平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問13を解説|クロム(VI)の検定法(水素化物発生法が使えない理由)
平成30年度 水質有害物質特論 問13は、六価のクロムを測るときに選べる分析手法についての正誤問題です。用いられないものを選びます。
この問題のポイント
並んでいるのは分析手法の名前だけです。四つは、色の濃さで測るもの、光を吸わせて測るもの、高温のプラズマで光らせて測るもの、そのプラズマでできたイオンを重さで数えるものと、原理はばらばらですがクロムという元素を相手にできる点で共通しています。残る一つだけが、測る前の段階で相手を気体に変えられることを要求する方法です。ここが引っかけで、名前だけ見ると原子吸光の仲間なので、同じ元素に使えそうに思えてしまいます。しかし気体に変える工程が成り立たない元素では、その後の測定に進めません。その元素が気体になれるかどうかを先に問うのが解き方です。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(用いられない方法)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(用いられる) | 六価のものだけが試薬と反応して赤紫色を示すため、色の濃さから量を求められます。 |
| (2) | ×(用いられない) | 気体の水素化物をつくれる元素だけの方法で、クロムは水素化物をつくりません。 |
| (3) | ○(用いられる) | 電気で加熱して原子にし、光の吸収から測る方式で、微量域まで扱えます。 |
| (4) | ○(用いられる) | 高温のプラズマで励起した原子が出す固有の光の強さから量を求めます。 |
| (5) | ○(用いられる) | プラズマで生じたイオンを質量で選り分けて数える方式で、さらに低い濃度まで届きます。 |
選択肢(2)のポイント(クロムには使えない)
水素化物発生法は、試料に還元剤を加えて目的の元素を気体の水素化物に変え、その気体を測定部へ送り込んで原子にしてから光の吸収を測る、という手順で成り立っています。液のまま吹き込むのではなく、いったん気体という形で目的元素だけを取り出すため、共存物の妨害を受けにくく、濃縮効果も得られるのが利点です。
ただしこの利点は、目的の元素が安定な気体の水素化物をつくれる場合にしか成立しません。実際にこの方法が使えるのは、ひ素やセレンなど、ごく限られた元素です。クロムはこれに当てはまらず、還元剤を加えても気体として飛び出す水素化物が生じないため、そもそも測定部へ送り込む気体が作れません。最初の工程が空振りに終わるので、この方法は検定法として採用されないのです。名前が原子吸光で終わっているために原子吸光の一種と見えますが、判定すべきは後半の測定原理ではなく、前半の気体を発生させる工程のほうだ、と押さえてください。
残る四つのうち、色の濃さで測る方法は少し性格が違います。用いる試薬は六価のクロムとだけ反応して赤紫色の錯体をつくるため、三価のものが混ざっていても六価だけを選んで測れます。価数を見分けたいときの基本になるのはこの方法です。一方、電気加熱による原子吸光やプラズマを使う二つの方法は、光や質量からクロムという元素そのものの量を捉える仕組みなので、そのままでは価数の区別がつきません。そこで、あらかじめ六価のものだけを取り分ける操作と組み合わせて用いられます。価数を見分ける役は試薬の色、量を精密に測る役は機器という分担で理解しておくと、選択肢の並びが整理できます。
覚え方
- 水素化物発生法が使えるのは気体の水素化物をつくれる元素だけ。ひ素・セレンが代表格。
- 方法名は前半で判定する。気体を発生させる工程がある時点で対象元素が絞られている。
- 価数を見分けたいなら色反応。六価とだけ反応して赤紫を出す試薬が定番。
- 原子吸光やプラズマを使う機器は元素の総量を測る道具。価数を問うなら先に取り分ける操作を挟む。
- 「その元素は気体になれるか」を先に問うと、使える前処理が自動的に決まる。
理解度チェック
水素化物発生原子吸光法がクロムに使えないのはなぜか。
この方法は、還元剤で目的元素を気体の水素化物に変えてから測定部へ送るのが前提です。クロムは安定な気体の水素化物をつくらないため、最初の発生工程が成立せず、測定に進めません。ひ素やセレンのように水素化物をつくる元素に限って使える方法です。
六価のクロムだけを選んで測りたいとき、どの考え方をとるか。
六価のものとだけ反応して赤紫色の錯体をつくる試薬を使い、色の濃さから量を求めます。原子吸光やプラズマを用いる機器は元素の総量を捉えるため、六価だけを知りたい場合は、あらかじめ六価のものを取り分ける操作と組み合わせます。
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月