釈へ。

理解度チェック

Q.

繊維を取り出したあとに残る濃い液を燃やすと、工場は何を得られるか。

熱(蒸気や電力)と薬品の両方です。液の中身は木由来の有機物なので濃縮すれば燃料になり、燃え残りにはナトリウムや硫黄が含まれるため、繊維を取り出す薬品として再生できます。

Q.

洗浄水を繊維の流れと逆向きに多段で流すのはなぜか。

最後の段にいちばんきれいな水を入れ、汚れの濃い側へ順に送ると、少ない水量で濃いまま回収できるからです。回収しそこねた分がそのまま排水の汚濁負荷になるため、回収率を上げることが負荷削減に直結します。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF