平成30年度 公害防止管理者 大気有害物質特論 問7を解説|特定物質の漏えい時の措置(一酸化炭素は中和できない)
平成30年度 大気有害物質特論 問7は、事故のときに応急の手当てが必要になる物質と、それが漏れ出したときにとる手だてとの取り合わせを問う正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
ここで並んでいる物質は、性質がまるでそろっていません。強い毒性で近づくこと自体が危険なもの、火がつきやすいもの、水に溶けて酸として働くもの、薬品を加えて別の化合物に変えてしまえるものが混じっています。漏えい時の手当ては、その物質のどの性質が最も危ないかによって決まるので、物質を見た瞬間に「毒性が主役か、引火が主役か、酸としての性質が主役か」を仕分けられれば、取り合わせの妥当性はほぼ判断できます。五つのうち四つはこの仕分けどおりに書かれており、残る一つだけが、酸性のガス向けの中和処理を、酸としての顔を持たないガスに当てはめています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(誤っている組合せ)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 組合せと解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | ホスゲン-被害が及ぶ範囲への立ち入り禁止。毒性が強く、まず人を近づけないことが最優先になります。 |
| (2) | ○(正しい) | メルカプタン-着火源となるものの速やかな除去。燃えやすい物質なので、火種を断つことが手当ての軸になります。 |
| (3) | ○(正しい) | ふっ化水素-炭酸ナトリウムによる中和。水に溶けて酸性を示すため、アルカリ性の薬品で中和できます。 |
| (4) | ○(正しい) | シアン化水素-硫酸鉄(II)の水酸化ナトリウム溶液による処理。鉄と結び付けて安定な化合物に変え、シアンとしての毒性を封じます。 |
| (5) | ×(誤り) | 一酸化炭素-水酸化カルシウム水溶液の散布。一酸化炭素は酸性のガスではないため、アルカリの散布では処理できません。これが正解です。 |
選択肢(5)のポイント(ここが誤り)
水酸化カルシウムの水溶液をまくという手当ては、相手が水に溶けて酸として働くガスであることを前提にしています。塩化水素やふっ化水素のようなガスなら、霧状のアルカリ液に触れた時点で溶け込み、そのまま中和されて塩に変わるので、空気中から取り除くことと毒性を消すことが同時に進みます。ふっ化水素に炭酸ナトリウムを当てる(3)が成り立つのも、まったく同じ理屈です。
一酸化炭素はこの前提から外れています。酸性でもアルカリ性でもなく、水にもほとんど溶けないため、アルカリ液を散布しても中和する相手そのものが存在せず、液に吸い込ませて空気中から減らすこともできません。散布した液は一酸化炭素に触れないまま落ちるだけで、濃度は下がらず、対処したつもりで危険な空間に人が留まることになります。効かない措置を効くと思い込むこと自体が危険という点で、この取り合わせは実務上も見過ごせない誤りです。
一酸化炭素のように液で捕まえられない相手では、漏えい源を止めることと、ガスをその場に滞留させないことが手当ての軸になります。逆にいえば、中和や薬品処理が選択肢に出てきたら、その物質が水に溶けて酸やアルカリとして振る舞うか、あるいは薬品と反応して別の安定な化合物に変わるかを確かめる必要があります。物質名と措置を丸暗記で結び付けていると、この種の差し替えを見破れません。
覚え方
- 漏えい時の措置は物質の性質から決まる。酸性ガスは中和、可燃性ガスは着火源除去、猛毒ガスは立ち入り禁止。
- アルカリ散布・中和が書かれていたら、相手が水に溶けて酸性を示すガスかを確認。
- 一酸化炭素は中性で水に溶けにくい。中和も液への吸収も効かない相手。
- シアン化水素は鉄と結び付けて安定化させる型。中和とは別の発想。
理解度チェック
水酸化カルシウム水溶液の散布が有効なのは、どのような性質のガスか。
水に溶けて酸性を示すガスです。液に溶け込んだうえで中和されるため、空気中から取り除くことと毒性を消すことが同時に進みます。
一酸化炭素にアルカリ水溶液の散布が通用しないのはなぜか。
一酸化炭素は酸性のガスではなく、水にもほとんど溶けないためです。中和する相手が無く、液に吸収させて濃度を下げることもできません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 大気有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月