平成30年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問9を解説|塩化水素分析方法(イオン電極法の吸収液)
平成30年度 大気有害物質特論 問9は、排ガスに含まれる塩化水素をはかる三つの方法についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
塩化水素の測定は、いずれの方法もガスを液に取り込んで塩化物イオンにしてから量る、という骨組みを共有しています。違いは量り方で、電極の電位で読むか、イオンクロマトグラフで分離して読むか、銀の試薬で滴定するかです。出題では、吸収の段階・分離できる成分・検出器・定量できる濃度の下限という四つの角度から記述が並びます。焦点は入口の吸収液で、取り込むことだけを考えて液性を選ぶと、後段の測り方が成り立たなくなるという一点に引っかけが仕込まれています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | イオンクロマトグラフ法では、水によく溶ける塩化水素の性質を使い、試料ガスを水に吸収させます。 |
| (2) | ×(誤り) | イオン電極法の吸収液に水酸化ナトリウム溶液は使いません。強アルカリでは塩化物イオン電極が正しく応答しません。これが正解です。 |
| (3) | ○(正しい) | 陰イオンをまとめて分離できるため、塩化物イオン・硝酸イオン・亜硝酸イオン・硫酸イオンなどを同時に定量できます。 |
| (4) | ○(正しい) | 検出はイオン電極法が塩化物イオン電極、イオンクロマトグラフ法が電気伝導度検出器です。 |
| (5) | ○(正しい) | 硝酸銀滴定法は定量範囲の下限値が高く、低い濃度まで追えるのはイオンクロマトグラフ法です。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
塩化水素は酸性のガスなので、水酸化ナトリウム溶液に通せばよく吸収されます。吸収の効率だけを見て吸収液を選ぶと、この記述はもっともらしく見えます。しかし吸収は測定の準備にすぎず、その液をそのまま測る側の都合を無視することはできません。イオン電極法で最後に働くのは塩化物イオン電極であり、この電極は液の中の塩化物イオンだけに応じて電位を示すことで濃度を教えてくれます。
ここに強いアルカリを持ち込むと、その前提が崩れます。塩化物イオン電極は水酸化物イオンが大量にある条件では正しく応答せず、塩化物イオンの量とは無関係に電位がずれてしまうためです。したがってイオン電極法では、電極がきちんと応答できる液性の吸収液が用いられ、水酸化ナトリウム溶液のような強アルカリの液は選ばれません。「酸性ガスだからアルカリで受ける」という反射だけで判断すると、この肢を正しいと読んでしまいます。
同じ塩化水素の分析でも、イオンクロマトグラフ法が水への吸収でよいのは、測り方が違うからです。こちらは液を装置に注入して陰イオンを分離し、電気伝導度で検出するため、電極のように液性そのものに縛られません。吸収液は測定原理とセットで決まるという関係を押さえておくと、方法ごとに吸収液が入れ替わる出題に振り回されずに済みます。
覚え方
- 吸収液は「よく溶けるか」だけでなく「そのあと何ではかるか」で決まる。
- 塩化物イオン電極は強アルカリで応答が狂う。イオン電極法に水酸化ナトリウム溶液の吸収液は使わない。
- 塩化水素のイオンクロマトグラフ法は水に吸収。陰イオンをまとめて同時定量できるのが強み。
- 検出器は、イオン電極法=塩化物イオン電極/イオンクロマトグラフ法=電気伝導度検出器。
- 硝酸銀滴定法は下限が高く、低濃度には向かない。薄い試料はイオンクロマトグラフ法。
理解度チェック
イオン電極法の吸収液に強アルカリの溶液を使えないのはなぜか。
塩化物イオン電極が強アルカリ性では正しく応答しないためです。塩化水素そのものはよく吸収されても、電位が塩化物イオンの量を反映しなくなります。
低い濃度の塩化水素を測りたいとき、硝酸銀滴定法とイオンクロマトグラフ法のどちらが適するか。
イオンクロマトグラフ法です。硝酸銀滴定法は定量範囲の下限値が高く、薄い試料では測定できる範囲を外れます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月