令和6年度 1級電気工事施工管理技士 第一次検定 No.21は、地中送電線路における電力ケーブルの送電容量を増大させる方法に関する記述として、最も不適当なものを選ぶ問題です。
この問題は、送電容量を決めているのが何かを分かっているかを問うものです。ケーブルは温度で決まります。熱を減らすか、逃がすかしかありません。
誘電正接を大きくすると熱が増えるので逆です。
正解:選択肢3(誘電正接の大きい絶縁体を使用する)
| 選択肢 | 内容 | 解説 |
|---|---|---|
| 1 | ケーブルを冷却する | 熱を逃がす直接の方法。適当 |
| 2 | 素線絶縁導体を使用する | 表皮効果が減り抵抗損が下がる。適当 |
| 3 | 誘電正接の大きい絶縁体を使用 | 誘電体損が増える。小さいほうがよい。不適当 |
| 4 | 金属シースの抵抗を大きくする | 循環電流が減りシース損が下がる。適当 |
不適当なのは選択肢3です。
引っかけの核心は、送電容量を増やすのだから何かを「大きく」すればよいと考えてしまうところです。大きくしてよいのはシースの抵抗だけで、損失につながる値は全部小さくします。
ケーブルの送電容量は、導体の温度が許容値を超えないところで決まります。発熱源は3つです。
| 損失 | 出るところ | 減らす方法 |
|---|---|---|
| 抵抗損 | 導体 | 導体を太くする、素線絶縁導体にする |
| 誘電体損 | 絶縁体 | 誘電正接と比誘電率が小さい材料にする |
| シース損 | 金属シース | シースの抵抗を大きくする、クロスボンド接地にする |
誘電体損は、絶縁体に交流電圧がかかったとき分子が向きを変えるのに使われる電力です。誘電正接(tanδ)と比誘電率のどちらも、小さいほど熱が出ません。CVケーブルの架橋ポリエチレンがOFケーブルの油浸紙より有利なのは、この2つの値が小さいからです。
この論点は繰り返し出ています。平成25年度 No.24と令和3年度 No.24では、どちらも「誘電正接の小さい絶縁材料を使用する」が正しい選択肢として置かれ、「比誘電率の大きい絶縁材料を使用する」のほうが誤りとされました(公表正答はそれぞれ3と4)。誘電正接も比誘電率も、小さいほうが有利です。
選択肢2の素線絶縁導体は、より線の1本1本に絶縁を施した導体です。交流では電流が表面に寄る表皮効果と、隣の導体の影響で偏る近接効果が起きて実効的な抵抗が上がります。素線どうしを絶縁すると素線の間を回る電流が流れなくなり、この上昇を抑えられます。
選択肢4のシース損は、導体の電流が作る磁束で金属シースに電圧が誘導され、電流が流れて出る熱です。シースの抵抗を大きくすれば流れる電流が減り、損失が下がります。もう1つの方法がクロスボンド接地で、シースを区間ごとに入れ替えて誘導電圧を打ち消し合わせます。
選択肢1の冷却は、出た熱を外へ逃がす方法です。水を通す管をそばに敷いたり、絶縁油を循環させたりします。大都市の幹線で使われますが、設備と運転の費用がかかります。
誘電正接が大きい絶縁体を使うとどうなるか。
誘電体損が増えて発熱が大きくなり、送電容量は下がります。誘電正接は小さいほうが有利です。
金属シースの抵抗を大きくするとなぜ有利か。
シースに流れる循環電流が減り、シース損による発熱が小さくなるためです。
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月