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平成30年度 公害防止管理者 大規模水質特論 問10を解説|食料品製造業の排水処理(原料に触れた水ほど濃い)

平成30年度 大規模水質特論 問10は、食品や飲料をつくる工場から出る水の性質と処理の考え方についての正誤問題です。正しいものを選びます。

この問題のポイント

この分野は、法令上の位置づけを問う前半と、処理技術の効き方を問う後半に分かれています。誤りの四つは、規制の対象から外れていると言い切る、規制がほぼ全部に及ぶと言い切る、嫌気性処理の効果を逆に述べる、汚れの中身を取り違える、という四通りの外し方で作られていて、いずれも極端な断定か方向の反転です。残る一つだけが、工程ごとに水の濃さが違うという当たり前の事実を素直に述べています。飲食物を扱う工場の排水は、原料そのものが溶け込んでいるか、容器や設備を洗った水にすぎないかで濃さがはっきり分かれます。この見分けを軸にすると、正しい記述が浮かび上がります。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(3)(正しい記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)×(誤り)原料処理・洗浄・湯煮といった食品関係の施設は、特定施設として掲げられています
(2)×(誤り)この業種は小規模な事業場の割合が大きく、ほとんどすべてに一律の基準が及ぶわけではありません
(3)○(正しい)原料に由来する有機物が溶け込む工程の水は、容器を扱う工程の水より濃くなります。
(4)×(誤り)嫌気性の処理を前に置くと余剰汚泥は減ります。増えるとする点が反対です。
(5)×(誤り)主な相手は水に溶けた有機物なので、粒子を集めて沈める操作だけでは片づきません。

選択肢(3)のポイント(ここが正しい)

ビールをつくる工場の工程は、大きく二つの性格に分かれます。ひとつは麦芽や副原料を仕込み、糖化した液を発酵・貯蔵・ろ過していく流れで、ここで扱っているのは飲みものそのものになる液です。もうひとつは、できあがった製品を容器へ詰めていく流れで、こちらで水が触れるのは主に容器と配管や機器の表面です。

前者から出る水には、糖分、たんぱく質、酵母、ろ過で分けた濁りの成分といった、原料に由来する有機物が直接混ざります。仕込み釜や発酵タンクを洗えば、内壁に残った液がそのまま流れに乗ります。後者では、洗った容器に付いていた汚れやわずかな飲み残し、装置を洗った水が中心で、有機物の量は前者に比べればずっと少なくなります。したがって醸造の流れから集めた混合排水のほうが、容器に詰める工程の排水よりCODは高いという関係になり、選択肢(3)はこの関係を正しく述べています。

この違いは、単なる知識ではなく設計に直結します。濃い流れと薄い流れをひとまとめにすると、全体が中途半端な濃さになって処理設備が無駄に大きくなります。濃い側だけを別に集めれば、有機物の濃度が高い状態で嫌気性の処理にかけられ、発生するガスを回収する道も開けます。逆に薄い側は、処理の負担が軽いぶん再利用にも回しやすくなります。問5の用排水系統図のように工程ごとの水量と行き先を追う出題も、この考え方の延長にあります。

誤っている四つも、それぞれ理由がはっきりしています。食品を扱う施設は法令の特定施設として並んでおり、対象外どころか代表格です。ただし、この業種は事業場の規模の幅が広く、小さな工場が数のうえで多くを占めるため、排水量が一定の規模に達しない事業場には一律の排水基準がそのままでは及びません。地域によっては条例で別に基準が置かれることもあります。UASBのような嫌気性処理を活性汚泥法の前に置く効果は、曝気に使う動力が減ることと、余剰汚泥の発生量が減ることの二つで、汚泥が増えるとするのは向きが反対です。嫌気性の微生物は好気性のものに比べて、同じ量の有機物を食べても菌体としてはあまり増えないためです。清涼飲料をつくる工場の排水は、糖類など水に溶けきった有機物が主役で、凝集剤で集めて沈めるという操作は溶けているものに手が届きません。生物処理が主役になります。

覚え方

  • 食品工場の排水は原料に触れた水ほど濃い。容器や設備を洗っただけの水は薄い。
  • 濃い流れと薄い流れは分けて集める。分けるほど処理も再利用も設計しやすい。
  • 嫌気性処理を前段に置くと、曝気動力と余剰汚泥がどちらも減る。嫌気性の菌は増えにくいから。
  • 溶けている有機物に凝集沈殿は効かない。粒子を相手にする操作と、溶けたものを相手にする操作を混同しない。
  • 食品関係の施設は特定施設。ただし小規模が多く、一律の排水基準が届く範囲は業種全体には及ばない。

理解度チェック

Q.

ビール工場で、醸造の流れから出る排水のほうが濃くなるのはなぜか。

そこで扱っているのが飲みものそのものになる液だからです。糖分やたんぱく質、酵母など原料由来の有機物が直接混ざります。容器へ詰める工程で水が触れるのは主に容器や機器の表面なので、有機物の量はずっと少なくなります。

Q.

活性汚泥法の前段に嫌気性処理を置くと、余剰汚泥はどうなるか。

減ります。嫌気性の微生物は、同じ量の有機物を分解しても菌体としてあまり増えないためです。あわせて後段で処理すべき有機物が減るので、曝気に使う動力も下がります。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大規模水質特論 問題・正解」(公式PDF