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平成30年度 公害防止管理者 水質有害物質特論 問1を解説|硫化物法による重金属排水処理(酸性側では成り立たない)

平成30年度 水質有害物質特論 問1は、金属を硫黄分と結び付けて沈殿の形に変え、排水から抜き取るやり方についての正誤問題です。誤っているものを選びます。

この問題のポイント

排水中の金属を沈めて取り除く道筋には、アルカリを加えて水酸化物にする流れと、硫黄分を加えて硫化物にする流れがあります。この問題は後者について、どれだけ溶けにくいのか、薬品を入れすぎるとどうなるか、現場でどんな危険が伴うかを横断的に確かめています。引っかけの核心は一点だけで、反応をどの液性で進めるかという条件が逆向きに置かれているところにあります。硫黄分を沈殿の相手役として働かせたいのに、酸を強く効かせた領域を指定してしまうと、狙った沈殿ではなく有毒な気体が出てくる側へ振れてしまいます。残りの四つは硫化物法の長所と注意点をそのまま述べたもので、順に読めば引っかかりません。

※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。

正解:選択肢(1)(誤っている記述)

各選択肢の正誤

選択肢正誤解説
(1)×(誤り)硫化物法は酸性の領域では行いません。酸を効かせると硫化水素が抜け、沈殿もできません。
(2)○(正しい)硫化物のほうが水酸化物よりけた違いに溶けにくく、だからこそ低い濃度まで落とせます。
(3)○(正しい)硫化ナトリウムを入れすぎると多硫化物に変わり、いったん沈んだ金属が再び溶け出します。
(4)○(正しい)鉄塩を足すと余った硫黄分が押さえられ、同時にできる水酸化物の共沈でフロックも育ちます。
(5)○(正しい)硫化水素は毒性・臭気・腐食性を併せ持つため、換気や材質選びの配慮が欠かせません。

選択肢(1)のポイント(ここが誤り)

硫化物法で金属を沈めているのは、水中に生じた硫化物イオンです。ところが硫化物イオンがどれだけ水中に居られるかは、液性によって大きく変わります。硫化水素はもともと弱い酸なので、水素イオンが多い酸性側では硫化水素そのものや酸性側の中間形に偏り、沈殿の相手役になる硫化物イオンはほとんど残りません。つまり酸を効かせた領域では、沈殿をつくるための材料が水中から消えてしまうのです。すでにできている金属硫化物も、酸に触れれば分解して金属が溶け戻ります。

さらに深刻なのが安全面です。酸性側では水に溶けきれなくなった硫化水素が気体となって水面から抜け出します。硫化水素は低い濃度でも人体に強く作用し、しかも濃くなるほど臭いを感じにくくなるという性質があるため、気付いたときには手遅れになりやすい気体です。この問題の別の肢が硫化水素の毒性や臭気、腐食性への留意を述べているのも、そもそもガスを出さない液性で反応させることが前提だからです。酸性域で処理するという記述と、硫化水素に留意するという記述は同居できません。ここに気付けば、消去法に頼らず一発で選べます。

実際の運転では、硫化物イオンが十分に存在する中性からアルカリ性側で反応させ、余った硫黄分は鉄塩で押さえ込むという組み立てが取られます。硫黄分を過剰に入れれば多硫化物となって金属が再溶解し、逆に足りなければ処理水に金属が残ります。硫化物法は水酸化物法より低い濃度まで落とせる強い手段であると同時に、薬品の量と液性の両方を外すと途端に危険側へ倒れる方法でもある、という二面性でとらえておくと記憶に残ります。

覚え方

  • 硫化物法は酸性側では行わない。酸=硫化水素ガス+沈殿の再溶解。
  • 硫化物の溶解度積は水酸化物よりはるかに小さい。だから低濃度まで届く。
  • 硫化ナトリウムの入れすぎは多硫化物をつくり、金属が溶け戻る。
  • 余った硫黄分は鉄塩で固定。共沈でフロックの育ちもよくなる。
  • 硫化水素は毒・臭い・腐食の三拍子。作業前の換気は必須。

理解度チェック

Q.

硫化物法を酸性側で運転すると、なぜ処理が成り立たなくなるのか。

硫化水素が弱い酸であるため、酸性側では沈殿の相手役となる硫化物イオンがほとんど残らず、金属を沈められません。加えて溶けきれない硫化水素が有毒な気体として抜け出し、できていた沈殿も分解して金属が溶け戻ります。

Q.

硫化ナトリウムを過剰に注入するとどうなるか。また、その対策は。

硫化物が多硫化物に変わって金属が再び溶け出します。対策としては鉄塩を加えて余った硫黄分を固定し、同時に生じる水酸化物の共沈効果で凝集性を高めます。

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出典

  • 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質有害物質特論 問題・正解」(公式PDF