平成30年度 公害防止管理者 水質概論 問9を解説|有害金属が健康に及ぼす影響(蓄積が限界量を超えて発症)
平成30年度 水質概論 問9は、金属が人の体に害をもたらすときの現れ方についての正誤問題です。正しいものを選びます。
この問題のポイント
毒性は元素の名前だけで決まるものではなく、体に入ってきた道すじ、どんな化合物の形をしているか、ほかの金属と一緒かどうか、どれだけの量を摂ったかによって姿を変えます。誤りの四つは、いずれも「経路が違っても同じ」「抑制的に現れることはない」「化学種が違っても同じ」「多量に摂っても害はない」と、条件による違いを消して言い切っている点で共通します。断定の形をした肢を疑うのが解き筋です。残る一つだけが条件を消さずに述べており、体に入る量と出ていく量の差し引きで負荷が積み上がり、ある水準を越えたところで症状が出るという蓄積の考え方を正しく示しています。
※ 問題文そのものは、産業環境管理協会が公開している公式サイトで確認できます。
正解:選択肢(4)(正しい記述)
各選択肢の正誤
| 選択肢 | 正誤 | 解説 |
|---|---|---|
| (1) | ×(誤り) | 金属水銀は吸い込むか飲み込むかで吸収のされ方が違い、毒性の現れ方も同じにはなりません。 |
| (2) | ×(誤り) | 複数の金属が共存すると互いに打ち消し合い、毒性が抑制的に現れることもあります。 |
| (3) | ×(誤り) | 同じ元素でも化学種が違えば体内での振る舞いが変わり、毒性も違ってきます。 |
| (4) | ○(正しい) | 入る量が出る量を上回れば体内にたまり、限界量を越えたところで毒性が現れます。これが正解です。 |
| (5) | ×(誤り) | 鉄は体に欠かせない必須金属ですが、多量に摂れば有害な作用が出ます。 |
選択肢(4)のポイント(ここが正しい)
体に入った金属は、そのまま居座るわけではありません。尿や便、汗などを通じて少しずつ出ていきます。したがって体内にある量は、吸収される量と排泄される量の差し引きで決まります。出ていく速さが入ってくる速さに追いついている間は、体内の量は一定の水準で釣り合い、症状は出ません。ところが排泄が追いつかないほど摂り続けると釣り合いが崩れ、体内の量はじりじりと積み上がります。そしてある限界量を越えた時点で毒性が現れます。
この考え方が大切なのは、一回に摂った量が少なくても発症しうることを説明できるからです。環境中の濃度が低ければ一度の摂取量は微々たるものですが、それが年単位で続き、排泄が追いつかなければ体内の負荷はいずれ限界量に達します。水俣病のように、汚染された魚介類を長く食べ続けたことで起きた健康被害は、まさにこの型です。だから排水規制も、一度に大量に出すことだけでなく、低い濃度で出し続けることを問題にします。
誤りの四つは、いずれも条件による違いを打ち消しています。金属水銀は蒸気として吸い込めば肺から効率よく取り込まれる一方、飲み込んだ場合は消化管からほとんど吸収されないため、侵入経路が違えば現れる毒性も違います。複数の金属が共存する場においては、吸収の場や結合する相手を奪い合って、片方の毒性が弱まる拮抗という現象が知られており、「抑制的に現れることはない」と言い切るのは誤りです。同じ水銀でも無機のものと有機のものでは体内での動きが大きく異なり、化学種が変われば毒性も変わります。鉄のように体に必要な金属であっても、必要量と有害量の間には幅があるだけで、「多量に摂っても有害作用を発現しない」ということはありません。
覚え方
- 入る量-出る量が蓄積、蓄積が限界量を越えて発症。少量でも長く続けば危ない。
- 毒性を左右するのは元素名だけではない。侵入経路・化学種・共存する金属・摂取量で変わる。
- 複合汚染は足し算や掛け算だけではない。互いに打ち消し合う拮抗もある。
- 必須金属にも過剰の害がある。「体に必要=いくら摂っても安全」ではない。
- 「〜に関係なく同じ」「〜することはない」と言い切る肢は、まず疑ってかかる。
理解度チェック
水銀のような蓄積性の金属で、毒性が現れるまでの道すじを説明せよ。
吸収量と排泄量のバランスが崩れて体内に蓄積し、ある限界量を超えたところで毒性が現れます。排泄が追いついている間は症状が出ないため、一回あたりの摂取量が少なくても、摂り続ければ発症しうる点が重要です。
複数の金属による複合汚染では、毒性はどのように現れるか。
足し合わさる(相加的)場合や互いに強め合う(相乗的)場合のほかに、互いに打ち消し合って毒性が弱まる拮抗が起こることもあります。相加・相乗しかない、と言い切ることはできません。
この問題に関連する用語解説
出典
- 一般社団法人 産業環境管理協会「平成30年度 公害防止管理者等国家試験 水質概論 問題・正解」(公式PDF)
※ この記事の確認日:2026年7月