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平成30年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問8を解説|塩素のイオンクロマトグラフ法(測るのは塩化物イオンではない)

平成30年度 大気有害物質特論 問8は、排ガスに含まれる塩素をイオンクロマトグラフではかる手順についての正誤問題です。誤っているものを選びます。

この問題のポイント

イオンクロマトグラフは水溶液中のイオンを分けて量る装置なので、ガスの分析ではまず「対象のガスを液に取り込み、装置ではかれるイオンの形にする」段階が必要になります。この問題は、その入口にあたる吸収と変換の部分と、装置側の仕組み(溶離液・サプレッサー・検出器)、さらに標準液の作り方と妨害物質までを一通り並べたものです。四つは装置の常識どおりですが、一つだけ、吸収液の中で何を作って何を量っているのかを取り違えた記述が混じっています。塩素の分析だから塩化物イオンを量るはずだ、という思い込みが試されています。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(1)(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)×(誤り)測定の対象は塩化物イオンではありません。吸収液の中でシアン酸イオンに変えたうえで量ります。これが正解です。
(2)○(正しい)陰イオンを分離する溶離液として、炭酸水素塩-炭酸塩溶液が用いられます。
(3)○(正しい)サプレッサーは溶離液自体の電気伝導度を下げ、目的成分のピークを見えやすくする装置です。
(4)○(正しい)塩素標準液の有効塩素は、チオ硫酸ナトリウム溶液による滴定で求めます。
(5)○(正しい)硫化物などの還元性ガスは妨害となりますが、二酸化窒素の影響は受けません。

選択肢(1)のポイント(ここが誤り)

JIS K 0106のイオンクロマトグラフ法では、試料ガス中の塩素をp-トルエンスルホンアミド溶液に吸収させます。そこへシアン化カリウム溶液と水酸化カリウム溶液を加えると、取り込まれた塩素はシアン酸イオンに変わり、このイオンをイオンクロマトグラフで分離して量ります。塩素の分析でありながら、装置が見ているのは塩素でも塩化物イオンでもない、という点がこの方法の顔になっています。

なぜこんな回り道をするのかは、排ガスの中身を思い浮かべると分かります。塩素を扱う工程の排ガスには、たいてい塩化水素も一緒に含まれています。もし吸収液の中の塩化物イオンをそのまま量ってしまえば、塩素から来たぶんと塩化水素から来たぶんが混ざり、区別がつかなくなります。塩素だけを別の物質に変換してから量ることで、共存する塩化水素に紛れずに塩素を取り出せるわけです。単純に水へ吸収させて塩化物イオンを量る方式では、塩素の測定として成立しません。

妨害物質の並びも、この仕組みから理解できます。塩素は酸化する力を持つ物質なので、硫化物のような還元性のガスが一緒に入ると吸収液の中で消費されてしまい、その分だけ低く出ます。一方で二酸化窒素は、この吸収と変換の過程を乱さないため妨害になりません。還元性ガスには弱く、二酸化窒素には強いという組合せは、そのまま出題されやすい対比です。

覚え方

  • 塩素のイオンクロマトグラフ法はシアン酸イオンに変えて量る。塩化物イオンではない。
  • 塩化物イオンを量ると、共存する塩化水素と区別できなくなる。だから別の形に変換する。
  • 陰イオン分析の溶離液は炭酸水素塩-炭酸塩溶液、検出は電気伝導度、サプレッサーは背景の電気伝導度を下げる係。
  • 塩素は酸化剤。妨害するのは還元性ガス。二酸化窒素は無関係。

理解度チェック

Q.

イオンクロマトグラフ法による塩素分析では、最終的に何を測定しているか。

シアン酸イオンです。吸収液に取り込んだ塩素を、シアン化カリウム溶液と水酸化カリウム溶液を加えてシアン酸イオンに変換してから量ります。

Q.

サプレッサーは何のために置かれているか。

背景となる溶離液の電気伝導度を下げるためです。溶離液自体の伝導度が高いままだと、目的成分のピークが埋もれて読み取りにくくなります。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題・正解」(公式PDF
  • JIS K 0106「排ガス中の塩素分析方法」