平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問4を解説|吸着法による水銀排水処理(前段の塩素酸化とpH調整)
平成30年度 水質有害物質特論 問4は、水銀を含む排水を吸着材に捕まえさせて取り除く手法についての正誤問題です。最も適切なものを選びます。
この問題のポイント
この科目で水銀の処理といえば、硫化物として沈める道筋と、吸着材でつかまえる道筋の二本立てです。ここで問われているのは後者で、どんな材料が使われるのか、どこまで濃度を下げられるのか、樹脂に通す前に何をしておくべきか、といった実務寄りの内容が並びます。判断の分かれ目は、吸着材の性格を正しくつかんでいるかどうかの一点に絞られます。水銀をつかまえる樹脂は薬品に強い万能材ではなく、前段の処理でうっかり傷めてしまう性質を持っています。この弱点と、逆に到達できる濃度を過小に見積もった記述の両方が誤りとして配置されているので、樹脂の実力と弱点を対にして押さえておくと迷いません。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(最も適切な記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 活性炭は水銀をよく吸着し、仕上げ段の手段として実際に使われています。 |
| (2) | ×(誤り) | 水銀をつかむ樹脂の交換体は硫黄を含む官能基が一般的で、希土類の水酸化物ではありません。 |
| (3) | ×(誤り) | この樹脂は排水基準を満たす水準まで下げられる仕上げ手段で、後処理前提ではありません。 |
| (4) | ○(正しい) | 粒子状で漂う水銀は塩素で酸化してイオンに変え、そのとき液性を酸性側へ合わせます。 |
| (5) | ×(誤り) | 樹脂は塩素に弱いため、前段の塩素はできるだけ抑え、残った分は除いてから通します。 |
選択肢(4)のポイント(ここが正しい)
吸着でつかまえられるのは、あくまで水中でイオンとして振る舞っている水銀です。ところが実際の排水には、粒子のように漂うコロイド状の水銀や、有機物と結び付いた形の水銀が混ざります。これらは樹脂の官能基に手を伸ばしてもらえないまま素通りしてしまうため、吸着塔に入れる前にイオンの状態へそろえておく必要があります。その役目を担うのが塩素による酸化で、このとき液性をpH2〜6の範囲に合わせる、というのがこの肢の内容です。アルカリ側に振ると塩素の酸化する力が鈍り、水銀そのものも沈殿側へ動いてしまうため、酸性から弱酸性の帯に置いておくのが理にかなっています。
この肢が正しいと分かれば、残りは自然に落ちます。とくに紛らわしいのが樹脂と塩素の関係です。前段で塩素を使うのは事実ですが、だからといって樹脂が塩素に強いわけではありません。むしろ酸化力の強い残留塩素は樹脂を傷め、吸着できる量を落としていきます。したがって塩素はイオン化に必要な分にとどめ、余った塩素は還元処理などで取り除いてから吸着塔へ送ります。塩素を濃くするほど良いという記述は、前処理の目的と樹脂の耐性を取り違えた典型的な誤りです。
もうひとつ、樹脂の実力を過小評価する記述にも注意が必要です。水銀をつかむ樹脂は排水処理の最終段に置かれ、これ単独で基準を満たす水準まで濃度を下げる役目を負います。後段にさらに別の処理を足さないと基準に届かない、という前提は成り立ちません。逆に、活性炭をほとんど使われない材料として切り捨てるのも誤りで、水銀は活性炭にもよく吸着するため低濃度域の仕上げに使われます。吸着材ごとに得意な場面を割り当てる、というのがこの分野の考え方です。
覚え方
- 吸着塔の前でイオンにそろえる。コロイド状や有機態のままでは捕まらない。
- イオン化は塩素酸化で。液性はpH2〜6の酸性側に合わせる。
- 水銀キレート樹脂は塩素に弱い。残留塩素は除いてから通水する。
- 交換体は硫黄を含む官能基。硫黄が水銀をつかむ、と結び付けて覚える。
- 活性炭も水銀をよく吸着する。使われないと書いてあれば誤り。
理解度チェック
水銀を吸着塔に通す前に塩素酸化を行うのはなぜか。
コロイド状の水銀や有機物と結び付いた水銀は吸着材につかまらないため、塩素で酸化してイオンの形にそろえる必要があるからです。このとき液性は酸性側(pH2〜6)に調整します。
前段で塩素を使ったあと、吸着塔へ送る前にすべきことは何か。
残留塩素を取り除きます。水銀キレート樹脂は塩素に弱く、酸化力の強い塩素が残ったまま通水すると樹脂が傷んで吸着能力が落ちるためです。塩素は濃くするほど良いというものではありません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月