平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問2を解説|カドミウム・鉛排水の処理(アンモニア錯体をつくるのはどちらか)
平成30年度 水質有害物質特論 問2は、ふたつの重金属を含む排水をどう沈めて取り除くかについての正誤問題です。誤っているものを選びます。
この問題のポイント
重金属排水はアルカリを加えて水酸化物として沈めるのが基本形ですが、この基本形が効かなくなる場面がいくつかあります。水中で金属を抱え込む相手役がいる場合と、アルカリを効かせすぎて金属が溶け戻る場合の二つです。五つの肢はその両方の落とし穴と、うまくいかないときの回避策を並べています。引っかけの核心はひとつで、相手役となる物質と金属の組合せがすり替えられている点にあります。金属によって仲良くなる相手は違い、ある金属としっかり手を組む相手が、別の金属とも同じように組めるとは限りません。金属の名前と相手役の名前をペアで覚えていれば、入れ替えられた瞬間に違和感が立ちます。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(2)(誤っている記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ○(正しい) | カドミウムは有機酸に抱え込まれて安定な形になり、アルカリを入れても沈みにくくなります。 |
| (2) | ×(誤り) | アンモニアと安定な錯体をつくるのはカドミウム側で、鉛ではありません。金属が入れ替わっています。 |
| (3) | ○(正しい) | 鉄(Ⅲ)の塩を加えると、生じた水酸化鉄がカドミウムを巻き込んで沈める共沈がはたらきます。 |
| (4) | ○(正しい) | キレート剤に捕まった鉛は、鉄とカルシウムの塩で相手を横取りさせる置換法で外せます。 |
| (5) | ○(正しい) | 鉛は両性金属なので、アルカリを入れすぎると沈殿が溶け戻り処理水の濃度が上がります。 |
選択肢(2)のポイント(ここが誤り)
水酸化物法は、アルカリを加えて金属を水酸化物の沈殿に変える方法です。この方法が通用しなくなる典型が、金属が別の分子やイオンに抱え込まれて錯体になっている場合です。抱え込まれた金属はアルカリを加えても水酸化物になろうとせず、そのまま処理水に抜けていきます。ここまでは肢の言うとおりですが、アンモニアと安定に手を組む相手として鉛を挙げた点が誤りです。
アンモニアを配位子として受け入れやすいのは、カドミウム、銅、ニッケル、亜鉛といった金属です。カドミウム排水にアンモニアが混ざっていると水酸化物法が難しくなるのはこのためで、この問題文でもカドミウムについては有機酸との組合せで同じ趣旨が述べられています。一方の鉛はアンモニアと安定な錯体をつくらず、アンモニアがあっても水酸化物法での処理は妨げられません。つまりこの肢は、カドミウム側で成り立つ話を鉛の話として置き換えた入れ替えであり、金属名を差し替えただけの典型的な作り方になっています。
ではアンモニアではなく別の相手に鉛が捕まっていたらどうするか。そこで出てくるのが置換法です。キレート剤に捕まった鉛に対して鉄とカルシウムの塩を加えると、キレート剤の相手が鉛から鉄側へ移り、放り出された鉛が沈殿に変わります。あわせて押さえておきたいのが、鉛が両性金属だという点です。アルカリを効かせるほどよく沈むわけではなく、行き過ぎると溶け戻ります。鉛の処理で気を配る先は、抱え込まれることよりもアルカリの入れすぎのほうだ、と対比で覚えると混同しません。
覚え方
- アンモニア錯体はカドミウム側、鉛はつくらない。金属と配位子はペアで暗記。
- カドミウムはくえん酸・酒石酸などの有機酸にも抱え込まれ、水酸化物法が効かなくなる。
- キレートで捕まった金属は、鉄+カルシウム塩の置換法で相手を横取りして外す。
- 鉛は両性金属。アルカリの入れすぎで再溶解するので、上げ過ぎない。
- 沈みにくい金属には鉄(Ⅲ)塩の共沈を足す。水酸化鉄が道連れにして沈める。
理解度チェック
アンモニアが混ざった排水で水酸化物法が難しくなるのは、カドミウムと鉛のどちらか。
カドミウムです。カドミウムはアンモニアと安定な錯体をつくるため沈みにくくなります。鉛はアンモニアと安定な錯体をつくらないので、この点では妨げられません。
鉛排水でpHを上げすぎるとどうなるか。
鉛は両性金属なので、アルカリ性側でpHが高くなりすぎると水酸化物が溶け戻り、処理水中の濃度がかえって上がります。最適な範囲を外さない運転が必要です。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月