けんせつる
注入は、濃いセメントミルクから入れるの?薄いほう?
3種類のグラウチング、どれがどのダム?
この記事の要点
グラウチングとは、ダムの基礎地盤にセメントミルクを注入して、遮水性を改良し弱い部分を補強する基礎処理のことです。種類は3つ、順序は2つ、これだけで肢が切れます。
配合は薄いものから濃いものへ。ステージ注入工法は標高の上位から下位へ。この2つの向きを逆にした肢が、毎年のように出ます。
まず、グラウチングが何をする処理かを押さえます。
ダムは水をためる構造物です。ダム本体がいくら丈夫でも、下の岩盤に水の通り道があれば、水はそこから抜けてしまいます。抜けるだけでなく、岩盤の中を流れる水が土砂を運び出せば、基礎そのものが弱っていきます。
グラウチングは、基礎地盤にボーリング孔をあけてセメントミルクを圧入し、岩盤の割れ目を埋める処理です。目的は2つあります。
どこにどれだけ注入するかを決めるには、まず岩盤がどれだけ水を通すかを知る必要があります。これを調べるのがルジオンテストです。ボーリング孔を利用して水を圧入し、その注入量から透水性を求め、ルジオン値(Lu)で評価します。
| 種類 | 対象のダム | 施工する場所 | 目的 |
|---|---|---|---|
| コンソリデーション | 重力式コンクリートダムなど | 着岩部付近(堤体が岩盤に接する面のまわり) | 遮水性の改良と基礎地盤の弱部の補強 |
| カーテン | 両方 | 基礎地盤の深い部分。コンクリートダムは上流フーチング又は堤内通廊から、フィルダムは監査廊から | カーテン(幕)状の改良帯をつくって深部からの水の回り込みを止める |
| ブランケット | ロックフィルダム | コア(中心の遮水部)の着岩部付近 | カーテングラウチングとあいまって遮水性を改良 |
試験で入れ替えられるのは、コンソリデーションとブランケットです。どちらも「着岩部付近を面的に改良する」点が似ているため、対象のダムだけをすり替えた肢が出ます。コンソリデーションは重力式コンクリートダム、ブランケットはロックフィルダムのコア。ここで切ります。
グラウチングは、削孔とセメントミルクの注入をステージ(一定の深さの区間)ごとに区切って繰り返します。ここに順序が2つあり、どちらも過去問で逆にされます。
| 何の順序か | 正しい向き | 誤りの肢 |
|---|---|---|
| 配合(水セメント比 W/C) | ルジオン値に応じた初期配合から、濃度の薄いものから濃いものへ順に切り換える | 「濃いものから薄いものへ順に注入する」 |
| ステージの方向 | 標高の上位から下位へ、削孔と注入を交互に繰り返す | 「下位から上位のステージに向かって行う」 |
配合の切換えは、注入前に測ったルジオン値と、注入中の注入量や圧力の変化を見て判断します。また、グラウチングの仕様は最初に決めて終わりではなく、当初計画を日々の施工結果から常に見直し、必要に応じて修正していきます。地盤は掘ってみないと分からないためです。
改良の状況をたしかめるのが水押し試験です。これはグラウチングによる遮水性の改良状況の把握と、注入するグラウトの初期濃度の決定のために行います。
2つとも、理屈が分かれば向きを覚え直す必要がありません。
薄い配合から入れる理由。薄いミルクは流れやすいので、岩盤の細い割れ目の奥まで届きます。最初から濃いミルクを入れると、入口付近の広い割れ目で止まってしまい、奥に届きません。まず薄いもので広く行き渡らせ、入っていく量を見ながら濃くして最後に止める。この順でなければ、奥の割れ目が残ります。
上位から下位へ進める理由。浅い区間を先に固めておけば、その部分が蓋の役割をします。あとから深い区間へ高い圧力をかけても、浅いところから漏れません。逆に深いほうを先にやると、上の緩い部分からミルクが逃げて、圧力がかからず注入になりません。
どちらも「先に土台を作ってから次へ進む」という同じ考え方です。片方を覚えれば、もう片方も思い出せます。
混同しやすい用語
コンソリデーション と ブランケット
どちらも着岩部付近を面的に改良する点が同じなので、対象のダムを入れ替えた肢が出ます。コンソリデーションは重力式コンクリートダムの着岩部付近で、遮水性の改良に加えて基礎地盤の弱部の補強も目的とします。ブランケットはロックフィルダムのコア着岩部で、カーテングラウチングとあいまって遮水性を改良します。
ルジオンテスト と 水押し試験
どちらも孔に水を入れる試験ですが、使う場面が違います。ルジオンテストは基礎地盤の透水性を調べてルジオン値で評価する調査です。水押し試験はグラウチングによる遮水性の改良状況を把握し、注入するグラウトの初期濃度を決定するために行います。
カーテン と コンソリデーション(深さ)
カーテングラウチングは基礎の深い部分に幕状の遮水帯をつくる、いわば縦方向の処理です。コンソリデーショングラウチングは着岩部付近を面的に固める、横方向の処理です。深さで区別できます。
グラウチングは1級の専門土木でほぼ毎年1問出ます。引っかけは3型です。
| 出題年度・級(問番) | 問われ方/引っかけ |
|---|---|
| 令和7年度 1級(No.38) | コンソリデーションを「ロックフィルダムの着岩部…カーテンとあいまって」→ 誤り。それはブランケットの役割 ←③(正答1) |
| 令和6年度 1級(No.38) | ステージ注入工法を「下位から上位へ削孔と注入を交互に」→ 誤り。上位から下位へ ←②(正答1) |
| 令和5年度 1級(No.33) | 配合を「濃いものから薄いものへ順に注入」→ 誤り。薄いものから濃いものへ ←①(正答2) |
| 平成27年度 1級(No.33) | 配合を「濃い配合から順に注入」→ 誤り。薄い配合から濃い配合へ ←①(正答2) |
正しい肢として繰り返し出るのは、ルジオンテストによる透水性の評価、カーテンの施工位置(上流フーチング又は堤内通廊)、仕様を日々の施工結果から見直すこと、水押し試験の目的の4つです。これらは覚えておくと、消去法が速くなります。
問題:セメントミルクを薄い配合から注入するのはなぜか。
薄いミルクは流れやすく、岩盤の細い割れ目の奥まで届くためです。最初から濃いミルクを入れると入口付近で止まり、奥の割れ目が残ります。薄いもので広く行き渡らせ、注入量を見ながら濃くして止めます。「濃いものから薄いものへ」は誤りです。(令和5年度1級 No.33、平成27年度1級 No.33)
問題:ステージ注入工法を標高の上位から下位へ進めるのはなぜか。
浅い区間を先に固めておけば、その部分が蓋になるためです。あとから深い区間へ高い圧力をかけても、浅いところから漏れません。下位から先に行うと、上の緩い部分からミルクが逃げて圧力がかかりません。(令和6年度1級 No.38)
問題:コンソリデーショングラウチングとブランケットグラウチングは、何が違うか。
対象のダムと目的の範囲が違います。コンソリデーションは重力式コンクリートダムの着岩部付近で、遮水性の改良に加えて基礎地盤の弱部の補強も行います。ブランケットはロックフィルダムのコア着岩部で、カーテングラウチングとあいまって遮水性を改良します。令和7年度1級No.38は、この2つを入れ替えた肢が誤りでした。
問題:水押し試験は何のために行うか。
グラウチングによる遮水性の改良状況を把握するためと、注入するグラウトの初期濃度を決定するためです。注入前に透水性を調べるルジオンテストとは、使う場面が違います。(令和7年度1級 No.38)
この用語が問われた過去問
参考資料
※ この記事の確認日:2026年9月
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管理人からのコメント
グラウチングは、出題される論点がほぼ固定されています。3種類の対象ダムと、2つの順序。この5点だけで、過去4回分の誤り肢が全部切れました。
覚え方としては、順序の2つを「先に土台を作ってから次へ」でまとめるのが楽です。薄いミルクで奥まで行き渡らせてから濃くする、浅いところを固めてから深いところへ進む。どちらも同じ発想です。逆にすると、奥に届かない・圧力がかからないという同じ失敗になります。
種類のほうは、コンソリデーションとブランケットの取り違えだけ気をつけてください。令和7年度はまさにここが誤り肢でした。