平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問15を解説|排水中の窒素化合物(測定法で変わる前処理と保存)
平成30年度 水質有害物質特論 問15は、排出される水に含まれる窒素分の規制範囲と測り方についての正誤問題です。正しいものを選びます。
この問題のポイント
五つの肢のうち一つは規制の範囲を問うもので、残りの四つは同じ成分を別々の方法で測るときの作法を問うています。ここで効いてくる考え方は、測定法が変われば、試料の仕込み方も保存の仕方も変わるという一点です。妨害物質を切り離してから測る方法もあれば、そのまま流し込める方法もあり、前者では手間のかかる操作が必須になります。逆に、そのまま流し込める方法では、良かれと思って加えた薬品が測定を邪魔することさえあります。四つの誤り肢は、この対応関係をひっくり返して作られています。その方法が何に弱いのかを軸に読むと、正しい一つが浮かび上がります。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(5)(正しい記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 対象はアンモニア・アンモニウム・亜硝酸・硝酸の各化合物で、有機体の窒素は含まれません。 |
| (2) | ×(誤り) | 色を作らせて測る方法は妨害を受けやすく、蒸留で目的成分を分けてから測ります。 |
| (3) | ×(誤り) | イオンを分けてから測る方法では、装置側が分離を担うため蒸留は要りません。 |
| (4) | ×(誤り) | 凍結させるのではなく、低温の暗所に置いて早めに試験するのが定められた扱いです。 |
| (5) | ○(正しい) | 加えた保存用の薬品自体が妨害となるため、何も加えずに直ちに試験します。 |
選択肢(5)のポイント(ここが正しい)
試料の保存処理とは、採取から試験までの間に成分が変わってしまわないよう、酸などを加えて安定させる操作のことです。多くの項目ではこれが推奨されますが、イオンを分けてから電気の通しやすさで測る方法に限っては事情が違います。この方法は、水に溶けているイオンをそのまま装置に流し込んで一つずつ分離する仕組みなので、保存のために加えた酸が、そっくりそのまま余計なイオンとして現れてしまうのです。加えた分だけ背景が上がり、目的の成分の山と重なることもあります。安定させるための操作が、測定そのものを壊してしまうわけです。
そのうえ、この問題で扱われている成分は酸化されて別の形へ変わりやすいという性質を持っています。時間を置けば値がずれていくので、保存で粘るという発想自体が合いません。結論として、薬品を加えずに、採ったらすぐ測るのが最も確実な扱いになります。何も加えないのは手抜きではなく、この測定法と成分の組合せから導かれた積極的な選択だと理解してください。
誤り肢はいずれも、この対応関係をひっくり返しています。色を作らせて濃さを測る方法は、試料に含まれるさまざまな成分から妨害を受けやすいため、蒸留によって目的成分だけを取り出す前処理が要ります。逆に、装置の中で成分を分離できる方法では、その仕事を装置が肩代わりしてくれるので蒸留は不要です。肢(2)と肢(3)は、この必要・不要をちょうど逆に入れ替えたものです。保存の扱いも同様で、変わりやすい成分に対して定められているのは凍らせることではなく、低温の暗所に置いてできるだけ早く試験することです。また規制の範囲についても、対象とされているのは無機の形をとる窒素の化合物であって、たんぱく質などに由来する有機体の窒素まで含めているわけではありません。
覚え方
- 窒素で規制されるのはアンモニア・アンモニウム・亜硝酸・硝酸の各化合物。有機体の窒素は入らない。
- 妨害に弱い測定法は前処理で分ける、装置が分離できる測定法は前処理を省ける。
- 保存のために加えた酸は、イオンを測る装置では邪魔者になる。加えないのが正解。
- 変わりやすい成分は凍らせるのではなく、低温の暗所に置いて早く測る。
- 同じ成分でも測定法が変われば前処理も保存も変わる。成分だけで暗記しない。
理解度チェック
イオンを分離して測る方法で、試料に保存処理を行わないのはなぜか。
保存のために加える酸などが、それ自体イオンとして装置に現れ、目的成分の測定を妨げるからです。加えずに済ませる代わりに、成分が変化しないうちに直ちに試験します。
アンモニア性窒素の測定で、蒸留の要否は何によって決まるか。
測定法が妨害成分を自力で分離できるかどうかで決まります。色を作らせて濃さを測る方法は妨害を受けやすいため蒸留で目的成分を分けますが、装置の中でイオンを分離できる方法では蒸留は必要ありません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月