平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問14を解説|総水銀の検定法(還元剤は塩化すず(II))
平成30年度 水質有害物質特論 問14は、水銀を化学形態の違いによらずまとめて測る方法についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
五つの肢は、何を測定の対象に含めるかという定義の話と、試料をどう仕込んで測るかという手順の話に分かれています。定義の側は「まとめて測る」という言葉どおりに考えれば迷いません。手順の側は、分解して形をそろえる、金属の状態に戻す、気体にして光を当てる、という三段構えで進みます。引っかけは二段目で使う薬剤の名前がすり替えられている点にあります。しかもすり替えられた薬剤は、別の元素の分析でよく出てくる有名なもので、この科目では隣の問題にも顔を出します。その薬剤が本来どの元素のために使われるかを思い出せれば、場違いだと気づけます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | 無機の形をとるものは、化合物の種類を問わずすべて合算の対象になります。 |
| (2) | ○(正しい) | 有機の形をとるものも同様で、無機と合わせた総量として扱います。 |
| (3) | ○(正しい) | 強い酸と酸化剤で分解し、ばらばらだった形を2価の無機の状態にそろえます。 |
| (4) | ×(誤り) | 金属の状態へ戻すのに用いるのは塩化すず(II)で、水素化ほう素ナトリウムではありません。 |
| (5) | ○(正しい) | 水中から気相へ移した蒸気に光を当て、吸収の度合いから量を求めます。 |
選択肢(4)のポイント(ここが誤り)
この測定が成り立つ土台は、水銀が常温でも蒸気になる金属だという性質です。ほかの金属なら高温の炎や電気炉で無理やり原子にしなければならないところ、水銀は金属の状態にさえ戻してやれば、加熱しなくても気体として飛び出してくれます。そこで測定は、まず前処理で分解して形をそろえ、次に還元して金属の状態に戻し、最後に通気して気相へ移し、その蒸気に光を当てる、という流れをとります。
問題になるのは二段目の還元です。ここで用いるのは塩化すず(II)で、これが2価の水銀を金属水銀へ戻す役割を担います。肢(4)が挙げている水素化ほう素ナトリウムは、水銀を金属に戻すために定められた還元剤ではありません。この薬剤が主役になるのは、ひ素やセレンのように気体の水素化物をつくれる元素を扱うときで、還元して水素化物の気体を発生させ、それを測定部へ送り込む方法に使われます。同じ「還元剤」でも狙う相手も生成物も違うので、役割の異なる薬剤をそのまま持ち込むことはできません。
定義に関する肢は、名称に立ち返れば判断できます。この項目は、無機の形をとるものも有機の形をとるものも区別せず、試料に含まれる水銀を全部合わせた量として扱う指標です。だからこそ前処理では、強い酸と酸化剤によって有機の水銀を分解し、種類の違いを消して2価の無機の状態にそろえる操作が要ります。形をそろえておかないと、還元の効き方が化合物ごとに変わってしまい、合計を正しく出せないからです。分解してそろえる、還元して金属に戻す、気体にして光を当てるという三段構えで順に思い出せば、どの段の記述を問われても対応できます。
覚え方
- 「総」水銀は無機も有機も区別せず全部合わせた量。だから前処理で形をそろえる必要がある。
- 還元気化で金属水銀に戻す還元剤は塩化すず(II)。
- 水素化ほう素ナトリウムはひ素・セレンなどの水素化物発生に使う薬剤。水銀の測定とは役割が違う。
- 水銀は常温で蒸気になる金属。だから炎や電気炉で原子にする工程が要らない。
- 手順は三段構え。分解してそろえる→還元して金属へ→気体にして光を当てる。
理解度チェック
総水銀の測定で、強酸と酸化剤による前処理を行うのはなぜか。
試料の中の水銀は無機の形も有機の形もとっており、そのままでは還元の効き方が化合物ごとに違ってしまいます。そこで分解してすべてを2価の無機水銀にそろえてから、同じ条件で還元・定量できるようにします。
還元気化法で、加熱による原子化の工程が要らないのはなぜか。
水銀は常温でも蒸気になる金属だからです。金属の状態まで還元してやれば、通気するだけで原子状の蒸気として気相へ移り、そのまま光の吸収を測れます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月