平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問12を解説|イオンクロマトグラフ法(分離カラムの中身はイオン交換体)
平成30年度 水質有害物質特論 問12は、水に溶けたイオンを順番に分けてから電気の通しやすさで量を測る分析法についての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
五つの肢は、どんな項目に使えるか、装置の中で何が起きているか、そして背景の信号をどう抑えるかという三方向から書かれています。装置の細部を丸暗記していないと解けないように見えますが、この分析法の名前そのものが仕組みを言い当てていると気づけば一つに絞れます。誤りの肢は、分けるための心臓部にあたる部品の中身を、まったく別の材料に置き換えてしまっています。並んでいる材料名はどちらも水処理でよく登場する有名なもので、そこが引っかけです。分ける働きがどこから生まれるのかを考えれば、有名かどうかは関係ないと分かります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | ふっ化物は水中で陰イオンとして存在するため、この方法で分けて測ることができます。 |
| (2) | ×(誤り) | 分離を担う充塡剤はイオン交換体で、不活性な粒や汎用の吸着材ではありません。 |
| (3) | ○(正しい) | 溶離液由来の電解質を取り除いて背景を下げ、目的イオンの信号を際立たせる部品です。 |
| (4) | ○(正しい) | その部品を持たない方式では、もともと電気を通しにくい溶離液を選んで背景を抑えます。 |
| (5) | ○(正しい) | 交換体の種類を替えれば、陰イオンだけでなく陽イオンも同じ原理で分けられます。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
クロマトグラフという言葉は、混ざったものを流しながら少しずつ引き離す手法の総称です。引き離しが起きるのは、流れる液体と、管に詰まった固体との間で、成分ごとにくっつきやすさが違うからです。よくくっつく成分は管の中で足止めされて遅れて出てきますし、くっつきにくい成分は先に流れ出ます。この差がなければ、どれだけ長い管を通しても成分は一緒に出てきてしまい、分離は起こりません。
したがってイオンを分けたいなら、詰め物の側にイオンを一時的につかまえて放す働きが備わっていなければなりません。その役割を担うのがイオン交換体で、表面に固定された交換基がイオンと引き合い、溶離液に押し出されてまた放す、という出入りを繰り返します。この出入りのしやすさがイオンごとに違うため、出てくる時間に差がつくのです。
肢(2)が挙げている材料は、この条件を満たしません。ガラスの粒は表面が不活性でイオンと引き合う相手を持たないため、成分はどれも同じように流れ去るだけで分離が起きません。活性炭も、有機物を吸わせる用途では優秀ですが、イオンごとの選び分けをする働きは持たないので、分離カラムの充塡剤としては成り立ちません。分ける原理がイオンの交換である以上、詰め物もイオン交換体でなければならないという、名前どおりの理屈です。
残りの肢は装置構成の話です。この方法の検出には電気の通しやすさを使いますが、そもそも溶離液自体が電気を通すので、そのままでは背景の値が高く、目的イオンによるわずかな変化が埋もれてしまいます。そこで検出器の手前に部品を置いて溶離液由来の電解質を除き、背景を下げてやります。一方、その部品を使わない構成もあり、その場合ははじめから電気を通しにくい溶離液を選ぶことで同じ目的を果たします。どちらも狙いは「背景を下げて差を見やすくする」ことで一貫しています。また、交換体を陰イオン用から陽イオン用に替えれば陽イオンにも同じ原理が使えるため、対象は陰イオンに限られません。
覚え方
- 分離カラムの中身はイオン交換体。名前が原理を示しているので迷ったら名前に戻る。
- クロマトの分離は「くっつきやすさの差」から生まれる。差がつかない不活性な粒では分かれない。
- 陰イオン用の交換体なら陰イオン、陽イオン用に替えれば陽イオン。対象は片方に限られない。
- 検出は電気の通しやすさ。だから背景を下げる工夫が要る。
- 背景を下げる手は二つ。部品で電解質を除くか、電気を通しにくい溶離液を選ぶか。
理解度チェック
分離カラムの充塡剤にイオン交換体を使う理由は何か。
クロマトグラフの分離は、成分ごとの充塡剤へのくっつきやすさの差から生まれます。イオンを分けるには、イオンをつかまえて放す働きが必要で、それを持つのがイオン交換体です。表面が不活性な粒では差がつかず、成分は分かれずに流れ出てしまいます。
溶離液の電解質を除く部品を持たない構成では、何を工夫して背景を抑えるか。
溶離液そのものを電気を通しにくい薬剤(弱い有機の酸など)に選びます。溶離液由来の電導がもともと小さければ、除去部品を挟まなくても背景は低く保たれ、目的イオンによる変化を読み取れます。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月