平成30年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問10を解説|ICP発光分光分析法(プラズマガスはアルゴン)
平成30年度 大気有害物質特論 問10は、排ガス中のカドミウムをICP発光分光分析法ではかる手順についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
金属の分析は、ダストとして捕まえる段階、それを溶かして溶液にする段階、装置に導いて光らせる段階の三つに分かれます。この問題は、その流れに沿って採取・前処理・導入・検出・同時定量の可否を並べたもので、四つは手順の常識どおりです。焦点は装置の心臓部で、高温のプラズマを何のガスで作るのかという一点だけが別の気体に差し替えられています。装置の名前に含まれる「誘導結合プラズマ」を、どの気体で立てているかまで押さえていたかが分かれ目になります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(3)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | カドミウムはダストに含まれて出てくるため、採取はダスト濃度の測定方法に準じて行います。 |
| (2) | ○(正しい) | 捕集したダストを酸で溶かす湿式分解が、分析用試料溶液の調製に一般に用いられます。 |
| (3) | ×(誤り) | プラズマを形成するガスはヘリウムではなくアルゴンです。これが正解です。 |
| (4) | ○(正しい) | 試料溶液は霧状にされ、ミストとして誘導結合プラズマの中へ運ばれます。 |
| (5) | ○(正しい) | 元素ごとに固有の波長で発光するため、鉛やニッケルなどをカドミウムと同時に定量できます。 |
選択肢(3)のポイント(ここが誤り)
誘導結合プラズマは、コイルに高周波の電流を流して作った電磁場の中に気体を送り込み、その気体を電離させて維持する炎のような発光源です。ここに使われる気体はアルゴンであり、ヘリウムでプラズマを立てるという記述は装置の基本構成を取り違えています。名前だけでは気体まで判別できないため、「ICPといえばアルゴン」と一体で覚えておく必要があります。
アルゴンが選ばれる理由は、その素性にあります。反応しにくい気体なので、試料の成分と結び付いて余計な化合物を作らず、測定の邪魔になる発光も少なく済みます。単原子の気体で分子として振る舞わないため、安定したプラズマを保ちやすいという利点もあります。加えて空気中にそれなりの割合で含まれ、工業的に取り出して供給できる点も現場向きです。ヘリウムは入手しにくく高価で、この用途の標準にはなっていません。
装置の側から見ると、この問題の他の記述はすべて一本の流れでつながります。ダストとして捕まえたカドミウムは、そのままでは装置に入れられないので湿式分解で溶液にします。その溶液を霧にしてアルゴンのプラズマへ送り込むと、非常に高い温度で原子にほぐされて励起し、元素ごとに決まった波長の光を出します。この光を分光してどの波長がどれだけ強いかを見るため、一度の測定で複数の金属をまとめて定量できるわけです。
覚え方
- ICP発光分光分析のプラズマガスはアルゴン。ヘリウムに差し替える引っかけに注意。
- アルゴンは反応しにくい単原子ガス。余計な化合物も余計な発光も作らない。
- 金属分析の流れは、ダストとして採取→湿式分解で溶液化→ミストにしてプラズマへ。
- 元素ごとに固有の波長で光るので、鉛・ニッケルなどとの多元素同時定量ができる。
理解度チェック
ICP発光分光分析法で、プラズマを形成するために用いる気体は何か。
アルゴンです。反応しにくい単原子の気体で、安定したプラズマを保ちやすく、測定の妨げになる発光も少なく済みます。
ICP発光分光分析法で複数の金属を同時に定量できるのはなぜか。
元素ごとに固有の波長で発光するためです。プラズマ中で同時に励起された各元素の光を分光して読み分けられるので、カドミウムのほかに鉛やニッケルなども一度に定量できます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月